2014年10月14日、シンガポールでのブラジルとの親善試合。
もとより勝てる見込みのない相手ではあったが、どれだけ善戦するか?……というのを見ていた。
しかし、予想以上にボコボコにされてしまった(笑)。
スポーツ紙、サッカー評論家がいろいろと書いているが、いくつか拾ってみよう。
4失点で完敗も見えてきた『アギーレ流攻撃と守備』。今後に繋がる希望と失望とは? – サッカーキング
もちろん、すべてが狙い通りに機能していれば0-4で負けていない。ただ日本の課題を語る前に一つだけ“エクスキューズ”を許して欲しい。ネイマールが凄すぎた――。
「ネイマールが凄すぎた」……これに尽きるね。
他のブラジルの選手もレベルは高いが、そこそこ対応はできていた。ただ、ネイマールだけは次元が違った。TV中継の解説者もいっていたが、日本選手の技量では「ネイマールは止められない」。
武田&前園氏がアギーレ戦術を徹底糾弾「年俸2億円でこの程度の試合か」 | 東スポWeb – 東京スポーツ新聞社
武田氏も語気を強めて言う。「日の丸を背負って戦うのに…。攻守両面で組織的なプレーが出せていないし、チームとして狙いどころも見えない。選手たちも球際で負けてばかりで、闘志も感じられなかった。まだスタートしたばかりというのはあるにしても、明らかにザックジャパン時代よりも力が落ちている」
(中略)
前園氏は指揮官の戦略を疑問視する。「ベストな選手で先発を組まないのはどうなんでしょうか。ブラジルと対戦する貴重な機会なのに、若手のテストをしましたけど、それならばジャマイカ戦で試せばよかった。ブラジルを相手にやることではありません。これでは苦労して、ブラジルとマッチメークした意味が全くないです」
ここでザックジャパンと比較するのは、フェアじゃない。
ザック時代は、いいときもあれば悪いときもあった。W杯のときに最悪の状態になってしまった。ザックジャパンで、メンバーが固定化しているのを批判していたではないか。現時点でのベストメンバーとは、ザック時代の固定化されていたメンバーにほぼ近いわけだが、それで戦っても将来に展望が持てるわけではない。4年後を見据えたベストメンバーを作っていかなくてはいけないわけで、そのためには新しいメンバーに経験を積ませる必要がある。
アギーレ監督のチョイスは、少々無茶ぶりではあると思うが、実戦で試さなければ経験は積めない。そういう意味では、起用された選手は貴重な経験をできたわけだ。それを生かすかどうかは、選手しだい。
メンバーが固定化されると批判し、新戦力を起用しても批判する、というのはいかがなものか?
ブラジルに惨敗…セルジオ越後氏激昂「世界との差は開いた。積み重ねも反省もない」 – サッカーキング
「世界のトップレベルとの差はワールドカップからさらに開いたね。積み重ねもないし、反省もない。
(中略)
柴崎はボールを失って失点したけど、Jリーグの感覚だと大丈夫と思っているんだろうね。リーグが成長していないってことだよ」
積み重ね……というのなら、ザッケローニ監督を続投させなければ、積み重ねにならないよ。W杯に出ていない選手には、その経験が欠けてるわけだから、積み重ねや反省を求めるのは酷というもの。見ているだけじゃ経験にはならないからね。
まぁ、セルジオさんはいつもの毒舌だから相変わらずなのだけど、セルジオさんも進歩がないなー(笑)。もうちっと、建設的な批評がほしいところ。
“極めてフェア”な0-4。ブラジル相手にイエローもなし。対応力、技術、アジリティで完敗した日本 | フットボールチャンネル | サッカー情報満載!
失点に関しては、ネイマールにファウルすることもできない状況だった。ただ、4点目はカカーが加速する前にファウル覚悟なら止められたかもしれない。これだけ力に差があるのに、日本のイエローカードは1枚もなし。本当にどうやって止めるつもりだったのだろう?
(中略)
後半は柴崎岳、本田圭祐、塩谷司など、相次いでボールを奪われてピンチが続く。かわせるつもりが奪われる。ブラジルの瞬間的な速さに対応できていなかった。
アジリティは本来、日本の長所である。しかし、今回は予測や読みも含めてブラジルが上手だった。
アジリティは日本の長所だろうか?
アジリティ(Agility)の意味は、「機敏。軽快。敏捷さ。鋭敏さ。」ということなのだが、サッカーにおけるアジリティのニュアンスは、単に敏捷性だけではないと思う。
日本人選手の特徴は、器用さであったり細かな動作だったりする。それをアジリティと勘違いしているように思える。足元の技術は長けている人が多いが、それはあまり動くことのない状態でのこと。走りながら、ドリブルしながらボールを自在に操れる選手は少ない。
サッカーに求められるアジリティには、器用さだけではなく連動するスピードが求められる。だが、日本人選手はスピードが乏しい。スピードには、身体能力としてのスピードだけでなく、判断のスピードも含まれる。一直線に走るのは速いが、相手選手をかわしながらジグザグに走るのは遅いとか、ドリブルは速いがシュートを打つタイミングが遅いとか、ボールを持っていないときは速いが、ボールを持つと遅くなるとか……どっかでブレーキがかかるのが日本選手だと思う。
ブラジル戦を見ていて感じたことは、リズム感が違うということだった。
日本人選手も、一瞬のダッシュや素早いパスはできる。しかし、ボールを保持しながら、相手を翻弄するステップを踏み、何度も切り返し、なおかつ前に走る……といった連動ができない。ネイマールがすごいのは、その一連の動作を軽やかなリズムでこなしていることだ。
日本は、そのリズムについていけない。
音楽にたとえれば、日本人は4ビートで、ブラジル選手は16ビートだ。つまり、サンバのリズムなのだ。サンバは厳密には4ビートだが、打楽器中心の音楽なので、1ビートを4拍で刻むため、実質的な16ビートとなりリズミカルな曲になる。
演歌の日本人とサンバのブラジル人……という感覚かな。
あのリズム感は、育った環境の違いでもあるので、その差はおいそれとは埋まらない。リズム感は生活の中にも反映されるから、普段の生活から16ビートに馴染まないと、ネイマールとダンスは踊れない(笑)。
日本選手が遅いのは動きのスピードではなく、動きのリズム感なんだ。
これを改善しようと思ったら、日頃聞いている音楽から変えなきゃダメだと思う。選手は移動中にイヤホンで音楽を聴いている人が多いが、その耳に響いている音楽はなんなのか? 演歌じゃだめだし、AKBでもだめ。日本の曲の多くは、スローテンポな4ビートなので、大部分はリズム感が遅くなってしまう。洋楽ROCKのメタル系なんかだと、かなり早いリズムのものがある。そういうのを聞いて、リズム感を養うことから始めなきゃいけない気がする。
早いリズム感でできているのは、調子がいいときの香川くらいだ。早いといっても、8ビートくらいかな。その香川も、最近はリズム感が悪くなっている。
ザックジャパン時代と比べて後退しているように見えるが、じつのところ本質は変わっていない。裏を返せば、W杯本番前までのザックジャパンは、とてもいい状態の日本代表だったということだ。そういう意味では、ザッケローニ監督は、選手の良さを最大限に引き出した、いい監督だったのだ。
強面の顔のアギーレ監督は、その印象ゆえに一部のサッカー評論家たちには評判がよくないようだ。スペインの監督時代のことで、なにやらきな臭い噂も出てきている。
賛否はあるだろうが、今までの代表監督ではやらなかったことをやっていることは評価したい。それが将来の結果として結びつくことを期待しよう。