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【サッカー】E-1での日本代表を冷静に評価すると…

E-1での、北朝鮮、中国、そして韓国との試合を終えて、優勝を目標に掲げながら、韓国に惨敗。
この結果を受けて、監督解任論がまたまた湧き上がっている。

韓国戦は、たしかに情けない試合だった。それに異論はない。
だが待て。
敗因は監督の問題だけなのか?
そこは冷静に、可能な限り客観的に分析する必要があるように思う。

いくつかの記事を取り上げながら考えてみる。

金田喜稔が韓国戦を斬る!「ショックな敗戦。ハリルにこのまま任せていいのか疑問符が」

 韓国は決して強豪ではない。それだけに結果、内容ともに「ショック」以外の言葉が出ない。正直、何も見るべきポイントはなく、屈辱的な敗戦だったと言っても過言ではないだろう。勝利が大前提だっただけに、本大会に向けて新戦力の発掘は振り出しに戻ってしまった。

(中略)

ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の指導力のなさ、ベンチワークのレベルの低さも気に掛かった。選手間に共通理解がなく、今まで何をやってきたのか聞きたいくらいだ。簡単に“解任論”を口にしたくないし、彼にも悪いけれど、「このまま任せていいのか」と疑問が湧いた。

(中略)

「デュエル」を強調して「勝て」と声高に叫ぶが、どうやって世界との差を埋めるのかの具体的な提示がない。新しい引き出しを作れない、あるいは現在の戦術をブラッシュアップができないのであれば、新監督の招聘も視野に入れなければいけないだろう。

なかなかに手厳しい。
しかし、今回のメンバーは国内組のみであり、けが人続出で、初招集初出場の選手もいて、しかも浦和がCWCに出ていたこともあって、戦力的には大幅にダウンしていた。
いわば、2.5軍くらいの戦力だったと思う。

対する韓国は、欧州組がそもそも少なく、ほぼ主力メンバーだ。力の差は歴然としていた。
日本はベストメンバーだからといって、それほど強いわけではないのに、大きなハンデを付けられていた。貧弱な武器で、どうやって戦えばいいのか、だれが監督でも手詰まりになってしまうのではないか? 鉄砲と竹槍では勝負にならない。

アジアで勝てなければ、世界でも勝てない……というのには同意する。ただし、それはベストメンバーがそろっていての話。今回招集されたメンバーで、W杯に行くわけではないことを思いだした方がいい。

負けると監督交代論が出てくるが、では、誰が監督なら強いチームになるのかの提言がない。代えろというからには、誰と代えるのかがなければ議論にならない。
実現は無理だとしても、世界一になったドイツのレーヴ監督なら、日本を優勝できるチームにしてくれるのか?……といったら、まず100%不可能だろう。ドイツが強いのは、選手個々のレベルが日本とは桁違いに高いからだ。優れた選手がそろっているから、監督の思い描く戦い方ができる。

ハリル監督がイメージしている戦い方はあっても、選手のスキルが不足していて、十分な戦い方ができない。そのジレンマはあると思う。

将棋に例えるなら、飛車角落ちだけでなく、金、銀、桂馬、香車も欠けていて、歩ばかりだったともいえる。

日本チームを将棋の駒に例えると…

こんな感じだろう。
王将はゴール兼ゴールキーパーで、駒の数を11個にしてある。
どっちが有利か、一目瞭然だ。羽生善治さんでも、この日本チームで勝利することは、至難の業だと思う。ルールとして、取った相手の駒は使えないとするなら、なおさらだ。
このような戦力では、監督の能力以前の問題で、なにか策を弄してどうこうなるものではない。

ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の指導力のなさ、ベンチワークのレベルの低さも気に掛かった。」というが、チームの練習やミーティングに密着して一部始終を見聞きしているわけでもないので、どうしてそんなことを断定できるのか不思議だ。テレパシー能力でもあれば別だが。

