ネットでの誹謗中傷が問題になる。
多くはSNSが舞台になっているが、ヤフコメも槍玉に挙がっている。
しかし、それは誇張された偏見でもあるんだ。

「ヤフコメ」は日本の恥? 社内で問題視も「PVが減るから閉鎖できない」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

ニュース配信サイト大手のヤフーニュースのコメント欄、通称「ヤフコメ」には、大坂の記事に数百ものコメントがついた。そのほとんどが、大坂に対する批判だ。なかには「(聖火最終ランナーは)純日本人を起用するべきだった」といった外国人嫌悪むき出しのコメントもある。

ヤフーニュースの月間ページビュー(PV)は昨年4月に225億を記録。ニュースメディアとして影響力は大きい。にもかかわらず、なぜ選手を傷つけるコメントが放置されているのか。ヤフー関係者は、こう話す。

「ヤフーニュースのPVのうち、1~2割はコメント欄が稼いでいる。コメント欄を問題視している人は社内でもたくさんいるが、PVが減るから閉鎖できないんです」

(中略)

高田昌幸・東京都市大教授(ジャーナリズム論)は「ネット上の匿名投稿は必要。実名でしか意見を言えない社会は諸刃(もろは)の刃。権力批判も難しくなる」とした上で、言う。

「コメント削除等の権限をヤフーに与えすぎるのも危険。世論を一定の方向に導きかねない。匿名コメント欄を維持するなら、削除や非表示の明確な基準を示し、個別具体的にも理由を明らかにすべきです」

最近のヤフコメは、数年前に比べればおとなしくなった。
多少は管理されているのだろう。

10年以上前、ネット民の書き込み場所は「2ちゃんねる」が主戦場だったのが、SNSの普及でユーザーが拡散し、Yahoo!ニュースがコメント欄を設けたことで、代替として機能するようになった。
露出度ではヤフコメの方がメジャーだからね。

誹謗中傷は取り締まるべきだが、ヤフコメの全体を見れば、誹謗中傷をしている人間はわずかだというのも事実。
「悪貨は良貨を駆逐する」というように、ごく少数の人間でも、悪質なコメントは目立つしニュースとしてセンセーショナルに取り上げやすい。だから、マスコミも飛びつく。

炎上案件の多くは、マスコミが取り上げることで、大きなニュースになっている。
いわばマスコミは、炎上増幅装置の役割を担っているともいえる。
ネットの書き込みを批判しつつ、自らが炎上にガソリンを注いでいるようなものだ。

がしかし、ネットがなかった時代を思い出してくれ。
かつては新聞や週刊誌やテレビが、芸能人や有名人のスキャンダルを暴露して、公開リンチをしていたんだ。

古い話を持ち出して悪いが、戦時中の朝日新聞は戦意高揚のフェイクニュースを垂れ流していたではないか。終戦記念日を前後して、戦時中の様子を伝える番組を見る機会が多いから、そこに出てくる新聞記事のひどさは、戦後世代の私でも虫唾が走る。

マスコミといいつつ、記事を書いているのは記者個人だ。署名記事は少ないが、新聞・雑誌・テレビ等は媒体であって、そこに出てくるニュースは記者の主観で書かれたものであることに変わりはない。いちおう、校閲や上司の許可が必要ではあるが、それでもときどき誤報やねつ造記事が出てくる。
マスコミはネットを糾弾できるほど高尚でも公平でも偉くもない。

ヤフコメの暗黒面ばかりが注目されるのだが、ヤフコメには真摯な意見交換や感動的なコメントが投稿されてもいる。
傘に日本文化を感じたアメリカ人」で取り上げたのも、その一例。

しかし、こうしたコメントが話題になることもニュースになることも、ほとんどない。
マスコミにとってニュースバリューがないからだ。
善行よりも悪行の方が、ニュース的に面白いのだろう。

新型コロナの報道でも、感染者が何人、重症者が何人、死亡者が何人、という報道はされるが、なぜか快復者が何人というのは報道されない。
8月16日現在、累計感染者数が1,148,073人、死亡者数が15,412人だから、死亡率は約1.34%。
現在闘病中の人もいるが、累計退院者数は965,596人、84%の人は後遺症で完全快復とはいかないまでも死地を脱している。
そういう情報は調べれば出てくるが、報道としてはあまり触れられない。ネガティブ情報で危機感をあおる方が、ニュースとして注目されるからだろう。

マスコミは、ネガティブ情報を好むようだ。
ハイエナが屍肉をあさるように、マスコミは注目を集めやすいネガティブ情報に食らいつく。
その方が「売れる」と考えているのだろう。
ヤフコメが荒れることが多いのは事実だが、そればかりではない。
PVが稼げるから閉鎖できないというのもあるだろうが、マスコミだってネガティブ情報を載せることで稼いでいるんだから、同じ穴の狢だ。

関連して以下の記事。

テリー伊藤「日本人が今、人を批判する天才に」と持論、ネット上のコメント「僕、見ないですよ」― スポニチ Sponichi Annex 芸能

演出家でタレントのテリー伊藤(71)が15日放送のフジテレビ「ボクらの時代」(日曜前7・00)に出演し、落語家の笑福亭鶴光(73)、タレントの稲川淳二(73)と対談。ネット上に寄せられる「批判」コメントについて語った。

(中略)

