新型インフルエンザ狂想曲

 ついにというか、当然の結果というか、日本にも新型インフルエンザが持ち込まれた。
 Xデイがいつかが注目されていたが、意外と遅かった。
 ニュースでは繰り返し報道されていて、決まり文句のひとつが……

「冷静に対処してください」

 ということ。
 診療拒否をしている病院を批判したり、感染した人を悪者扱いしてはいけない……といったことがいわれている。
 日本には「パニック」か「無関心」しかない……との論評もあった。
 今回は、パニック。

 だが、一番冷静さを欠いているのは、テレビの報道だろう。
 あれだけ時間を割いて、これでもかと報道していれば、小さな事件も大きく見えてしまう。テレビ局にしてみれば、今回の事は、ひとつの視聴率の取れるイベントに過ぎないのだろう。草なぎ氏の酒乱全裸逮捕騒ぎと同じような騒ぎ方だ。

 某ジャーナリストは、
「感染の疑いのある者を魔女狩りにしてはいけない」
 といっていた。
 たしかに、それも一理あるが、今回の新型インフルエンザは、幸運にも弱毒性で治療も容易だったからよかった。
 これが致死性の高い、鳥インフルエンザだったら、どうだろう?
 エイズ感染者が自分がエイズであると知りながら、性交渉を持つことは殺人罪に問われたりする。
 初感染者となった高校生一行は、留学先が鳥インフルエンザ感染地域だったら、渡航を強行しただろうか?
 ゴールデンウイークに海外に旅行した人たちは、鳥インフルエンザでも「せっかくの連休だから、行かないともったいない」と平気で遊びに行っただろうか?
 そして、鳥インフルエンザに感染したかもしれないと知りながら帰国したとしたら、それは他者を巻き添えにする殺人罪に問えるのだろうか?

 腑に落ちないのは、リスクを知りながら海外に遊びに行った人たちを、税金を使って検疫していることだ。彼らの遊びのツケを、税金で尻ぬぐいすることに、どこか違和感を感じる。検疫の請求書を彼らに回してもいいような気がするのだが……? そのへんはどうなっているのだろう?
 いずれにしても、海外行きを強行した人たちは、危機意識が低かったとは言えると思う。
 水際作戦は、出ていく水を止めずに、入ってくる水だけを止めようとしたことに、そもそも無理があった。

 ウイルスが国内に入ったことは間違いないようだから、検疫から漏れた人たちが、今ごろウイルスを培養していて、数日後にはばらまくことになるだろう。
 運良く終息するのか、これからさらにパニックになるのか……
 警戒態勢も長引けば、だんだんと形骸化していくのが常。
 そうそういつまでも、今のような緊張状態で検疫や警戒をしていられない。
 新型に慣れてしまった頃、突然変異して強毒性に変わる……というような展開にならないことを願いたい。

 パニック映画だったら、終息宣言後にどんでん返しで、ウイルスが凶悪化して感染爆発……というところだ。
 どうなることやら……

諌山 裕

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