監督がなにがしか指示しても、それを選手が実行できなければ、意味がない。監督の求めるタスクをこなせないのが、今回の代表メンバーだったのではないか。「歩」に「飛車」の動きをしろといっても無理な話なのだ。

「デュエル」を強調して「勝て」と声高に叫ぶが、どうやって世界との差を埋めるのかの具体的な提示がない。」というのも、これまた憶測でしかない。
おおっぴらに「かくかくしかじかの戦略と戦術でいく」などといってしまったら、手の内をさらけ出すわけで、それこそバカな監督になってしまう。

そもそもそんな提示をしなければいけないのだろうか? そこが疑問だ。監督の考えは極秘事項でもあるわけで、ペラペラしゃべるのがいいとも思えない。むしろ、ハリル監督はしゃべりすぎだ(笑)。
表に出てくる監督の言葉は断片的でしかなく、通訳を介していることもあって、真意があまり伝わっていないように思う。多分にブラフやアイロニーも含まれていて、言葉通りに受け取るのは間違いだろう。

「デュエル」という言葉が目立っているが、それは欧州サッカーでは当たり前のことであって、監督は当たり前のことを要求しているにすぎない。日本、特にJリーグでは、激しくデュエルする場面が乏しいため、なにか特別なことのように扱われているだけだ。

ようするに、日本のサッカーは時代遅れなのだ。日本らしいサッカーは、世界には通用しない。そのことは明白なのだが、日本らしいサッカーをやれば強くなれるという幻想を捨てきれない。世界の潮流に乗れない日本サッカー界(メディアや評論家も含む)は、ハリル監督の新しいサッカーに拒絶反応を示してしまう。

極論すれば、日本では、スポーツとしてのサッカーではなく、古典的な武道のように「サッカー道」を求める傾向にある。ゴールを奪うための戦いではなく、美しいパスが通るボール回しを称賛する。サッカーが採点競技であれば、様式美としてのパスサッカーは強いかもしれない。

【藤田俊哉の目】ハリル監督は解任されてしかるべき… もはや期待感より不安が大きい

 例えば、自国の代表チームやビッグクラブがこうした厳しい状況に置かれた場合、こちらでは連日のようにメディアでの議論が流される。日本のメディアも、この大会の結果を受けて、これからワールドカップまで、ハリルホジッチ監督にチームを託してもいいのか、という議論がどんどんされるべきだ。適切な関係を保つことはお互いを成長させるから。

ワールドカップに出場する国を見渡せば、決して強豪国とは言えない韓国相手に手も足も出なかった。この事実をどう受け止め、半年後のワールドカップでの成功へとつなげるのか。ワールドカップで勝てるという期待感より不安のほうが大きくなったいま、もはや擁護派は少ないのではないか。

欧州の環境と日本の環境を同列に語るのは、そもそも間違い。
欧州のクラブチームが監督の首をさっさとすげ替えられるのは、優秀な監督がたくさんいるからでもある。各国で言語の違いはあっても、英語を話せることは必然にもなっているから、コミュニケーションの問題も敷居が低い。
ただ、それでも代表監督の途中交代に関しては慎重だろう。クラブチームと違って、継続性が重要でもあるため、コロコロ代えると弱体化していくだけになってしまう。

個人的には、代表監督は日本人でもいいと思っている。W杯経験のある監督は岡田監督しかいないが、その条件を外せば、候補はいるだろう。
日本人監督で、日本らしいサッカーで戦って、W杯は勝てなかった……というのなら、それはそれで納得するしかない。幻想は捨て、日本は弱小国なのだと再認識すればよいだけだ。
目標は、W杯に出場すること。
謙虚でいいではないか。

将来的にW杯の出場枠が拡大されるので、日本人監督でも余裕でW杯に出場できると思う。
高校野球で、甲子園に行くことが夢……というようなことでもいいじゃないか。
W杯のグループステージで、世界の強豪と対戦して、3戦全敗は当たり前。
「やっぱ、世界は強いな−」と。

