仕事の打ち合わせに行った帰り。
妻と連絡が取れたので、渋谷で落ち合った。ご飯を食べたいというので、妻の案内で渋谷の街中へ。妻の勤める会社は渋谷にあるため、道には詳しい。
地下道を通って渋谷交差点の下をくぐり、TSUTAYAの脇に出て、渋谷センター街へと入る。
クリスマスの雑踏の中をしばらく歩いて、とある中華料理のお店へ。
「ここ、安いの」と妻。
たしかに安そうな店だった。表に出ている看板や青ざめた料理のサンプル写真が、安っぽい。サンプルはけっして美味そうではない。だが、妻が食べたいというものでかまわなかった。
安くてもそれ相応の味と量があればいい。悲しいかな、貧乏人の性(さが)である(笑)。
貧相なメニュー写真を見て、680円のラーメン+餃子+チャーハン定食にする。
店に入って、入口で食券を買う。狭くて細長い店内だ。店員の話す言葉が、妙なイントネーションで、なにをいっているのか理解するのに時間がかかった。どうやら中国人かアジア系の外国人のようだ。相手のいったことを頭の中で反芻して、やっと発した言葉が日本語とマッチした。この間、約2秒。
しばらくして、料理が出された。
――と、私の瞳孔は150%広がった。
(おいおい、なんや、コレ……)
口には出さなかったが、私は呆れた。
器は普通のラーメンどんぶりだが、中身が少ない。たしか、外にあったメニュー写真には、メンマもチャーシューも載っていた。しかし、出されたラーメンには、メンマとチャーシューは影も形もなく、モヤシと数粒のコーンが入っているだけだった。
ともあれ、食べる。
スープの中に沈んで、全容が見えなかった麺は、これまた量が少なかった。平均的なラーメンの半分か、それ以下しかない。半ラーメンとは書いてなかったはずだが……。
スープの味は、まぁまぁだ。とはいえ、これではラーメンではなく、ラーメンスープに少量の麺が入っているだけだ。主役が麺ではなく、スープなのだ。
チャーハンは、作ったばかりだというのに温度が低かった。アツアツではないのだ。作り置きしていたものを、再加熱したような感じだ。塩気も足りなかった。
餃子はやけにニンニクがきつく、しかもパリパリ感がなく、しけっぽかった。
妻はホイコーロを頼んでいた。少し食べてみたが、これはまぁ合格点をあげてもいい味だった。しかし、この程度ならレトルトのソースでちょちょいとできる程度のものである。
なにはともあれ、空腹感だけは満たされた。ただし、満足感はなかった。
店を出て、あらためてメニュー写真を見た。
やはり、サンプルにはメンマとチャーシューが載っていた。
「これ、インチキじゃん」
その写真を見て、中に入る客は、これで680円なら安い、と思うだろう。私もそう思った。だが、実際のメニューは違っていた。
サンプルよりも、多少量が少ないことは、よくあることだ。その点は割り引いて見るものである。しかし、まったく入っていないというのは、詐欺である。
店の名前こそ出さないが、こういう良心的ではない店は、もう二度と行かない。
小さな嘘は、大きな嘘になり、誠実でない姿勢は客を馬鹿にしている。客の足下を見るような店は、最低である。
誰も文句をいわないために、こういう経営でも成り立っているのだろう。
料理に対するこだわりとか、プライドなど捨てて、客を騙してでも商売をする……それが生き延びる手段なのか?
逞しさとふてぶてしさかもしれないが、虚しくも哀れな生き方ではないか。