「老猫「シマ」の残された日々」
「追記:photo~今日の老猫「シマ」」
……の続き。
とうとう……
その日が来てしまった。
老猫の「シマ」が死んだ………
昨年から、何度も「もうダメかも」という危険な状態になっていたが、なんとか乗り越えて年は越せた。
しかし、遅かれ早かれ、「その日」が来ることは明白だった。
それが「いつか」ということ。
その日が1日でも先であるように願っていた。
それで3ヶ月持ちこたえた。
この数週間は、いつ逝ってもおかしくない状況だった。
毎度病院に連れて行くのは大変なので、自宅で点滴(補液)をしていた。脱水症状になってしまうのを補うためだった。補液をすると、少し元気が戻っていた。
シマはマグロの刺身が大好きだった。
ここ数日は、毎日刺身を買って帰った。
数日前から、立つこともできなくなって、寝たきりだった。
それでも、刺身を鼻先に出すと、ガツガツと食べた。消化は満足にできないだろうに、好きなものを食べたいという欲求だけはあったようだ。
シマの死期が近づいてきてからは、朝、出勤するときに、
「帰るまで生きていろよ」といって出かけた。
できることなら、ずっとそばにいてあげたかったが、そういうわけにもいかない。会社の上司にしてみれば「たかが猫」である。前に、クリが危篤になったとき、早退したいと言ったら、馬鹿にされた。他人にとっては「たかが猫」でしかない。
これが人間の家族だったら、同情もしてくれるだろうが、猫は猫でしかない。
今朝は、虫の息で昏睡状態だった。
もうだめだ。もう限界だ。
それはわかっていた。
それでも……
「帰るまで生きてろよ」
といって、重い足を会社に向けた。
最後は看取ってあげたかった。
ひとりで逝かせたくなかった。
帰宅したら、死んでいた……なんて最悪のシナリオだ。
死ぬことは覚悟していたが、ひとりで逝ってしまうなんて、寂しすぎる。
しかし、願いは叶わなかった。
シマは私が帰るまで、待っていてくれなかった。
なんてこった!!!!
もしかしたら、シマは私がその場に居合わせることで悲しませたくなかったから、ひとりで逝ってしまったのか?
勝手な思い込みだが、そう思うことで自分を納得させる。
夕べは一緒に寝た。
いつも一緒に寝ていたのだが、夕べが最後になった。
もう、シマと一緒に寝ることはなくなる……
その実感が、まだ……ない。
心に空いた空白が埋まらない。
もう何度も猫たちを見送ってきたが、旅立っていくたびに、私の魂の一部が削り取られていくような気がする。
また、穴が空いた。
それは埋まらない穴だ。
この穴がこれからも増えていって、いずれボロボロになる。
猫たちは私たち夫婦にとっては、我が子同然。
なくてはならない心の一部だ。
それを失うのは辛い。
とはいえ、出会いがあれば別れがある。始まりがあれば終わりがある。
私はうちの猫たちの旅立ちを、すべて見届けなくてはならない。その覚悟がなければ、猫と一緒に生きていくことはできない。
それは私の責任であり、義務だと思っている。
シマと過ごした18年は……
楽しかったよ。
小さな子猫の頃に、妻の友達からもらった。洋猫のヒマラヤンの血が入っているため、パッと見はアメショのシルバータビーのように見える。
子猫の頃から体が丈夫ではなくて、ひ弱だった。
長生きしないかも……と思っていたが、なんと18年も長生きした。
私に常に張り付きたがる奴で、いつも膝の上に乗っていた。寝るときは、一緒に布団に入って寝た。
それが生活の一部だった。
それが今日からなくなってしまう。
悲しいし寂しいが、今は虚脱感の方が大きい。
ため息ばかりが出てくる。
たぶん、何日か経つほどに、失ったものの大きさが堪えてくるのだと思う。
まだ元気だった頃のシマの写真を探し出した。
4年前(現在年からは16年前)の写真だ。
この頃はふっくらとしていたが、ここ数ヶ月はガリガリに痩せて、体重は2キロくらいになっていた。
頑張ったと思う。
よく生きてくれたと思う。
じつは、明日は私の誕生日だ。
「オレの誕生日まで死ぬな」ともいっていたのだが、ギリギリの前日まで頑張ってくれた。
ありがとう……
ありがとう、シマ。
もう、おまえの甘えた声を聞けないのは寂しいけど……
ありがとう。
シマと出会えて、私も幸せだったよ。
ありがとう。
ほんとうに、ありがとう……
輪廻転生があるとか、天国があるとか、そんなことは信じないんだけど、また、出会えたらいいね。
というか、もう一度、会いたいよ!
くそっ!
涙が出てきやがった。
覚悟はしていたつもりなのに、やっぱり「その日」が来てしまうのは辛い。
シマの亡骸は、リビングの座布団の上に横たえている。
それは私の座布団だ。シマは、そこにいつも座っていたのだ。最後の数日は、シマの布団にしていた。
亡骸は眠っているようだ。
つついたら、起きてきそうだ。
もう起きないし、死後硬直で硬くなっているのだが、ついつい手を伸ばして撫でてしまう。
起きてくるんじゃないかと、ありえない期待をして……
寂しい……
とても寂しいよ。
もう、シマがいないなんて……
ああ……
どうしよう……
しばらく、ため息が続きそうだ。
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初めまして! 文面を 読ませて頂き こみ上げるものが ありました。 ペットは 身内同然です。 今までの思い出を どうか胸にしまって 天国に 送り出してあげて下さい? 合掌