今の状況は、南アフリカ大会前のときの、岡田監督が置かれていた状況に似てきた。
期待されず、批判され、監督交代論が噴出している。

新しいことをやるときには、リスクと痛みをともなう。順風満帆でなにもかもうまくいくことの方が少ない。そもそも日本は常勝チームではなく、弱小国なのだから、一足飛びに強豪国になれるわけがない。
来年に予定されている欧州遠征でも、惨敗する可能性は高い。逆に、そこで運良く勝ってしまうと、ドイツ大会の前のように、勝利の運を使い果たしてしまうかもしれない。

今はどん底なのだ。
ここで踏ん張り、堪えて、前に進む時期ではないかと思う。

繰り返しになるが、監督交代論をいうのであれば、誰なら監督をまかせられるのかの提案をすべきだ。この時期で、実績のある外国人監督を呼ぶのは難しい。ならば日本人監督ということになる。
私はそれでもいいと思う。
じつのところ、誰が監督であっても、主要な選手は変わらないから、彼らにできることの限度は見えている。E-1では「歩」ばかりだったが、海外組が入ることで、金、銀、香車くらいは駒として使える、残念ながら、飛車、角の強い駒はなく、絶対的な戦力不足の解消にはならない。

気が早いが、W杯の予想をすれば、もっともよい結果としては、3戦引き分けかなと思う。つまり、勝ち点が3。勝ち点が3でも、グループ突破の可能性は、他のチームの成績次第で可能ではある。
コロンビアがセネガルとポーランドに勝ち、セネガルとポーランドが引き分けた場合に、日本は勝ち点3でも勝ち上がれる。
それこそ、運しだい。

【松木安太郎】韓国戦の敗因はベーシックな部分。日本には”戦える選手”がいなかった

 ただ、韓国戦の一番の敗因は、ベーシックな部分なんだ。ボールを取りにいかないとか、マークが甘いとか、相手に寄せないとか……。なぜこんな事態になったかと言えば、日本に”戦える選手”がいなかったからだろう。

(中略)

今のJリーグには、今日の韓国のように試合の最初から最後までボール際でガツガツ行くようなチームは少ないよね。だから、こういう国際試合になった時に、日本はいつもボール際で負けてしまう。Jリーグそのものの課題が出てしまったんだ。

私も、松木さんの分析に同意する。
反応が遅いし、パスの精度も足りない。迷っている選手が多く、判断が消極的になる。
また、せっかくボールを奪取しても、ドリブルが駆け上がるのではなく、ほかの選手が上がってくるのを待つシーンも多かった。その待ち時間の間に、相手はカバーに追いついてしまう。

韓国戦について、いろいろな記事を読んだが、評論家の方々の多くが、「韓国」ということでいささか感情的になりすぎているように思った。
ハリル監督が「韓国の方が全ての面で勝っていた」といったのを「弁明」ととらえているが、冷静に招集された選手の戦力を評価すれば、2.5軍程度しかないことは明白。「歩」ばかりだったのだ。
しかも、A代表や国際試合経験が乏しい選手もいて、相手にびびっているようにも見えた。

監督の問題をいうのであれば、中国のリッピ監督の方が、ハリル監督よりも実績は上だが、その手腕をもってしても2.5軍の日本に負けている。戦力が乏しければ、名将といえども勝てないということだ。

しばらくは代表の試合はないため、監督問題がどういう展開になるのか?
サッカー記事を書く人の中には、監督になれるライセンスを持っている元選手もいる。監督批判をするのもいいけど、
「ハリルではだめだ! オレを監督にしろ!」
という人は出てこないんだよね(笑)。

ハリル監督解任論をいう評論家先生方は、では誰なら適任なのか、提案してほしいね。ただ名前を挙げるだけでなく、日本まで来てくれる可能性のある監督が条件。あるいは、日本人監督でも、この監督ならW杯で勝てるという監督を推薦してほしい。

諌山 裕

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