政府や行政のデジタル化を進めようとしているが、なかなか一筋縄ではいかないようだ。
2021年の現在だが、FAXを廃止できない省庁は20世紀のまま足踏みしているらしい。
省庁ファクス全廃「断念」 情報漏えい、通信不安… 現場の反論数百件:北海道新聞 どうしん電子版
河野太郎行政改革担当相が先月、霞が関の全省庁に要請したファクス廃止に対し、「できない」との反論が数百件寄せられ、政府が全廃を事実上断念したことが分かった。情報漏えいの懸念や通信環境への不安などが理由で、一定程度の使用を認める方針だ。
政府関係者が明らかにした。河野氏はファクスをテレワークを阻害する要因の一つとみて6月末で原則利用をやめ、電子メールに切り替えるよう求めていた。道内を含む各地の出先機関も対象だった。
しかし、内閣官房行政改革推進本部事務局によると、各省庁から400件程度の反論が寄せられた。民事裁判手続きや警察など機密性の高い情報を扱う省庁でファクスは多用されており、メールに切り替えると「セキュリティーを確保する新システムが必要」との懸念が出されたという。
また、「通信環境が十分ではない」「危機管理上、複数の回線確保が必要」など、メールへの一本化に難色を示す声も相次いだ。
いやはや、いまだにこんなレベルなのかと呆れてしまう。
いったい、いつの時代の話だよ?
そんな調子だから、COCOAやワクチン関連システムがクソシステムになるんだ。作ってるのは外注ではあるが、チェックできないのは役所の責任だ。
問題点として上がった3点は、新たな設備投資が必要だということになるが、それもどこかに丸投げするわけで、省庁に群がるハイエナ企業が儲かるという仕組みだろう。
で、導入した新システムの使い勝手が悪くて、使いものにならない……という話になる。それで数十億円が無駄になる。
先が読めてしまう展開だね。
この3つの問題は、FAX廃止がどうとか以前に、政府・行政のデジタル化に欠かせない問題でもある。現状、それらが整っていない状況でメールのやりとりやデータの保存がされているわけで、危機管理上の重大問題でもある。
FAXが一般に普及し始めたのは1980年代だ。
当初は業務用であったため、行政機関には「行政用標準ファクシミリ装置」という独自の規格があったという。1990年代になると、一般の電話回線を使用する家庭用の安価なFAXが登場し、相互に互換性のある方式が導入されている。
インターネットのWWW(World Wide Web)が登場したのが1990年。
以来、電子メールが徐々に普及していくのだが、当時は回線スピードが遅く、テキストデータだけで画像などは送れなかったので、FAXと併用する場合が多かった。
誰だったか忘れたが、ある作家が原稿を郵便局からFAXで編集部へ送ろうとしたときに、はたと気がついてあわてていった。
「待って! コピー取ってないから、FAX送らないで!」と。
作家は原稿の紙が機械に吸い込まれて、それが相手方に送られると勘違いしたのだとか。
FAX昔話のひとつだ。
FAX以前は、省庁は紙の書類を直接送り届けて作業していたわけだ。コピー機は1960年代から登場しているので、コピーを取ることはしていただろう。ただ、昔のコピーは、積み重ねておくとインク面が張り付いてしまうことがあり、保存性はよくなかった。
紙の書類を送る手間が、FAXで間に合うようになったのだから、当時としては最先端だったんだ。
だが、そこから進歩が止まってしまった。
こんな調子では、デジタル庁があっても、デジタル化は遅々として進まないだろうね。
20年は遅れているわけで、これを数年で埋めるのは難しい。
突貫工事で進めようとすれば、いろいろと綻びが出てくるだろうし、情報漏洩も起きる。
デジタル時代に追いつくのに、10年はかかるんじゃないかな。
前途多難だ。