アニメーターが低賃金で食えなかった……という話は度々書いているが、漫画家も小説家も一握りのベストセラー作家を除いて、似たり寄ったりである。
 そんな記事。

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 前出の江上IKKI編集長によれば、原稿1枚当たり1万円台がほとんどで、2万円以上もらえるのはほんの一握りのベテランだけ。中村さんの一件は氷山の一角で、経営難に四苦八苦する漫画家は多い。角川書店の井上社長も、「従来の週刊漫画誌のような、アシスタントを多用し量産するのが前提の体制だと、漫画家の生活は厳しくなる」と語る。

 新たな漫画マーケットを切り開こうと試行錯誤する出版社。その最大のカギが良質な作品であることは、すべての関係者の一致するところだ。であるならば、漫画の制作現場をジワジワ覆い尽くすワーキングプア問題の解決に着手しないかぎり、真の漫画活性化は進まない。

 記事の結論だけ引用したが、漫画界だけのことではなくて、アニメ界もそうだし、小説界も同様だ。
 マンガやアニメ(その原作にもなる小説を含めて)は「クールジャパン」として、コンテンツ産業の先鋒のような扱いを受けるが、現場で働く人たちにしてみれば、クールではなく「コールド(お寒い)」な状況だ。
 以下のような記事もあった。

23.3%–年収200万円以下の給与所得者の割合(2008年)《気になる数字》(東洋経済オンライン) – Yahoo!ニュース

 年間給与額の分布を見ると、300万円以下の層が1820万人で全体の4割を占める。中でも200万円以下の層の増加が著しく、この10年間、景気動向にかかわらずほぼ一貫して増え続け、小幅増で推移する給与所得者総数に占めるウエートも上昇。2008年は23.3%となり、男性でも10%を超えた。

 アニメーターをしていたときの私が、年収200万円以下に入っていた。新人漫画家や新人小説家も同様である。
 漫画や小説は新人賞があり、それで賞を取ることがプロへの最短コースではあるが、過去、多くの人が受賞しているものの、プロとして書き続けている人は少ない。
 現在、小説の新人賞が約20、漫画の新人賞が約40……、該当作なしという場合もあるが、たいていは各新人賞で2~3人が賞(大賞~佳作まで含めて)を与えられる。つまり、年間120~180人くらいがプロとしてデビューしている計算だ。
 それだけの数の作家が活躍できる「場」は、実際問題として限られている。雑誌で数ヶ月に1本の作品を発表できるかもしれないが、それでは専業作家として「食えない」。小説の原稿料は漫画よりももっと安いのだ。収入源として会社員などをしながら、作品を書くことができれば、プロの作家としてやっていけるかもしれないが、なかなか難しいのが二足のわらじだ。

 スポーツ選手でもプロになるのは、ほんの一握りの人たちだけ。まぁ、プロといってもピンキリなのは同じだが。
 それでも、野球やサッカーの方が「スポーツ産業」として成立しているし、環境も比較的整っている。ワーキングプアの数は、アニメ界・漫画界・小説界より、ずっと少ないと思う。
 コンテンツ産業として、クリエーターを育て、普通に食えるようにしないと、人が集まらなくなるし、優れた作品も生まれにくくなる。
 出版というのは、印刷や流通にかなりの費用がかかってしまう。旧来のビジネスモデルでは通用しない時代になった。デジタル時代に即したビジネスモデルを作り上げないと、作家も出版社も生き残れなくなってしまう。
 そのへんのことは、テレビ局、音楽業界、映画界、SNSなどのサービスなどに共通した問題である。

諌山 裕

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