3月23日の、日本 vs マリのテストマッチについての記事で、いささか首をかしげる記事があった。
信用するに足るだけの根拠が示されていない内容だからだ。
ハリルJ 格下に苦戦の意外な要因「監督の声が聞こえすぎた」-スポニチアネックス
出場機会のなかったある選手は「監督の声が聞こえすぎたこともあって、一発で裏、裏という攻撃になってしまったと思う」と指摘した。
別の主力選手は「“蹴れ、蹴れ”という指示が出ていたけど、全部は無理。ボランチが最終ラインに入ってセンターバックと3人でボールを回して、サイドバックに高い位置を取らせた方がうまくいくような気がするけど、ボランチが下がることは監督が嫌う。ちょっと、どうしたらいいのかな、というのはある」と困惑する。
第1の疑問点は、発言したとされる選手の名前を書いていないことだ。
「出場機会のなかったある選手」
「別の主力選手」
と、誰であるかを特定していない。
試合のあとに記者が選手に取材できる機会は限られている。
ミックスゾーンであれば、多くの記者がいるので、そこでの発言であれば他のメディアにも同様の発言が書かれるだろう。
しかし、スポニチ以外にこの発言は出ていない。
そもそも公式の取材であれば、名前を隠す必要がない。
名前を出せないということは、個人的な非公式な取材というか、選手が名前を出さないことを条件に答えたということになる。
もし、そうなのだとしたら、チーム内の情報を外部に漏洩しているわけで、背信行為だといえる。そのようなことに荷担している選手がいるとしたら、これは極めて深刻な問題だ。
これはチームの規律を逸脱した行為だといえないか?
「出場機会のなかったある選手」というと……
川島 永嗣
東口 順昭
森重 真人
車屋 紳太郎
植田 直通
遠藤 航
柴崎 岳
原口 元気
杉本 健勇
……と、この9人が容疑者ということになる。
ハリル監督は、フランス語でしゃべっているから、上記の発言をした選手は、フランス語が理解できているということになる。
まぁ、「蹴れ!」(Botter!)という単語くらいは覚えているかもしれないが、その前後には、どこに蹴るか、どのように蹴るかの指示が付属していると思われるので、フランス語を聞き取れないと、誤解していることになる。
フランス語を話せるのは、川島選手だけ。
では、川島選手がこの発言をしたのかというと、これまでハリル監督の信頼を得てきた彼が、背信行為を働くとは思えない。
この記事はYahoo!ニュースに転載されていて、そこのコメント欄では監督解任論が大勢を占めていた。つまり、この記事を真に受けているということだ。
だが、待て。
この記事が真正のものだとしたら、名前を伏せてチーム内情報を漏らした選手こそが責められるべきである。言い方を変えれば「密告」だともいえる。
そのような選手がチーム内にいること自体が問題だ。
私は、この記事の信憑性を疑っている。
ハリル監督をディスるための記事のように思える。
裏付けのない記事は、安易に信用してはいけない。
【追記】 2018年3月26日13時49分
前述の記事中の選手発言について、別のメディアでの記述を見つけた。
「蹴れ、蹴れ、蹴れ」 ハリル監督の指示に選手も困惑!? マリ戦の舞台裏とは? -Football ZONE WEB.-
仮想セネガルと位置づけた一戦で、選手も困惑する状況が生まれていたようだ。大島に代わって投入された山口は「翔哉のサイドにずっと蹴れ、蹴れ、蹴れと言っていた」とハリルホジッチ監督の指示について言及。ピッチ内で戦う選手たちは別の思いもあったという。
「そんなに全部蹴れないし、やっぱりタイミングを見ながらやっていかないといけない。こっちは右サイドで時間を作りながらやっていこうという話をしていた。そのなかで蹴れ、蹴れという指示が飛んでいた。そことの食い違いはあると思う」
0-1と劣勢で迎えた後半の早い時間帯からハリルホジッチ監督は選手たちに「蹴れ」との指示を飛ばしていたという。山口も「昨日は後半の早い段階でずっと言っていた」と振り返った一方、「蹴っちゃうとサコ(大迫勇也)頼りになってしまう。毎回毎回サコも勝てるわけじゃない。そうなると厳しくなってくると思う」と懸念。前線に蹴るスタイルによって攻撃が単調となり、FW大迫勇也(ケルン)が競り勝つ前提のサッカーになると主張した。
こちらの記事では、山口選手の発言として書いている。つまり、「別の主力選手」は、山口だったというわけだ。それにしても、スポニチはなぜ名前を伏せたのか?
しかし、発言内容のニュアンスは、両方の記事を比べると、だいぶ違う。書き方・要約の問題というより、どっちが実際に発言した内容なのか?
記者の解釈の違いか?
ハリル監督がベンチから叫んで指示を飛ばしているときは、通訳は介してないよね? 大声と身ぶり手ぶりだけだと思う。山口選手はフランス語は話せなかったと思うが、監督の言葉の指示が、どこまで通じているのかが疑問だ。
ハリル監督の大仰なゼスチャーを、「蹴れ! 蹴れ!」と勝手に解釈しているのでは?……と思ってしまう。
これは憶測だが、監督が「蹴れ!」とゲキを飛ばしているのは、「前に運べ!」ということではないのか? そう思う理由は、バックラインでボールを回していることが度々あり、「なぜ前に出さない?」と、私もイラついてしまったからだ。監督が「蹴れ!」といいたくなる気持ちもわかる。
また、「蹴っちゃうとサコ(大迫勇也)頼りになってしまう。毎回毎回サコも勝てるわけじゃない」というのは、大迫は頼りにならないといっているわけだよね?
毎回勝てるわけじゃないから、その回数を多くした方が、成功する回数も増えるのではないか?
なぜ、失敗することを先に心配するんだろう?
成功率を上げるために、精度の高いパスを出せばいいのだし、それが求められているのではないか?
どうして、こうネガティブな発想しかしないのだろう?
そこが日本代表の大きな弱点でもあるんだ。
選手が、不平、不満、不安を吐露するのはいいけど、それはチーム内部で解決すべき問題だと思う。一言でいえば「愚痴」だが、愚痴は外部のメディアに対していっちゃいけないよ。メディアを介すると、バイアスがかかって歪曲して、他の選手や監督に伝わる。それはチーム批判や監督批判として受け取られてしまう。
そうなってしまうと、発言した選手の立場は危うくなるよ。
監督に文句があるのなら、直接いった方がいい。