日本では本格的な有料の「電子新聞」を導入する日経だが……
果たして、その成功の青写真は実現するだろうか?
「電子新聞」に賭ける日経社長の成長戦略:FACTA online
こうした縮小均衡を打開するのが、3月創刊の電子版だ。既存の無料ネットサイト「NIKKEI NET」を「日経電子版」に衣替えし、日経本紙の記事はもちろん、紙にはない情報、機能を付加する。最新ニュースや解説記事が24時間、パソコンや携帯電話で読めるうえ、日経BP、QUICKなど日経グループの専門情報や海外有力紙のコラムも提供。記事や専門用語、人事情報の検索、記事の保存などもできる。購読料は電子版単独で月4千円、紙の新聞(約4300円)と併読の場合はプラス1千円と決まった。「高望みはせず、まず足場をしっかり固めたい」(喜多社長)。紙を守りながら、電子をじっくり伸ばす二正面作戦だ。
う~む……
これ、たぶん成功しないと思う。
第一に購読料が高すぎ。
実物の紙の新聞が4300円で、紙代・印刷代・配送料などの物理的なコストがかからない電子版がたった300円引きというのは、納得がいかない。
感覚的には、500円くらいが妥当な気がする。
月額500円というのは、有料のメルマガ等で中心的な価格だ。そのくらいなら、出してもいいという価格。
情報量に対する価格ではなく、読みたいかどうかの好奇心に対する価格である。
10000字のメルマガと、その数倍から数十倍はあるだろう新聞の情報量とを比較して、払ってもいい価格を判断しているわけではない。
欲しい情報は、その中のわずかだ。ミカンを1個ずつ買うのと、箱買いするときの感覚とは違うのだ。
また、新聞社は重要な視点が抜けている気がする。
ネット上の情報は、すべて対等だということ。
大手新聞社だろうが個人のブログだろうが、読者にとっては対等な情報価値である。
ネットの大海の中の、一滴あるいは数滴のしずくにすぎない。
価値の優劣は、ユーザーの好奇心を満たすかどうかだ。
それに対価を払うかどうか、である。
真偽入り乱れた雑多な情報が飛び交うネットの中では、新聞社の発信する情報も、その一部でしかない。日経にしかない情報があるとしても、それを求める人はわずかだろう。二次情報、三次情報は必ず出てくるから、それで間に合わせることは可能だし、それがネットの特質でもある。
現状、無料の「NIKKEI NET」は、ちょくちょく見ているが、それが有料になって会員限定となれば、見なくなるだけ。見られなくても困らないからだ。
無料だったものが有料になるというのは、大幅な値上げに相当する。交通機関や公共料金が値上げされたら、ほかに代替するものがないから払わざるをえないが、新聞の情報は必需品ではない。代替が可能な情報に、わざわざお金を払う人は少ないだろうと思う。
電子新聞の購読料という課金システムは、ネットではうまく機能しない。
なければ困る……という必要性が乏しいからだ。