持続化給付金をめぐる委託問題が、ややこしくなっているようだ。
再委託ではなく、再々々々委託とか。
下請けに出すほど、払われる費用は安くなっていくので、末端ではかなり安く請け負っているはず。
持続化給付金「再々々々委託」 政府も全容把握できず:時事ドットコム
支給事務は、一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」が769億円で政府から受託。これを749億円で広告大手の電通に再委託した。電通はグループ5社を経由する形で、人材派遣大手のパソナや印刷大手の大日本印刷に外注した。
10日の衆院予算委ではさらに、国民民主党の玉木雄一郎代表が「孫請け」「ひ孫請け」の先の「やしゃご請け」に当たる大日本印刷の関連会社に外注されていたと、同社で働く派遣社員の証言を基に追及。梶山弘志経済産業相は「先の事業者については初めて聞いた」と驚きを隠さなかった。
ヒエラルキーの上の方は、右から左に丸投げするだけで、数十億円を中抜きするから、おいしい仕事だろう。こういう構造は、政府系の仕事だけでなく、一般の企業が発注元でも行われている。
私の勤める会社は、そうした末端にあたる仕事をしている。
過去には、政府系や都の行政系の仕事もやっているが、中間にいくつもの広告代理店や大手・中堅印刷所が入っていて、いったい何階層の下請けなのかわからないことがある。
極端な例えでいえば、発注元がある広告代理店A社に仕事を発注した金額が1000万円だったとする。
A社はB社に500万円で外注に出す。
B社はC社に250万円で外注に出す。
C社はD社に125万円で外注に出す。
D社は最下層となるフリーランスのE氏に、60万円で外注する。
というような構造だ。
E氏にしてみれば、1件の仕事で60万円は大きい。
実際、うちの会社に回ってきた仕事の安さに驚くことは珍しくない。
大元の発注元は、TVコマーシャルも出している某社なのに、この金額?……と思ってしまう。
中間で中抜きされて、実際にかかった費用が、いかに安いか。
政府系、自治体系の仕事は、特に中間業者が多い。
それと、下請け業者は名前を出さないようにという取り決めがあったりする。なので、なにかを直接問い合わせる必要が生じると、自社の名前でなく、階層の上の方の社名を名乗って行政の担当者につないでもらう。
早い話、偽装だ(^_^)b
形式上はA社が仕事をしていることになっていて、D社に外注していることを行政側は知らない。
とはいえ、こうした下請け構造があるから、中小企業でも小の方の企業は、仕事にありつけるという皮肉な構造にもなっている。
階層が多いと、確認作業も複雑になる。校正という確認作業をしてもらうのに、階層を下から上に上げていって、返事が上から下にと降りてくるのに時間がかかる。その返事に数日かかったりもする。電話1本、メール1通で済むようなことが、何人もの手を介して伝言ゲームになっているのだ。
日本が、真にIT化できない理由のひとつがここにある。
テレワークが普及しないのも、技術と機器はあっても、社会構造的に使えない環境だからだ。
人間と仕事やり方が、アナログのまま。
政府が769億円で発注した仕事だが、末端の業者に直接依頼すれば、半分の費用でできる仕事だったかもしれない。末端の作業員は派遣社員のようなので、時給も安いのだろう。電通の社員が汗をかいているわけではない。
この問題は、日本の病理でもある。
ピラミッド構造がいろんなところに存在して、格差を生んでいる。
それが悲しい現実。