父が心臓の手術で入院した。8時間におよぶ大手術だったらしい。
以前からずっと具合が悪く、小さな手術を繰りかえしていたのだが、いよいよボロボロになった心臓にメスを入れたのだ。
実家は大分県で私は東京にいるため、見舞いにもそうそう簡単には行けない。うちは4人家族だが、現在、両親、私、そして弟はそれぞれに離れて暮らしている。家族が一同に会することもめったになく、数年に一度くらいしか顔を合わせることができない。父とはもう5年くらい会っていない。
離れている家族だが、いい関係の家族だと思っている。父と母を尊敬しているし、わがままな私を両親は叱咤しながらも見守ってくれたし、助けてもくれた。感謝の気持ちでいっぱいだ。
田舎から東京に出てきたのは、自分のやりたいことを実現するためだった。当初は反対されたが、結果的には送り出してくれた。上京してからは、いろいろと苦汁をなめることもあったが、それなりに目標への階段を上ってきた。まだその途上ではあるが、いまこうしていられるのも両親のおかげだ。
出版関係でフリーランスの仕事をしているのだが、フリーランスといえば聞こえはいいかもしれないものの、収入は不安定だ。自分が生活していくのに精一杯なのだ。
母からたまに電話がかかってくると、決まり文句のように、
「ちゃんと食べてる? 仕事してる?」と、母は茶化しながらも、心配そうにいう。
「うん、まぁ、それなりに……」と私は答える。
そんな自分が情けなくもある。
いつかその恩返しをしたいと考えているのだが、なかなか思うようにいかないまま月日が流れている。なんとも親不孝な息子だ。
父にも母にも長生きしてもらいたい。いつか必ず恩返しをするから……。
そのためには頑張るしかないのだが……。
父の健康の快復を願いつつ。