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ハリルホジッチ前監督の記者会見を聞いて

昨日のハリルホジッチ前監督の記者会見を、WEB中継で聞いた。
90分に及ぶ長い会見だったが、通訳を介しているので、実質的には約半分の45分というところか。
全文の文字起こしは以下にある。

ハリルホジッチは何を語ったか?2018.4.27記者会見全文公開 | footballista

ロシアW杯開幕を2カ月後に控えた2018年4月9日、日本代表監督解任が突如発表されたヴァイッド・ハリルホジッチ氏。異例とも言える日本サッカー協会の決断に対しては賛否両論、議論の渦が巻き起こったが、当事者であるハリルホジッチ氏は何を想うのか。4月27日に日本記者クラブで開かれ1時間半に及んだ会見の全文を公開する。

通訳はこの日のために用意された人だったためか、最初のうちは通訳が口を開くタイミングが合わず、たびたび監督と通訳の間で確認し合う場面があり、流れが途切れていた。そのうち、だんだんと呼吸が合うようになり、通訳がうまく噛み合うようになった。

監督が話している時間よりも、通訳が話している時間の方が長い場面が多々あり、通訳の人が言葉を補足しているように見受けられた。監督はフランス語が母語ではないため、言葉足らずになることが多々あるといわれていたので、そこを通訳が日本語として文脈を整えていたと思われる。

フランス語を聞き取れるわけではないが、監督はやや吃音の癖があるようだ。察するに、語彙が乏しいために、ややぶっきらぼうなフランス語になっているのだと思う。

話としては、3年間の総括から語っていたが、そこはもっと端折ってもいい部分だと感じた。
多くの人が聞きたいのは、解任についての経緯やその背景だったからだ。
そのための会見だったはずだが、核心に触れたのは、全体の3分の1程度。

記者からの質問に答える場面で、ようやく聞きたいことが出てきた。
しかし、その質問に挙手する人が少ない。
君たちはなにしに来てるんだ?
しかも、その質問は漠然とした質問ばかりで、誰もが聞きたいと思っていることを聞く記者がいなかった。

解任の理由は、田嶋会長のいう「コミュニケーション不足」というのが、本当の理由を隠すための方便だというのは、多くの人が感じていることだ。
知りたいのは本当の一番の理由だ。
周辺から漏れてくる情報では、「スポンサーからの意向」という理由。
それについて、記者から質問が出ることはなかった。
ようするに、メディアもスポンサーに忖度しているということではないのか?
ズバリと切り込む記者がいなかったのが情けない。

予定調和の世界だったね。
波風立てることなく、会見を拝聴しました……という手打ち。
欧米の記者会見だったら、もっとエグいことをガンガン聞いていただろう。
ハリル批判を展開していたメディアや、何人かのサッカー評論家たちは、この場にいなかったのか? 直接、ハリルに聞ける機会なのだから、追求することはたくさんあっただろうに。本人を目の前にすると、なにもいえなくなってしまうのか?

ハリルの会見に対する、田嶋会長の反応が以下。

田嶋会長 ハリル会見に「それで彼の気が晴れるなら」/サッカー/デイリースポーツ online

 日本サッカー協会の田嶋幸三会長(60)は27日、渡欧する羽田空港でハリル会見を受けて発言した。「全く違うこともおっしゃっていたのもありますが、それを今さら言っても仕方ない。それで彼の気が晴れるならそれでいいと思います」と述べた。

(中略)

「選手たちは日本のサッカーのことを考えている。1人や2人が反乱しているというのは失礼」と訴えた。

「彼が頑張ってくれたことは評価しています。信頼がなくなっている。コミュニケーションが取れていない。それだけで(解任理由として)十分だと思います」と強調した。

「コミュニケーションが取れていない」のではなく、「コミュニケーションを取ろうとしなかった」というのが真相な気がする。
言葉が違う、サッカー観が違う、日本人の気持ちは理解されない……と、端から議論することを避けたのではないか? それがハリルのいう……

なぜ、会長にしても西野さんにしても、「ハリル、問題があるぞ」と一度として言ってくれなかったのか

……ということだったのではないか?

異論があるのなら、水掛け論になるとしても、ちゃんと意思表示すべきなんだ。なぁなぁで丸く収めようとするのが、日本人の悪いところでもある。
欧米人は議論を好む。侃侃諤諤(かんかんがくがく)に意見をぶつけあうことで、相手を論破するか双方の接点を探す。議論しない、あるいは反論しないということは、相手の主張を受け入れる、または従属することを意味する。

じつは、こうした文化の違いが、ハリルのいっていたデュエルに通じる。デュエルの意味は、「決闘・対決」だが、戦う意識があるかどうかだ。
議論が苦手、自己主張が苦手というのは、衝突を恐れ、負けることを先に考えてしまうからだ。衝突を回避し、穏便に済ますことを、日本人は「和」というが、平和的とはいえるものの、サッカーは仲良くするスポーツではない。
サッカーは戦いだ。衝突を避けていては戦いにならない。
強いものが勝利を手にする。
協会のトップが、こういう姿勢では、日本サッカーが強くなることは難しい。

また、

選手たちは日本のサッカーのことを考えている。1人や2人が反乱しているというのは失礼

ということは、もっと多くが反乱に加わったといいたいのかな?
それはそれで問題だと思うけどね。

選手たちの声は、断片的にしか漏れ聞こえてこないが、ハリルを支持していた選手と、ハリルに反目していた選手がいるように思える。
つまり、現状、2つの派閥があるのだと推察できる。
これでチームがまとまるのかが心配。
西野監督が、どっちの派閥を重用するかだね。その選択によっては、遺恨がチームワークに影響しそうだ。

W杯でどんな試合になるかを予想するのは難しいが、勝ち負けでいえば、勝てる可能性は低いとはいえる。ハリルを解任したのは、そうする方が勝てる可能性があると踏んだからだろう。

では、どうやって勝つのか?

監督との言葉の壁がないことが、勝利の可能性を高めることでないことだけは確か。
ザック時代のバスサッカーに戻すことが、可能性だとも思えない。
勝てる可能性があるとしたら、前線の選手たち……香川、岡崎、本田、原口、大迫、乾、久保、中島、宇佐美といった選手がハットトリックできるようなら、チャンスはある。相手チームは、いずれも得点力があるから、ゴールの打ち合いは必至。どれだけ点が取れるかが、勝敗を分けるだろう。
逆に、点が取れないのなら、大敗を喫する。

さて、どんな試合になるか。
楽しみではある。

諌山 裕

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