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エイリアン宛の通信、その星でいいのか?

太陽系から約12光年離れた太陽系外惑星に向けて、いるかもしれないエイリアン宛の通信が送られた。
試みとしては面白いのだが、なぜその星なのか?……という疑問。
ターゲットを間違っていないか?

エイリアンと会話するために、特別な「宇宙語」は本当に必要なのか?|WIRED.jp

ノルウェーのトロムソにあるレーダー施設のアンテナが2018年5月、系外惑星「GJ237b」に向けられた。この惑星は地球から12光年先にあり、居住可能と目されている。

このレーダー施設からは、3日間にわたって“メッセージ”が送られた。この惑星にいるかもしれない何か、あるいは「誰か」が受け取ることを期待して送られたのは、いくつかの短い歌とコンテンツ解読のための手引きである。

太陽系外からの宇宙人のメッセージを受信する探査としては、SETIが有名だが、SETIは受信に専念するパッシブ探査だった。こちらから信号を発信するアクティブ探査は、リスクもあるとしてあまり積極的には行われてこなかった。

そもそも論として、数光年〜数十光年先から発せられた人工的な電波を、地球で受信できるのかどうか? その逆も同様。
地球からは放送電波などが四六時中発信されているが、それらは無指向性であり、出力も小さいので、大部分は宇宙に漏れることなく減衰してしまう。大気圏上層にある電離層で波長の長い電波は反射されて、地上に戻ってくる。電離層を突き抜けるのは超短波帯(30〜300MHz)以上だが、FM放送やテレビ放送の電波がここに含まれる。

スカイツリーから発信されるテレビ電波の空中線電力は、7〜10KWだという。
無指向性で、この程度の出力では、隣の恒星まで届かない。アルファケンタウリに隣人がいたとしても、NHKの朝ドラを見ることはできないので、受信料の徴収もできない(^^)。

太陽系を離脱しつつある探査機のボイジャーとの通信には、直径70m級のパラボラアンテナが使われているそうだが、その最大送信出力はXバンド(8〜12GHz)で約20KW、Sバンド(2〜4GHz)で約400KWとなっている。

波長が短くなる(周波数が高くなる)と、直進性は高まるが障害物に遮られやすくなるため、長距離通信には適さない。宇宙空間はなにもないようで、じつのところ塵やガスなどがあり、光年単位の距離では電波を減衰させる。

さて、冒頭の記事の系外惑星「GJ237b」向けのメッセージの送信だが、送信出力がどれだけだったのか、関連する記事をいろいろと見たが、どこにも書かれていない。
これ、重要な点だ。
送信出力が小さければ12光年先になんて届きゃしないし、届かないメッセージに返事なんて来るはずもない。

いろいろ調べて、ようやくそれらしき記述を見つけた。

EISCATTromsøサイト– EISCAT科学協会

EISCAT-UHFレーダーは930 MHz帯域で動作し、トランスミッタのピーク電力は2.0MW、デューティサイクルは12.5%、パルス長は1 µs〜10 msで、周波数および位相変調機能があります。アンテナは、送信および受信に使用される32メートルの機械的に完全に操縦可能なパラボラディッシュです。

EISCAT-VHFレーダーは、224 MHz帯域で動作し、送信機のピーク電力は3MW、デューティサイクルは12.5%、周波数と位相変調機能を備えたパルス長は1 µs – 2 msです。

Sonar​ Calling GJ273bのサイトによると、パラボラアンテナがイメージとして掲げられていた。ということは、使われたのは「UHFレーダー、930 MHz帯、送信機のピーク電力は2MW(メガワット)」の方らしい。これはスペックとしての性能なので、2MWで送信したのかどうかは定かではない。記事を書くなら、そこまで押さえて欲しいところ。

と、疑問のひとつは、とりあえず解消。

次の疑問は、なぜこの「GJ237b」なのかということ。
母星は赤色矮星ということで暗くて小さな恒星だ。惑星がハビタブルゾーンにあれば、生命の存在の可能性はあるものの、それが知的生命体にまで進化するかどうかは別問題。

赤色矮星は、活発なフレア活動を示す傾向があるといい、小さくても荒ぶる太陽ということになる。恒星からの放射線が多く降り注ぐ環境は、生命の進化には障害になりそうだ。また、光が赤寄りのスペクトルとなるため、地球型の光合成を行う植物には不向きでもある。

生物は環境に合わせて進化するから、赤色矮星のもとで進化する生命は、地球型とはまったく異なるだろう。もし、それが知的生命体にまで進化するとしたら、人型にはなりえない。
まったく異質な知的生命体同士で、意思疎通は可能なのだろうか?

物理法則や数学は宇宙共通というのだが、その表現方法は違うだろう。記述方法として2進法を使うとも限らない。異星人の言語は、「匂い」かもしれない(^^)。
逆に、地球でなにがしかの信号を受信したとして、それを解読できるだろうか?
いまだそれらしき信号を受信したことがないから、なんともいえない。

地球でも四六時中GJ237bにアンテナを向けて耳を澄ませているわけではないので、向こうにしても同じだろう。たった数回の送信では、相手がいたとしても聞き逃してしまう。無理を承知でいえば、365日毎日、常時送信し続けていないと、届くものも届かないと思う。

生命そのものは、赤色矮星でも存在可能だ。
しかし、人類並みかそれ以上の知性を有するエイリアンとなると、やはり主系列星の恒星の方が適していると思う。人類がこの太陽の下で誕生したのは、それなりの理由があるからだ。

エイリアンからの返信を期待するのなら、赤色矮星はないと思うよ(^_^)b

諌山 裕

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