NHKの新しいドラマシリーズなのだが……。
この作品は、日本のドラマらしからぬ絵作りをしている。冒頭のシーンから、「むむ!」と釘付けになってしまった。
要注目作品だ。
“グレース”という愛車に乗って成田に向かった妻。そして、南仏で彼女を襲ったバス転落事故。遺品として残された妻の愛車のカーナビには、夫に内緒で日本各地を訪れていた旅の履歴が残されていた!
妻の不貞を疑った夫、希久夫はその謎を解くため、カーナビの履歴をたどる旅に出る。
藤沢、松本、近江八幡、尾道、松山・・・・
美しい日本の原風景を名車でたどる希久夫の前に、次々と現れるかけがいのない人々との出会い。
妻が遺した疑惑のカーナビ履歴。果たしてそれは妻の夫に対する裏切りだったのか、それとも・・・
源孝志の原作小説のドラマ化だが、原作者自身が脚本と演出を手がけているようだ。
その冒頭シーン。
天井からの視点で、ガレージ内を撮っている。
まず、このカメラアングルが意表を突いている。加えて、車のフロントガラスに映る人物まで計算されている。
素晴らしい!
この数秒のシーンで、ひと味違う作品だというのが伝わってきた。
これに限らず、シーンの多くでアングルがよく考えられていて、ライティングも効果的だ。
日本のドラマの多くは、べたっと平面的で、ライティングはギラギラで、緊張感のない絵になってしまうのだが、この作品の絵作りは適度な緊張感を保っている。
これはただ者じゃないぞ。
おそらく、欧米のドラマを意識していると思う。「CSI:科学捜査班」とか「ツイン・ピークス」とか「ストレンジャー・シングス未知の世界」とか「ブラックミラー」とか……etc.
日本が舞台で日本人俳優なのだが、どこか海外ドラマの雰囲気が漂っている。
海外ドラマのパクリ的ドラマは、これまでにも作られてきたが、劣化コピーの作品にしかなっていないものが多くで、失望することが多々あった。
しかし、本作は海外ドラマの雰囲気を吸収しつつ、うまく独特の絵作りに生かしている。
今までになかった日本ドラマだと思う。
繰り返すが、要注目作品である。