「朝食抜きは太る」を解明?

「朝食抜きは太る」という通説を、科学的に解明したというニュース記事。
面白いんだけど、ちょっと疑問もある。

「朝食抜きは太る」解明=体内時計狂いが原因-名古屋大:時事ドットコム

 「朝食を抜くと体重が増える」という定説のメカニズムを、名古屋大大学院の小田裕昭准教授の研究グループがラットの実験で裏付けた。朝食を抜くことで体内時計に狂いが生じるためという。論文は31日、米科学誌プロス・ワン電子版に掲載された。

ラットは起きている間、餌があれば断続的に食べ続ける習性がある。

小田准教授らは、56匹のラットを2グループに分け、一方には通常通り餌を与え、別の一方には起きた4時間後から餌を与えた。前者は朝8時に朝食を食べる人に、後者は朝食を抜き正午に最初の食事を取る人にそれぞれ見立てた。いずれにも14日間、高脂肪の餌を同じ量与えた。

実験の結果、後者のグループのラットは通常より平均約7~8%体重が増加。肝臓を遺伝子レベルで比べたところ、後者は体内時計をつかさどる時計遺伝子の働きに約4時間の遅れが生じ、体温の高い時間が短くなっていた。体内時計が狂い、活動時間が少なくなることでエネルギー消費が減り、体重が増えたと考えられるという。

小田准教授は「朝食欠食で太ることがラットで見えた。人間にも応用できる研究だ」と話している。(2018/11/01-03:02)

短い記事なので、全文引用させてもらった。

元の発表された論文は以下。
Delayed first active-phase meal, a breakfast-skipping model, led to increased body weight and shifted the circadian oscillation of the hepatic clock and lipid metabolism-related genes in rats fed a high-fat diet

論文冒頭の「要旨」より。

体内時計は、メタボリックシンドロームや心血管疾患などの人間の健康と密接に関連しています。我々の以前の研究は、不規則な摂食は、肝臓の体内時計の中断を伴う異常な脂質代謝を誘発したことを明らかにした。

我々は、朝食をスキップすると、時計や脂質代謝関連遺伝子の肝臓の概日リズムを変化させることによって、脂肪分泌などの脂質異常を誘発すると仮説を立てた。ここでは、朝食をスキップするモデルとして、最初の活動期食事を遅延させる(Delayed First Active-phase Meal: DFAM)プロトコルを行いました。

簡単に述べると、ラットには、対照群では除脂肪時間(ZT)12〜24時、DFAM群では16〜4時の間に高脂肪食を与えた。DFAM(朝食抜き)群は、全食物摂取量の変化なしに、体重増加および腹腔脂肪組織重量の増加を示した。

肝臓の時計およびde novoの概日リズム脂肪酸合成遺伝子はDFAM(朝食抜き)のために2〜4時間遅延した。肝臓時計、胆汁酸、および非エステル化脂肪酸(NEFA)のシンクロナイザーである血清インスリンのピークは、DFAM(朝食抜き)のために4~6時間遅延した。

さらに、DFAM(朝食抜き)は体温の急上昇を4時間遅らせ、エネルギー消費の減少のために体重増加および脂肪組織重量の増加に寄与した可能性がある。

これらのデータは、朝食スキッピングが肝臓の遺伝子発現の変化した概日リズムに関連する異常な脂質代謝を誘発する可能性のある分子メカニズムを示した。

この結果はまた、血清NEFA、胆汁酸、およびインスリンの遅延ピークが、肝臓時計および脂質代謝関連遺伝子の概日リズムを同調させることを示唆した。

原文は改行なしで書かれているが、読みにくいので適宜改行を入れた。
文中「DFAM」は、Delayed First Active-phase Mealの略で、直訳すると「最初の活動期食事を遅延させる」の意だが「朝食抜き」と意訳した。

以下、結論部分の冒頭より。

朝食スキッピングは、ヒトにおいて、より高い肥満度指数、メタボリック症候群、及びII型糖尿病の肥満のリスクを増加させる。

しかし、朝食のスキッピングが代謝障害を誘発する方法の根底にある分子メカニズムを特定することは困難である。

今回の研究では、朝食のスキッピングが肝臓の概日時計を変更することによって脂質代謝異常を誘発するとの仮説を立てた。

朝食のスキップが代謝に与える影響の根底にある分子メカニズムを調べるために、我々は朝食抜き(DFAM)プロトコールを開発した。

ラットは体重増加および腹腔脂肪組織重量の有意な増加を示し、朝食抜き(DFAM)を受けると脂肪組織総重量の増加傾向を示した。

ラットを使った実験なので、そのまま人間には当てはまらない部分もある。

実験では、通常のラットと朝食抜きラットも、1日に摂取する食事量は同じとなっている。食事量……つまり、カロリーが同じなのに、食べる時間を遅らせたラットは太った、というわけだ。
その原因として、朝食を抜くことで体内時計が遅れ、活動時間が減ったため、代謝するエネルギーが減り、余剰分のカロリーが脂肪として蓄積された……となっている。

ようするに、朝食を抜いたのに、1日の食べる量が同じじゃだめ……といってるわけね。
逆説的にいえば、朝食を抜くんだったら、1食分のカロリーは減らせばいいってこと。
成人男性の1日の摂取カロリーは、2000〜2500kcalほどが適切だとされている。
私はこれでは多いと思うのだが、いちおうこれを目安としよう。

中間を取って2250kcalを1日の摂取カロリーとすると、3で割れば750kcal。1食あたり750kcalなので、朝食を抜いたら1500kcal以下に抑える。

これなら太らないし、むしろ痩せる。
というのも、いま私がやっている減量方法が、これだからだ(^_^)。
私はもともと1日の摂取カロリーは少なかったのだが、それでも体重が増えてしまったから、現在は1日の摂取カロリーを1200kcal以下になるようにしている。

参照↓
減量しなくちゃ
減量しなくちゃ(2)
減量しなくちゃ(3)

また、ラットは食って遊んで寝てしかしないが、人間は仕事がある。
朝食を抜いたとしても、朝から働かなきゃいけないので、活動しないわけではない。体内時計は狂うかもしれないが、仕事はやる。空腹の方が頭はよく働くという説もあり、朝食抜きがデメリットだけというわけでもなさそう。

朝食を抜くと、体内時計が狂い、代謝が落ちるというのはわかった。
ただし、「太る」のは1食を抜いても、1日の摂取カロリーが変わらない場合だということ。
ここは明確にした方がいいと思う。

次の段階として、1食分を抜いたラットは、1日の摂取カロリーも1食分減らして(3分の2)、太るかどうかの実験をしてほしい。
それが、人にとってより現実的な指標になると思う。

 

諌山 裕

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