タバコを自販機で購入するときに、成人であるかどうかを判別するためのシステム「taspo」が導入されようとしている。
私も喫煙はするので、禁煙しない限りは、いずれは必要になりそうだ。
だが、そもそもこの「taspo」は、どう考えても意味のないシステムだ。
それに関する記事。
「taspo」申し込み開始~未成年者の喫煙を防止できるか? (nikkeiBP on Yahoo!ニュース)
作田:興味深いデータがあり、私たち日本禁煙学会のサイトで公開しています。taspoの取り組み主体である社団法人日本たばこ協会、全国たばこ販売協同組合連合会、日本自動販売機工業会は、「成人識別機能付き自販機」を2004年5月から試験稼働させてきました。このうち、種子島で行った調査の結果です。
(中略)
未成年者がたばこを入手した方法について種子島署に確認すると、「家族のカードを持ち出したり、知人から借りて、自販機で購入した」という少年がいたことが分かりました。taspoを導入しても、全国で同じような現象が起きる可能性は十分あるでしょうね。
試験稼働で失敗しているのに、なぜ導入することが決定したのだろうか?
そこには、建前と利権が絡んでいるように思う。
これは「エコ偽装」と同様の論理だ。
「未成年の喫煙を防止する」という理念は正しいし、誰しも共感することだろう。それは環境問題で「環境にやさしい」というのと同じこと。
だが、方法が間違っている。
「taspo」のカードを作っても、それは誰でも使えるわけだし、購入者が成人であるかどうかを判別するのではなく、カードの持ち主が誰かを判別するだけだ。つまりは、カードはただの飾り以上の物にはならない。
他人のカードを使うこともできるし、おそらく偽装カードも出てくる。
一時的に未成年の購入が減ったとしても、手口が巧妙になってしまうだけだろう。
利権の部分では、このシステムの導入のために、すべての自販機を対応させなくてはならず、全国で60万台以上あるといわれる機械を新しくするのには、莫大な金額が動くことになる。そこから利益を得るのは、どこなのか? おいしい話ではないか。
自販機のメーカー、システムを作った会社、運用する会社、そして日本たばこ産業にも利益が入っていくはずだ。
嫌煙が広がり、喫煙できる場所やお店も減っていく中、業界が別のところで儲かる手法として導入しているようにも思える。
どんな会社が絡んでいるのかと思ったら……
NTTデータなど8社、たばこ自販機用ICカード「taspo」のシステムを構築:ニュース – CNET Japan
ICカードは非接触型カードを採用。データセンターと自販機は無線通信網で接続する。またICカードには、JCBが提供する電子マネー「Pidel(ピデル)」も導入し、電子マネーを搭載したカードとしては、国内最大規模の発行枚数となる見込み。
8社はTIOJが発行するICカードの申し込み受付からデータ入力、ICカードの製造・発行、各種問い合わせ対応、関係書類の印刷、コンピュータセンターの構築・運用などを行う。各社の役割としては、NTTデータが元請けとして全体のプロジェクト管理を担当。NECトーキンがICカード製造、NTTドコモが自販機ネットワーク関連、大日本印刷が印刷業務、トッパンフォームズがICカード発行業務、トランスコスモスが申し込み処理業務、日立製作所がデータセンターシステム構築、ベルシステム24が問い合せ対応業務をそれぞれ担当する。
なんともいろんな業界が、このシステムに群がっていることか!
導入を後押しするわけだ。
いよいよもって、「taspo」の本当の目的が怪しくなる。
引用した記事の中でも書かれているが、本当に喫煙者を減らしたいのなら、自販機そのものを廃止すべきなのだ。
それをしないのは、「未成年の喫煙を防止する」というのが、ただの建前でしかないことを物語っている。
これは「喫煙防止偽装」だ。