「ネットなんかでもすごくよく、人を批判したり追い込んでいくってあるでしょ」と持ち出したテリーは、「僕、見ないですよ。もう嫌になってくるでしょ、面白いこと言っていることが好きなんで」。鶴光はこの意見に賛同。「人を批判すると、あんまり周囲も愉快にはならんのよ。言われている人も嫌やし、言うてる本人も俺は何と器の小さな人間なんだと、慈悲とか愛の心を持てんのかってなるやんか」と話していた。

もはや、ジジイの放言だな(^_^)b
テリー伊藤さんは視野が狭くなったのかな。
「ネットは見ない」といいつつ、ネットを批判するという矛盾。見ていなくてなにがわかるんだろう? 超能力でもあるのかね?
例えると、読んでない本の書評を書くようなものだ。

おそらくマスコミが取り上げる記事が情報源なのだと思うが、前述したようにマスコミが取り上げているのは悪目立ちするネガティブ情報ばかり。
ごく一部の人間の愚行から、「日本人が今、人を批判する天才に」と多くの人が同罪のように扱うのは、偏見だし差別だよ。

ある犯罪者が逮捕されて、それが外国人だった場合、「○○人は犯罪者」とレッテルを貼る。
その考えかたと同じだ。
テリー伊藤さんは、ごく一部のネット民の愚行から、ネット民全部が愚か者といってるわけ。
その考えかたの背景には、自分は頭が良くて善人で正義だという自負があり、ネット民はバカで悪だという意識がある。それゆえの「上から目線」だし、ネット民を見下している。
その自覚がないらしいことが情けない。

この記事に対するヤフコメに、よいコメントがあった。

小木曽健
ネットリテラシー専門家報告

「SNSのせいで世の中が攻撃的になった、不寛容になった」という声をよく耳にしますが、実際はそのような変化は起きていないと考えています

ネットが人間を「陰湿な攻撃」に駆り立てるのではなく、実はもともと陰湿で攻撃的だった人が、ネットによって見えやすく、わかりやすく炙り出されているのです

他人を中傷する人の割合は、数値的に見ても全ユーザーのごく一部に過ぎません。大多数の人たちは、その中傷に同意しておらず、むしろ嫌悪しています。が、そんな当たり前のことをわざわざ投稿しません。みな忙しいですから

ネットは、投稿しない人=いない人。つまり見えないのです。見えているのは陰湿な攻撃者だけ。その結果、あたかも世界中が不寛容で攻撃的になったように見えている、と解釈しています

SNSは人柄がバレる道具なのです

だからと言って、誹謗中傷された側のダメージに変わりはありません。解決すべき重要な課題です

 

そもそもマスコミとか野党がそれでワイドショー等でテリー伊藤氏らがやってきた行動が真似されてるのだから『お前が言うな』って部分が多大にあるんだけど内容については同意

 

自分が批判(誹謗)するのは言論の自由。批判されるのは誹謗中傷。
マスコミが長年独占してきた情報(独善的、偏向的)発信をネットに奪われて世論誘導できなくなったから、ネット批判を悪とレッテル貼りをしている。

ネットは匿名だと批判するが顔と名前を出して主張するのは高額な報酬と引き換え。一般人は自分の生活があるから自由に発言が出来ない。ネットはその障壁を取り除いてくれた。

安倍前首相の難病を揶揄したのは絶対に忘れないぞ。難病に苦しむ人も併せて嘲笑したようなもの。

 

そうは思うのですが、重箱の隅を突くような批判を繰り返してきたのはメディアだし、あなたそもその先頭にいたのでは?日本人は自分自身の意見を持ったり表明するのは苦手で、メディアがそういう姿勢だとみんなその方向に流れますよね。結局、メディアがやってきたことがとうとう自分たちの首を絞め始めたということでしょう。同情に値しません。

 

人それぞれで「おかしい」と思うことは違うわけで、ネットはその「おかしい」と思うことをそれぞれが発信できるようになっただけだと思います。それを「批判の天才に」って一纏めにして言うのもちょっとズレているなと感じます。
確かに悪意やある意図を持ってやっている人はいますが、ネットを利用する人全てがそうだとも言えないですよね。
そもそもがネット以前のメディア社会では一部の人しか自分の考えを発信できなかったのも、今から考えると健全とは言えないのかなと。テリーさんの様なずっとメディアの側にいた人にとっては、今はやりにくい世の中にはなったと思いますけどね。

 

この意見だけをとれば賛成だし、同感だ。
ただ、これまで、テレビや新聞は人の批判をどれだけしてきたか。
有能な政治家や、真実を発信できる著名人、一般人に至るまで、
言葉を使って引きずり降ろしてきたじゃないか。
ネット民も確かに自制と謙虚さ、寛容さは持つべきだと思う。
ただ、この意見はネットに既得権益をとられた恨みのようにも聞こえるんだよなあ。

……という感じで、私が見た時点で2300件あまりのコメントが付けられていたが、8割方は真摯な意見だったよ。
これらの意見に聞く耳を持たないとするなら、言論封殺だよね。
マスコミは自分たちに都合が悪いから、これらのネット意見は見なかったことにするんだろうけど。

ヤフコメに問題があることは事実だが、すべてが悪いわけではない。
「ヤフコメは日本の恥」と全否定するのではなく、良質のコメントがあることも報道してほしいものだ。

諌山 裕

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