アフガニスタンは混迷を極めているようだ。
もとより政情不安な国ではあったが、武装勢力のタリバンがあっさりと首都を占領してしまった。
アメリカ軍および外国人が出国を急いでいるが、現地の人々の多くは置き去りだという。
カブール空港で大混乱 タリバンを逃れようと飛行機にしがみつく人たちも – BBCニュース
アフガニスタン反政府勢力タリバンが制圧した首都カブールから大使館員などを優先的に退避させるため米軍は16日、カブール国際空港を管理下に置いた。タリバンを逃れようと必死のアフガニスタン市民が飛行機によじ登ろうとするなど、大混乱が続いている。
(中略)
アフガニスタンのメディアが入手した映像には、滑走を始める飛行機の脇にしがみつく人たちの姿が映っている。
別のビデオでは、すでに離陸した飛行機から複数の男性が落ちる様子が捉えられているように見える。
脱出しようとしている人権活動家のラクシャンダ・ジライ氏は、「(アメリカが)空港を管理して、条件を勝手に決めてアフガニスタン人に押し付けるとは何事か」とロイター通信に話した。
別のビデオはリンクされていなかったが、あえてリンクしておく。
ショッキングな動画なので、見るのは要注意。
無茶苦茶というか悲惨だ。
輸送機(たぶんC-17)は、周りに群衆がいるにもかかわらず離陸していく。
アメリカ軍のやり方は強引だし、アフガニスタン人の人命を尊重していないように見える。
周りにいるのがアメリカ人だったら、こんなことはしないはず。
しがみついた人たちは、それで行けると思ったのだろうか?
列車にしがみつくのとはわけが違う。
離陸するのに時速200〜300kmほどのスピードが出るし、C-17の巡航速度は833km/h、高度8,530mに達する。高度が上がれば酸欠と寒さで生きてはいられない。
ときどき旅客機の着陸ギアから侵入して密航する事件が起きるが、与圧されない部分だから窒息し凍死する。
これは現代の、ほんの数日前に起こっている現実。
人権にうるさいアメリカではあるが、こんなことをしていたことが明るみになれば、批判は免れないのではないか?
アメリカ人の立場からすれば、
「人権(人命)は尊重するが、アメリカ人の安全を確保できる場合に限る」
ということなんだろうね。
これはアメリカに限ったことではなくて、日本でも他の国でも基本的には同様だろう。
新型コロナが中国で流行りだした頃、現地の日本人および関係者を帰国させるのに、日本国籍を有する人を優先したからね。
であるにしても、しがみついている人が振り落とされても飛ぶというのは、さすがに残酷だ。
政権を奪取したタリバンが、まともな国家運営ができるとも思えない。
アメリカ軍が完全撤退してしまったら、ロシアや中国が積極的に介入しそうだ。
根底にあるのは貧困だろう。
自由、平等、平和という理想論では、空腹は満たされない。
タリバンの勢力が拡大したのは、若者の失業者が増え、収入がなくなったことでリクルートされたという。ということは、タリバンは多少なりとも兵士に報酬を払っていたことになる。
軍事政権の辿る道は、過去の事例からも明らかで、ろくな末路にはならない。
暴力による支配はやがて行き詰まるからだ。
日本の平和教育は、太平洋戦争を教訓とするが、若い世代にとっては大昔の話。
現在進行形の紛争や戦争を知り、考えることも大事だと思う。