アマゾンで火災……というと、ショップのアマゾンかと思ってしまうが、南米のアマゾンの森林の話。
延々と燃え続けていて、かなりの森林が消失したようだ。
で、そのニュース記事なのだが……
燃え続ける「アマゾン」温暖化加速で世界的危機の恐れも(ABCテレビ) – Yahoo!ニュース
先日、軍を投入し消火活動に乗り出しました。まだ消火には至っていませんが、このままこの火災でアマゾンの熱帯森林が失われれば、二酸化炭素が増えるため「地球温暖化」が加速する恐れがあります。
(中略)
地球の酸素の20%を作り出し、二酸化炭素を吸収していることから“地球の肺”と言われる「アマゾン熱帯雨林」。
ええ〜と、カーボンニュートラルとかいう都合のいい屁理屈はどうなったのだろう?
例えば、植物のからだ(茎・葉・根など)は全て有機化合物(炭素原子を構造の基本骨格に持つ化合物)で出来ている。その植物が種から成長するとき、光合成により大気中の二酸化炭素の炭素原子を取り込んで有機化合物を作り、植物のからだを作る。そのため植物を燃やして二酸化炭素を発生させても、空気中に排出される二酸化炭素の中の炭素原子はもともと空気中に存在した炭素原子を植物が取り込んだものであるため、大気中の二酸化炭素総量の増減には影響を与えない。そのため、カーボンニュートラル(二酸化炭素=炭素循環量に対して中立である)と呼ばれる。
アマゾンの森林が燃えても、もともと大気中にあった二酸化炭素が空気中に戻るわけだから、二酸化炭素の増加にはならないはずだよね?
つまり、アマゾンが消失しても、温暖化とは関係ない。
カーボンニュートラルはそういう理屈じゃなかったっけ?
また、「地球の肺」というのは正しくない。
それについては以下の記事で解説されている。
アマゾンは「地球の肺」ではない。森林火災にどう向き合うべきか(田中淳夫) – 個人 – Yahoo!ニュース
ただ一つ気になるのは、「アマゾンは地球の肺」「森林は酸素供給場であり、二酸化炭素の吸収源」といった指摘だ。
森林の大切さを訴えるためによく使われる言説だが、これは科学的にはおかしい。なぜなら成熟した森林は、酸素を供給しないし、二酸化炭素も排出しないからだ。
(中略)
もっとも大きいのは菌類だ。いわゆるキノコやカビなどは、枯れた植物などを分解するが、その過程で呼吸して二酸化炭素を排出する。
地上に落ちた落葉や倒木なども熱帯ではあっと言う間に分解されるが、それは菌類の力だ。目に見えない菌糸が森林の土壌や樹木中に伸ばされており、菌が排出する二酸化炭素量は光合成で吸収する分に匹敵する。つまり二酸化炭素の増減はプラスマイナスゼロ。
だから森林を全体で見ると、酸素も二酸化炭素も出さない・吸収しないのだ。酸素を供給し二酸化炭素を吸収する森は、成長している森だ。面積を増やす、あるいは植物が太りバイオマスを増加させている森だけである。アマゾンは森林としては成熟している(面積を増やさず、バイオマスも上限まで蓄積している)から、おそらく二酸化炭素は吸収していないだろう。
冒頭の記事は科学的な解説をしているようで、じつは科学的に間違っている。こういういい加減な報道をするから、マスゴミと揶揄される。
前にも書いたが、カーボンニュートラルという考えかたは、単なるご都合主義だろう。それをいったら、地球上の酸素や炭素、それが結びついた二酸化炭素なども循環していて、元素の総量はほぼ変わらない。宇宙空間に若干逃げていく気体はあるが、量としてはわずかなので無視する。
かつて、地球に生命が発生したばかりの頃。
地球の大気は二酸化炭素を始め、有害なガスに満ちていた。そこに光合成で二酸化炭素を利用し酸素を排出する原初の植物が現れ、廃棄物として酸素をじゃんじゃん放出した。酸素は酸化反応を引き起こす「毒」として排出されていた。
それから酸素を利用する生命が出現して、生命は劇的に進化していった。
酸素の供給源は、じつは成熟した森林ではなく、コケ類だという説がある。コケは、4億年前に地球の酸素の30%を生成したという。
それに加えて、海中の植物プランクトンも酸素供給源だとされている。
つまり、森林は様々な生物の生息環境としての役割はあるが、酸素供給源としては重要ではないということだ。
温暖化対策の一環として、植林をする活動があったりするが、木が育つには年月がかかる。二酸化炭素を吸収させ、酸素を供給させるには、植林よりもコケを栽培した方が効果的かもしれない。コケは成長が早いし、適度な日陰で湿潤な環境さえ用意すれば、あまり手間もかからない。
温暖化対策は「コケ」で!
これまでの緑化運動が間違っていたとまではいわないが、あまり効果的ではなかった。
一般的には雑草扱いで駆除対象にされるコケだが、コケは地球を救うかもしれないよ。
View Comments
返信ありがとうごさいます。
私の理解が浅かったようです。私はアマゾンの森林が、二酸化炭素を吸収し蓄える機能を担っている前提で考えていたため、森林火災による機能低下で温暖化が促進してしまうとの考えに至りました。
しかし先生は、成熟したには森林は大気中の二酸化炭素を減らす能力がほぼ無いため、森林が焼失しても総量に影響無いと考えていらしたのですね。
参考になりました。ありがとうごさいます。
どういたしまして。
ちなみに、私は先生ではないです(^_^)b
ただの野良ブロガーです。
アマゾンの森林が焼失しても、大気中の二酸化炭素の総量に変化は無い。しかし、化石燃料を燃やして発生した二酸化炭素を吸収する担い手が減るため、結果として大気中の二酸化炭素濃度が高まる。
そこが先生の疑問点の始まりかと思います。
ノワールさん、マイナーなブログにコメントをどうもです。
アマゾンの森林の酸素と二酸化炭素の収支はプラマイゼロですから、化石燃料の燃焼で出てくる二酸化炭素を吸収はしていない……という話なんですよ。