スペインの新聞・出版界が、巨人のGoogleに対抗して一矢報いようとしたものの、逆に首が絞まってしまった……という図式。
スペイン新聞協会、Google Newsの閉鎖に悲鳴 – TechCrunch
インターネットは、まるで熱帯雨林の繊細な生態系のようだ。一人の演者を取り去ると、残り全員が苦しみ死に至る。先週、政府がGoogleに厳しい処置を取ったスペインでそれが起きた。スペイン政府は同社に対して、スペインのニュースコンテンツがサイトに現れるたびに、ニュース提供者に支払いをすることを要求した。これに応じて検索巨人は当地でGoogle Newsを閉鎖したため、El Pais、La Vanguardiaを始めとする同国の主要新聞コンテンツは現在見ることができない。
その法律を作ろうと働きかけたのはメディア側だと思うのだが、Googleから小銭を取ろうとしたら、Googleがあっさり手を引いてしまって、目論見が狂ってしまったようだ。
おそらく、Googleが妥協して金を払ってくれると打算したのだろう。
「転載や引用はこのくらいあるから、このくらいの儲けになるはずだ」
「うまくいけば、かなりの利益になるぞ」
「これで俺たちは安泰だ」
とかなんとか考えていたのかどうかは知らないが、皮算用はしたはずだ。Googleはおとなしく従うはずだと。
ところが、Googleは抵抗することもなく、
「じゃあ、や~めた。あとのことは知らないよ」
と、予想外の展開。
あわてたのはメディア側。
昨夜スペイン新聞出版社協会(AEDE)は声明を発表し、Google Newsは「単に市場で独占的立場を与えられたサービスが閉鎖しただけではない」と述べ、Googleの決定は「間違いなくスペイン市民に負の影響を与える」ことを認識している。
まるで、悪いのは自分たちではなく、Googleであるかのような主張。メディアにとって痛い展開なのに、市民が不利益を被ると論点のすり替え。
別にGoogleを擁護するわけではないが、メディアの対応もなんだかなーである。
最近はそうでもないが、一昔前は、日本でも「既存メディア VS. インターネット」の対立があった。ネットの普及で、既存メディアの存在価値や利益がおびやかされるとか、既存メディア=善、ネットメディア=悪、というような論調など。
しかし、時代はネット主流になり、既存メディアもネットを介して収益を上げなくてはいけなくなった。そのためには検索サイトが最重要の導線となり、GoogleやYahoo!なしでは成り立たなくなっている。
法律ができてしまった以上、Google Newsがスペインに復活することはないのだろう。Googleを標的とした法律なのだから。法律を廃止するか、改正して例外条項を盛り込むかしないと、Googleは戻ってきてくれなさそう。
Googleは達観しているかもしれない。
ある意味、お仕置きだ。
巨人に立ち向かって勝利を手にしたつもりが、巨人は戦うことなく撤退してしまった。脅威だった巨人がいなくなってみると、じつは巨人のお陰で自分たちが生かされていた……と気がついてしまった。
ネットを生態系に例えるなら、Googleは捕食者の頂点に君臨しているだけでなく、被食者(ネットメディアやユーザー)を育ててもいるし、草食動物が食べる植物(ネット環境、OS、アプリケーション)の面倒までを見ている。
Googleがネット覇権を握るのは脅威ではあるし、面白くないことではあるが、対抗できる勢力がいないのも事実。
Googleに依存するのをよしとするか、あるいは、孤高を貫いて自力でなんとかするか。
既存メディアにとっては、どちらも茨の道なのかもしれない。