仮想通貨、最近は暗号資産と呼んだりするが、その相場は乱高下を繰り返している。インフレ率が高く、その差額が大きな利益を生むが、逆に大損する場合もある。ビットコインの登場以降、次々に新しい仮想通貨が作り出され、一部の人々の欲望を暴走させている。
 そんな仮想通貨フィーバーを批判する記事。

Valeriy RyasnyanskiyによるPixabayからの画像

ナシーム・ニコラス・タレブ「ビットコインはバカ発見器だ」 | 仮想通貨愛好者と陰謀論者は同じ“クラスター”に属する | クーリエ・ジャポン

2022年、ビットコインはその価値を大幅に下落させ、テラやFTXは破綻──。2008年の金融危機を予言した元トレーダーの研究者、ナシーム・ニコラス・タレブは、この未来も予見していたのだろうか。かつては仮想通貨を支持していた彼は、2021年以降、強硬な反対派に転じ、仮想通貨愛好者たち──彼が言うにはその多くが陰謀論者だ──を相手に、真っ向から戦っている。

──2021年以来、あなたはビットコインについて「実際の通貨として機能することはできない」と警告してきました。まさに予言の言葉となりましたね。

私は2021年に発表した論文で、現行のビットコインは「政府不要の通貨」というコンセプトを充分に満たすことができなかったばかりか、そもそも通貨でさえないと述べました。

というのも、ビットコインは短期的にも長期的にも価値を維持することが難しく、インフレ対策にもならないからです。もっと言えば、投資においても安全な逃げ場とはならず、政府の政策に対する盾にも、壊滅的事態を乗り切るための手段にもならないのです。

金と比較すると明らかでしょう。ビットコインが機能するためには、意志を持ってかかわろうとする人たちによる積極的な保守(メンテナンス)が必要なのです。そんなことが必要な帳簿上の貨幣に、通貨価値や物理的なレベルでの存続を期待することはできません。長期、短期にかかわらずです。これからの世代の関心、メンタリティ、好みも不確かです。テクノロジーは移り変わりますが、金は金のままですから。

ほとんどの仮想通貨が抱える根本的な欠陥と矛盾は、そのシステムの創始者・マイニングする人たち・保有する人々が、単に基底となる取引の量によってというよりも、実際にはその通貨のインフレによって稼いでいるという点にあります。

(中略)

極右を見ていると、「ナイジェリア詐欺」と呼ばれているものを思い出します。これは、少額の前金と引き換えに巨額の金銭を約束するという詐欺の一種で、前金はその金を獲得するために使われることになっています。被害者が支払うと、詐欺師はその他の経費をでっち上げたり姿を消したりします。

もちろん、詐欺師からのメッセージは非常に馬鹿げたものなので、ほとんどの人は一読してそれが詐欺だとわかると思います。しかし、一定のカテゴリーの人たち、つまりバカな人たちを選んでやっているので、うまくいってしまうのです。

極右にも同じことが言えます。彼らの言うことはまったく馬鹿げているので、バカしか信じないのです。それでも人口が大きくなれば、常に何十万のバカがいますから。ビットコインでも同じです。これはバカを引きつけるもので、要するに、バカ発見器なのです。

 長い記事で、仮想通貨のことだけでなく、パンデミックや政治体制についてまで触れられている。やや焦点がぼやけているように思えるが、仮想通貨で稼ごうとしている人たちには、デマや陰謀論を信じる人たちと共通点があると説いている。

 なるほどと思える部分もある。
 仮想通貨が通貨たり得ない……という理屈はわかるのだが、現実問題として仮想通貨はリアル通貨(法定通貨)と交換可能で、その仕組みがあるからデジタルデータに資産としての価値が与えられている。仮想通貨がリアル通貨に換金できなければ、仮想とリアルとの接点は生じなかったのだが、デジタルデータをリアル通貨で売買する者が現れた。
 いわばパンドラの箱を開けてしまったわけだ。

 ビットコインの過去5年の変動を見てみると……

通貨グラフ BTC : JPY

 ……と、最低値と最高値で約20倍にもなっている。
 円・ドル相場で、20倍も跳ね上がってしまったら、経済はめちゃくちゃだ。ビットコインでそうならないのは、国家が担保する通貨ではなく、管理者のいない通貨モドキだからだろう。適切な基準がなく、最低値と最高値に制限がない。欲望の増減によって価値が大きく変動する。

 リアルマネーだとハイパーインフレで、紙幣が紙くずになったと例えられるが、仮想通貨の場合には、そもそも実体がないから紙くずにはならないし、どんなにインフレになっても取引が成立してしまう。
 ビットコインには発行数の上限が設定されているが、それを回避するために新たな仮想通貨を作ればいいという方法がある。そのため多くの仮想通貨が作られるようになった。それが繰り返されると、延々と新しい仮想通貨が登場する。

 現実の物販店舗で、ビットコイン(BTC)等での支払いに対応しているところもあるが、日々のレートが大きく変動しているので、昨日売れた商品のBTCが、今日のレートで大幅に値下がりしたとなると、利益も減ることになる。それで商売は成り立つのだろうか?……と思う。
 おそらく、BTCのまま保持しておいて、レートが値上がりしたときにリアル通貨に換金するといった方法だと思うが、資産管理が難しいように思う。
 最終的にはリアル通貨に換金しないと、現実の収益にはならない。仮想通貨だけで完結しないのが、最大の弱点だろうね。

 仮想通貨(プライベートデジタル通貨)の価値を保証する管理者がいないことが、大きな変動を可能にし、投機の対象になっている。
 そこで法定通貨としての、CBDC(中央銀行デジタル通貨、Central Bank Digital Currency)の導入が検討されている。しかし、課題も多いようで、実証実験の段階のようだ。日本では、まだ導入に積極的ではない。

 ブロックチェーン技術に通貨としての機能を紐付けているわけだが、既存のリアル通貨を紐付けられないから、ビットコインなどの独自の仮想通貨を紐付けている。
 日常生活では、基本的にリアル通貨じゃないと使えないので、仮想通貨は仮想通貨取引所を通じて、リアル通貨に換金しなくてはいけないという手間が発生する。そこが不便ではある。
 で、換金するときのレートによって、手取りは変動する。値上がりしているときはいいが、暴落すると大損になる。

 円・ドル相場でも、レートの変動による差額で売買されているわけだが、円安だ、円高だといいつつも、せいぜい数十円の変動だ。それが仮想通貨では数倍の差になったりする。
 「ビットコインはバカ発見器」とはいうものの、当面はマネーゲームのフィーバーは続くのだろう。

 CBDCが本格的に導入されるようになったら、プライベートデジタル通貨は衰退していくのかもね。

諌山 裕

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