まず、ナナちゃんを急遽病院に連れていったことが、ひとつの事件だった。といっても、それほど大げさなことではない。
10月31日の夜のこと、ふと、ナナちゃんを見ると、左前足を縮めて残り三本足で歩いているではないか。おや?……と思い、痛そうにしている足を触診してみる。「フニー」と痛そうに鳴く。ピョンピョンと跳ね回り、イスやテーブルの上から飛びおりていたので、くじいたのではないかと疑った。食欲はあるものの、心なしか元気がない。
そして、タマコにも異変が……。なんと、タマコの顔面が大きく腫れ、顔が変わっていた。タマコはご機嫌斜めで、やたらとプリプリしている。見れば、顎に誰かに噛まれたあとが……(汗)。
「犯人は誰だ!?」と、他の猫たちを見まわす。
まず疑われたのはシマ。猫嫌いで気性がやや激しいので、まっさきに疑われたのだ。しかし、容疑をかけられたシマは、なにごともなかったように「ぼく、しらないよ」という顔をしている。
捜査を続けていると、被害者であるタマコが「あいつよ!」と、睨みつける相手がいた。
黒猫Bチャンだった。名指しされたBチャンはというと、「え? なんのこと。おいらは関係ねぇよ」とばかりに、甘え声を出す。しかし、タマコの視線はBチャンを睨みつけたままだ。もう、バレバレである。果敢なタマコは、背を向けたBチャンを背後から襲う。かといって、喧嘩を始めるわけではない。牽制しているだけなのだ。タマコは「まだ、ケリはついてないわ!」といっているのだ(笑)。
13歳のBチャンは、人間でいえば、60過ぎの老人だ。にもかかわらず、ときとして若者たちと互角にやりあうことがあるから困ったものだ。興奮するとキレてしまうのだ(汗)。
翌日、病院が開く時刻を待って、ナナちゃんとタマコを病院に連れていった。この日、私だけしか行けなかったので、最初にタマコ、次にナナちゃんと、2回に分けて自転車でピストン輸送した。
タマコの方は、一晩経って顔の腫れもいくぶん引いていた。化膿止めの抗生物質の注射してもらって、薬を処方してもらった。
ナナちゃんの方は、ビタミンDとカルシウム不足だということだった。これは以前にシマもかかった症状だ。授乳期に母親が栄養失調だったり、出産が続いていたりして、母乳に栄養分が足りないと子猫の成長に欠かせないカルシウムが不足するのだ。
急激な成長をする時期だけに、この栄養不足が骨の成長に追いつかなくなっていたというわけだ。カルシウムの吸収を促進するビタミンDの注射を打ってもらい、食事にカルシウム栄養補助剤を加えることで対処することとなった。ビタミンD注射は、昨日2回目を打ってもらい、来週に3回目を打ってもらう。
その後のナナちゃんは、足を引きずることもなくなり、以前にも増して元気になった。最悪の場合には、骨が変形してしまうこともあるのだが、その心配はなさそうだ。
タマコの方は、すでに腫れはなくなり、傷口も快復しつつある。張本人のBチャンとの関係はというと、なんのことはない、その後は一緒に寝ていたりするので、猫同士の間ではたいした問題ではなかったのだろう(笑)。
元気になったナナちゃんだが、ありあまっている元気で、次なる被害者が……。
今度は次男のアレフだ。顔面をナナちゃんに引っかかれてしまったのだ。ナナちゃんは誰かれかまわず、「ワォォ――!」と両手を掲げて飛びかかる。映画「エイリアン」の幼生である“フェイスハガー”状態で、狙った相手の顔面に張りつくのだ。張りつかれた方はたまらず引き剥がすわけだが、その時に鋭い爪で顔面に傷を負ってしまうのだ。
アレフも病院に行くことになり、傷薬を処方してもらった。
いやはや、こうも病院行きが続くと、連れていくのも大変だが、治療代も馬鹿にならない。人間のように保険があるわけではないのだ。最近ではペット用の保険も出てきたが、うちは頭数が多いだけに、加入を考えた方がいいかもしれない。
いろいろとあった一週間だったが、ナナちゃんを始めとして、猫たちは元気である。元気すぎるのがトラブルの元かもしれないのだが……(笑)。