前述の三軒茶屋にある、石の店に行った。
昨日は仕事の打ち合わせで、三軒茶屋まで行く予定があり、それに合わせて妻がついて行きたいといったためである。
私が渋谷を通過する時間に、妻も会社を出て、三軒茶屋の改札で待ち合わせた。
ひとりでも行こうと思えば行けるはずだが、なにかにつけて私と行動を共にしたがるのだ(笑)。それを友人は仲のいい夫婦というが、そういう問題かい?(汗)
三軒茶屋の地下改札から地上に出て、世田谷通りを環七に向かって歩く。約5〜6分歩くと、モスバーガーがあり、その隣が例の店である。
店の名前は『LAND’S』
あとでわかったことだが、このお店はホームページも開いていた。URLは以下に。
http://www.lands-jp.com/index.html
「ここだよ」と、私は指さした。
妻を店に残し、私はさらに道を進んでE社へと向かう。
打ち合わせは少々長引いて、1時間ほどかかった。
帰り道、『LAND’S』の店内を見たが、妻の姿が見あたらない。終わったら隣のモスバーガーにいるようにといっておいたので、隣も覗く。
(おや? いないな……)
携帯に電話する。だが、コールするだけで留守電になった。
(どこ、いったんや?)
一緒に外出するときに、それぞれの目的のために別行動を取ることがあるが、妻はよく迷子になるのだ(笑)。
近くにペットショップもあったので、もしやと思い覗いてみるが……いない。
もう一度、石の店に行ってみると、陳列棚のうしろから妻が出てきた。陰に隠れていて見えなかったのだ。
店内に入って、妻を呼ぶ。
「おい」
返事がない。
「おい!」
やっと振り返った。熱心に見ていたために気がつかなかったようだ。
「携帯に電話したんだぞ」
「え? 気がつかなかった。音無しにしてたから」
「ずっと、見てたのか?」
「うん、たくさんあるから」
狭い店内には、所狭しと様々な石が陳列されていた。アクセサリーやインテリア感覚のものが多く、女性向きの品揃えとなっているようだ。
小さな石が多く、ちょっとした振動や接触で、石が転げ落ちそうだ。地震がきたらごちやごちゃになって大変だろうなーと思う。地震でなくても、手提げバックが棚に接触しただけでも、商品をぶちまけてしまいそうだ。
私は肩から下げていたバッグを手に持ち替え、用心しながらざっと店内を見てまわる。
加工されてリングやハート、球形になっているものが多いが、私は原石のままの状態のものに興味を引かれた。
妻はというと、いくつかの商品をピックアップして、レジの前にストックしていた。リングのサイズ直しも注文したようだ。
レジには、無口だがいかにもマニアックな風貌の中年男性がいた。おそらく店長だと思ったが、のちにホームページを見て、それを確認した。趣味が高じて店を開いたという、典型的なタイプなのだろう。
一通り店内を見た私はいった。
「まだかかりそうか? かかるなら隣のモスバーガーで待ってるぞ」
「もうちょっと」
「もうちょっと、1時間か?」
「そんなにかかんない」
妻のもうちょっとは、ちょっとではないことが多いからだ(笑)。
それでもさらに十分は経った頃、ようやく商品選びが終わり、支払いをして店を出た。
「どのくらい、いたのかな?」と妻。
「だいたい1時間だろ」
「そんなに? ぜんぜん飽きなかった」
そうだろうさ。私だってモデルガンの店とかCDショップに行けば、数時間は夢中になってるよ(笑)。
帰りの電車の中で、うれしそうに買った石を手に取っている妻であった。