軍事問題では、日本の平和主義コメンテーターは、お花畑な発言をする。
 以下のツイートの番組を、たまたま見ていたが、吉永氏の発言がピント外れで苦笑してしまった。危機意識が足りないというか、話しあえば理解し合えるという楽観論は、世界では通用しない。

 世界中の国で仲良く平等で平和に……というのは理想だが、それができない格差の現実があり、最終手段として武力行使に走る。ロシアや中国や北朝鮮の独裁国家の横暴さはあるが、彼らには彼らなりの生存戦略があり、武力は一面的には有効だと歴史が証明している。歴史は勝者の論理が正義になってきたからだ。

 日本人同士でも理解し合えない、尊重し合えない場合が多々あるのに、国も言語も違う相手とはさらに難しくなる……というのが現実だよ。
 プーチンの主張はめちゃくちゃだが、それが彼にとっての正義であり、自分が生き残る道だと信じていることは間違いない。
 「自分以外、みんな敵」と思っている相手に対して、話し合いで解決することは、ほぼ絶望的。こちらの善意を、相手は悪意の罠だと思うだろうし、妥協することは負けを意味する。自分が勝利することが絶対条件だから、どんなに卑怯なことも平気でする。
 かつて、アメリカに戦争を仕掛けた日本がそうだったではないか。

 国同士が対立し、話し合いが成立しないのは、対等ではないから、格差があるからでもある。
 格差には、経済的な格差、生活水準の格差、技術力の格差、軍事力の格差などがある。いわゆるパワーバランスだが、力の差があると話し合いでも対等にはなれないのが現実。日本がアメリカの言いなりになっているのは、対等ではないという自覚があるからだろう。日本は同盟国として、アメリカの子分になる道を選んだにすぎない。「長いものには巻かれろ」というわけだ。その生き方を選んだ日本人には、軍事力で対抗する道を選んだ国の考えかたというのは理解できないかもしれない。

 「歴史の教訓に学んで、戦争はしてはいけない」といわれる。
 しかし、別の面から歴史の教訓に学ぶなら、戦争に勝てれば得られるメリットは大きい……ということもいえる。最初から負けると思って戦争を始める国はいないわけで、勝ったときの利益を逆算して戦争を始める。いわば、大バクチだ。

 なんだかんだいっても、最終的な決着の付け方は、軍事力という暴力で相手をねじ伏せることになる。それが人類の辿ってきた歴史でもある。

 前にも書いたが、台湾の併合を目指す中国は、遅かれ早かれ台湾に軍事侵攻すると思う。併合は話し合いでは解決しないからだ。習近平(69歳)は自分が生きているうちに目的を達したいと思っているだろうから、残された時間は多くはない。トップの座に、いつまで座っていられるかにもよる。
 国家主席の任期は5年だが、第三期に選出されたものの、第四期、第五期と続けられるかどうか。仮に、あと二期の10年とすれば、10年以内に台湾を軍事侵攻で併合すると考えた方がよさそう。

 そうなれば、日本も戦争に巻きこまれる。
 そのシミュレーションの記事も出ていた。

日本は軍用機112機、艦船26隻を損失――。台湾有事ウォーゲーム「自衛隊大損害シナリオ」は現実となるのか!? – 政治・国際 – ニュース|週プレNEWS

その中身を詳しく見ると、侵攻の始まりは中国軍によるすさまじい数のミサイル攻撃で、地上と港湾にいる台湾空・海軍の戦力はほぼ全滅してしまう。続いて中国海軍が台湾全島を包囲し、米軍の接近を阻止しつつ、軍民両方の揚陸用艦船が台湾海峡を渡り、上陸作戦が開始される。

しかし、26年になっても中国軍の揚陸能力は十分ではなく、台湾に上陸できる兵力は初日に8000人、3日後でも1万6000人にとどまる。台湾陸軍の反攻に遭って飛行場や港湾の奪取に失敗し、兵站(へいたん)が続かない。

その後、米軍と自衛隊が参戦して防衛作戦を2~4週間続行し、侵攻は失敗に終わる――そんな結果が主要シナリオとして導き出された。

台湾侵攻での各軍の損害規模予想

 この予想は、かなりうまくいった場合だろうと思う。ウクライナ戦争がそうであるように、短期決戦を想定していたのに長引くことは往々にしてある。4週間で終わらずに、数年続くとどうなるか? 損害はもっと多くなり、自衛隊はズタズタになってしまいそうだ。

 日本国内の米軍基地にミサイルが飛んでくれば、周辺を誤爆することもあるだろう。精密誘導兵器といいつつも、誤爆は起こる。そのとき、自衛隊の迎撃ミサイルが役に立つかどうか。
 NHKのドキュメンタリー番組で、自衛隊がアメリカで迎撃ミサイルの実弾演習するのを取材していたが、1発1億円のミサイルを、うやうやしく撃っているのが痛々しかった。実戦で躊躇なく撃てるのかどうか、心配になってしまう。

 ともあれ、いずれ「有事」は起きると思っていた方がいい。
 問題は「いつ」なのかということ。
 そのとき、迎撃手段がなければ、やられっぱなしになる。それでも「話し合いを」といえるのかどうか。

諌山 裕

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