猫のプーちゃん、永眠

わが家の次男猫の、プーちゃん……午前10時38分……永眠。
享年、17歳。

在りし日のアレフ



この写真は、わが家の今年のオリジナルカレンダー用に作成したもの。
背景に空を合成したが、ほんとうに空に昇ってしまった。

たくさんの思い出をありがとう。
17年という時間は、長いようであっという間だった。
17年前(現在日時からは33年前)、突然、舞い込んできたプーちゃん。
小さな子猫だった。

以前住んでいた古いマンションの天井裏に、プーちゃんが舞い込んでいた。
古い作りのマンションだったので、外の水道管メーターなどがあるボックスから、天井裏に入りこむことができた。そこの扉が開いていたらしい。

それを発見したのは、今は亡き、長男猫のBチャンだった。
天井を見上げて、Bチャンが鳴いていたのだ。

なぜ鳴いているんだろうと、耳を澄ますと……
かすかに猫の鳴き声がした。

上の階の猫だろうか?……と思ったが、もしやと思って、押し入れから天井裏を覗いて、懐中電灯で照らすと……
キラリと目が光った。

それがプーちゃんとの出会いだった。

あの頃のことが懐かしい。
Bチャンが親代わりになって、プーちゃんと過ごした日々。
2度の引っ越しを経験し、私の実家に帰るときに連れて行って飛行機にも乗った。

なにもかも、みな、懐かしい……

有名な、名台詞が思い浮かぶ。

昨夜は、かなり具合が悪くなっていて、妻が病院に連れて行って点滴をしてもらっていた。

会社帰りに妻にメールした。
「プーちゃん、まだ生きてるか?」
予期していたからだ。

プーちゃんは、まだ待ってくれていた。

帰宅して様子をみると、ぐったりと横になったまま、立ち上がることができなくなっていた。

丸々と太っていたプーちゃんは、この数ヶ月で急激に衰え、骨と皮だけのガリガリにやせた姿になってしまっていた。もはや、筋肉がほとんどないような状態。それでも大好物のマグロの刺身は熱烈に欲しがって食べていた。

昨晩も好物の「銀のスプーン」はガツガツと食べていた。

しかし、それはお腹が減ってるから食べているというより、食べることで生きていることを証明しているような食べ方だった。内臓は衰えているから、ほとんど食べたものが栄養にならない。それでも食欲があることが、プーちゃんらしかった。

立ち上がることができず、寝室の入り口に敷いたマットの上で寝ていた。
私たちが寝るとき、明かりはつけたままにしていた。

今晩が峠だと、予感したからだ。

朝6時頃。
プーちゃんの泣き声で目が覚めた。

ニャーニャーと鳴きながら、寝転んだままもがいていた。
私は妻を起こす。
「おい、起きろ! プーちゃんがダメそうだ!」
「ええ? なに?」
寝ぼけている妻には、言っていることが伝わらない。
「プーちゃんが、のたうってる! ダメそう!」

やっと言葉が脳みそに流れこんで、妻も起きる。
プーちゃんは苦しそうに、もがいていた。
それは私たちを呼んでいたのかもしれない。
しばらくすると、落ち着いた。

それからは、ずっと妻がそばに寄り添って、見守っていた。
目は開いているが、もはや見えてはいない。
撫でてあげることでしか、私たちがそばにいることはわからない。
呼吸は浅く、止まっているのか?と思うほど、か細い。

時間が過ぎていく……

私と妻はプーちゃん顔が見えるように、布団に寝転んで見守っていた。
睡魔が襲ってくる。

「ねぇ、起きて」
妻に起こされる。
「ダメみたい」

プーちゃんを見ると……
目から涙が……大きな涙の粒が流れた。
そして、瞳孔が開いた……

逝ったか……

最後の涙が、別れの涙のように思えた。

さようなら、プーちゃん……
そして、ありがとう。
たくさんの思い出を、ありがとう。

ゆっくり、おやすみ。
向こうに行ったら、Bチャン、マシコ、ミーちゃんと再会できるよ。

さようなら……
プーちゃん……

諌山 裕

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