ある企業が「ブラック」かどうかで話題になるが、ブラックではないという抗弁の根拠が不明確なんだよね。
ワタミの外食事業の年収は、平成24年度において433万円であり、厚生労働省公表の宿泊・飲食サービス業平均年収370万円を上回っています。
「平均」というのは、計算上のトリックになる。
極端な例を挙げると……
社員100人(社長を含む)で、99人は年収300万円、社長が1億円の年収だとした場合。
((300万円×99人)+1億円)÷100人=397万円
となり、平均は397万円と実際の社員の年収よりも高くなる。
もっと極端にして、社長の年収が10億あると……
((300万円×99人)+10億円)÷100人=1297万円
……と、社長ひとりの年収だけで平均は桁違いに上がる。
上記の引用部分で「ワタミの外食事業の年収」と、アルバイトから役員までひっくるめた母数になっているため、説得力が乏しくなっている。
当然のことながら、役職や役員の給与は高いだろうから、その人数と金額がどれほどあるかで平均は上がる。
公正を期すのなら、賃金の階層別に平均を出した方が良い。アルバイト、平社員、役職付き社員、管理職社員、役員以上……というように。
また、時間外労働時間については以下のように記述されているが……
時間外労働時間については、ワタミの外食事業の平成24年度月平均は38.1時間。これは、36協定で定めた上限45時間を下回っています。
「36協定」とは……
★延長時間の限度
一般労働者の場合
三六協定で定める時間は、最も長い場合でも次の表の限度時間を超えないものとすること。
期間 限度時間 1週間 15時間 2週間 27時間 4週間 43時間 1箇月 45時間 2箇月 81時間 3箇月 120時間 1年間 360時間 ※一定期間が上の表に該当しない場合の限度時間は、計算式で求める時間となります。
(具体的な計算式は、労働基準監督署にお問い合わせください。)
※限度時間は法定の労働時間を超えて延長することができる時間数を示すものです。
また、休日労働を含むものではありません。
……ということで、1カ月の上限が45時間ではあるのだが、年間では360時間以内。つまり、360時間÷12カ月=30時間以内でないと、三六協定を上回ることになる。
月平均が38.1時間であれば、年間457.2時間になってしまう。
これでは三六協定違反である。
わたなべ氏は自ら墓穴を掘っているようだ。