インフルエンザのシーズンになり、もはや恒例となったインフル予防のためのあれこれがいわれている。
何度となく書いていることなのだが、うがい、手洗い、マスク、予防接種の4大予防策は、流行を阻止するのにほとんど効果がない。この4つが奨励されていても、インフルは毎年流行する。
いいかげん無駄なことはやめた方がいいと思うのだが、まるで信仰か呪文のように繰り返されている。
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うがいについては、以下のような記事が出ていた。
インフルエンザ様疾患の発症数は、水うがい群、対照群、ヨードうがい群でそれぞれ、11人(11.3%)、18人(15.0%)、10人(9.2%)でした。うがい群で発症数が少ない傾向にありますが、統計学的な有意差はありません。つまり、偶然でもこれぐらいの差が出ることがある、ということです。これでは、うがいがインフルエンザを予防するという明確な証拠にはなりません。もっと研究対象の数を増やせば、うがいがインフルエンザを予防することを証明できるかもしれません。しかし、現在のところは、うがいはインフルエンザの予防に有効であるという臨床的証拠は乏しいと言わざるを得ません。
注:2005年の調査
マスクに関連して以下の記事。
マスクでインフルエンザは予防できない! 逆に手指からの感染リスク高める ZAKZAK
(1)「感染予防のためにマスクを!」は逆に感染リスクを高める?
風邪やインフルエンザを引き起こす病原菌やウイルス=病原体は、感染者が鼻をかんだり、クシャミ・せきをしたりの飛沫(ひまつ)に含まれていて、それが直接、鼻やのどに入ることを防ぐためにマスクが有効というのが従来の考え方。だが感染経路としては、手指→粘膜の方が圧倒的に多い。
マスクの着脱や位置を直す行為が、手指に付着した病原菌を口、鼻、目の粘膜に運ぶリスクを高めるため、むしろ有害なのだ。感染予防には、ドアノブやつり革や人が触った可能性がある所を触ったら、手指を顔に近づけないで手を洗うか、消毒する。
マスクよりも手袋の方がいいって話だね。
ワクチンは有効率60%とされているのだが……
インフルエンザ予防接種は、無意味ではない | 健康 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
インフルエンザワクチンの有効率は統計学的に証明されているが、60%の有効率をわかりやすく説明するために「ワクチン接種をしない人はした人と比較して2.5倍インフルエンザに感染するリスクが高まる」
……とはいうものの、「ワクチン接種をしないと、2.5倍インフルエンザに感染するリスクが高まる」という表現も、いまいちピンと来ない。
たとえば、「この時期、満員電車に乗るとインフルエンザに感染するリスクが2倍になる」というデータが得られたとすると、「電車に乗るな」という話になってしまう。人混みを避けるということでは、満員電車は最悪の環境だからね。
有効率もわかりにくいが、リスクが●倍になるという指標もわかりにくい。
ワクチンで流行が防げるのなら、ワクチン接種を無料もしくは低料金で義務化した方が、発症後にかかる医療費を抑制できるのでは?
前橋レポートが行われたのは古い時代のことだから信頼性が乏しいというのであれば、現代においてもっと大規模な調査で追試すればいいのではないだろうか?
なぜそれが行われていないのかが不思議。
流行を防ぐには、感染そのものを防ぐ必要がある。
ワクチンは感染・発症を防ぐのではなく、重症化を軽減するのが目的。
発症を防げるかもしれない知見の記事があった。
インフルRNAの切断酵素を開発 岡山大・世良教授ら 発症防ぐ効果: 山陽新聞デジタル|さんデジ
岡山大大学院自然科学研究科の世良貴史教授(タンパク質工学)らのグループは、インフルエンザウイルスの遺伝情報となるRNA(リボ核酸)を切断する酵素を開発した。ウイルスの増殖を抑えて発症を防ぐとみられ、創薬につながると期待される。エイズやエボラ出血熱など、RNAが遺伝情報となる他のウイルスへの応用も見込まれる。
開発した酵素は、インフルエンザのRNAだけに結合する人工タンパク質とRNAを分解する酵素から成る。試験管内で、インフルエンザウイルスのRNAと混ぜると、5分以内にRNAが完全に切断された。現在、細胞内でウイルスの増殖を阻害できるかを調べている。
この手法であれば、流行を阻止できるのかもしれない。
ただ、この薬が開発されたとしても、コストは高そうだけど。
関連して、日光浴をするとインフルエンザの予防にもなるという記事。
インフルエンザ防御の要「日光ホルモン」 | 女性泌尿器科医が語る サイエンス&スポーツ | 奥井識仁 | 毎日新聞「医療プレミア」
最近は春夏のインフルエンザが話題になることもありますが、大規模な流行は基本的に冬に起きます。多くの医師は、その理由を「寒いために服を着て日光に当たらないから」ではないかと考えています。例えば、3500人の子供を対象に、秋と冬に12回、紫外線を浴びさせる実験をしたデータでは、紫外線を浴びなかった実験の前シーズンに比較して、風邪の発症が66%も減少したと報告されています。これは一言で言うと、紫外線により皮膚の免疫細胞が刺激されて活性化し、感染を防いだからと考えられます。
(中略)
脳をはじめ、体内のあちらこちらに存在するセロトニン神経は、日光の刺激でセロトニンを分泌します。セロトニンは、体温調節・摂食行動・情緒など主に昼間の生活を支え、これもインフルエンザから体を守ります。
(中略)
日光浴により性ホルモンの分泌も高まります。米国ハーバード大学のチームが2300人ほどの男性を調査したところ、ビタミンDの血中濃度の高い男性は、ビタミンD不足の男性よりもテストステロン(いわゆる男性ホルモン)が高かったことが分かったと報告しています。過去の研究により、テストステロンには抗炎症作用があることが確認されていますので、風邪を引きそうな体を支えるホルモンの一つといえるでしょう。
日焼けは、皮膚がんや肌の老化の原因になるとされ、紫外線を避ける風潮があったりするが、風邪やインフルエンザの予防効果があるとすると、適度な紫外線はどの程度なのか?……が問題だね。
この記事には、紫外線浴の適量は示されていない。
個人差はあると思うのだが、「インフルエンザ防御に日光浴」というからには、医学的見地からどの程度の紫外線を浴びるといいのか示して欲しいところ。
必要なのがビタミンDだとするなら、ビタミンDのサプリを飲めば、日光浴と同等の効果を得られるのか、その点も知りたいね。
毎年流行するインフルエンザだが、新旧入り乱れた“常識”を一度整理して、「2017年版インフルエンザの常識」を提言した方がいいのではないだろうか?
そうしたら、予防策として有効性が認められるのは、
と、この4つになるかもしれない(^_^)