サッカー女子ワールドカップの夢の時間が終わった。
日本代表は、決勝でまさかの大量失点だったが、あの試合でのアメリカのパフォーマンスは、大会を通じて最高だったと思う。あれでは、男子の日本代表が戦っても勝てなかった気がする。55mのロングシュートなんて、男子でもなかなかお目にかかれないものだった。
だが、ファイナルに日本が勝ち上がることが、一ファンとしての願いだった。
下馬評ではアメリカ優勢だったし、私も日本が勝てる可能性は低いと思っていた。テクニックと組織力が自慢の女子日本代表だったが、体格やフィジカルの差は埋めようがなく、準決勝まではなんとかしのいだ感じだ。
毎試合を見るのが楽しみだった。
勝利に終われば、気分もいい。
それは夢の時間だった。
4強に残った時点で、あと2試合はできることになっていたが、ラスト1試合が決勝であれば、だんぜんいい夢には違いない。
早々に敗退してしまったら、夢の時間も早くに覚めてしまうところだった。
最後まで、夢を見たかった。
だから、準決勝のイングランド戦が、一番ワクワク、ドキドキした。これを勝てば、決勝の夢が見られるからだ。
そして、それをかなえてくれた。
1か月間……いい夢を見させてもらった。
優勝できれば最高だったが、そうそう甘くないのが勝負の世界。
ワールドカップが終わって、少々気が抜けている。
もう、手に汗握る、緊張感のあるサッカーを見られないからだ。
次は、リオ五輪。その次は、男子のロシアW杯。
夢の時間は、しばらくお預けだ。
さて、決勝戦について、いろいろと論評記事が出ているが、毎度のセルジオさんは……
【セルジオ越後の天国と地獄】強化には環境の整備が不可欠。協会は、なでしこの活躍に報いる仕事をすべきだ | サッカーダイジェストWeb
でも、ここから上を目指すなら、協会のサポートが不可欠になるだろうね。今大会のメンバーを見ても分かるように、澤や宮間たちに取って代わるような存在は出てきていない。本来は、協会が主導してそうした選手を育てるべきだけど、日本はアメリカなどの強豪国と比べて、女子サッカーを取り巻く環境が整備されていないんだ。
なでしこリーグのなかには、アルバイトで生計を立てている選手もいるし、育成年代の選手たちがプレーする場所も限られている。こうした環境を改善しない限り、女子サッカーの総合力は上がらないだろう。
経済的に恵まれていないのは、日本女子だけじゃないよ。
アメリカでもヨーロッパでも、事情はそれほど違わない。サッカー評論家なのに、そんなことも知らないのかい?
アメリカの女子サッカーリーグは、過去に経営難からリーグが中断したり消滅の危機に陥ったりした。アメリカ代表のレジェンドのひとり、ワンバック選手は、今大会に向けてクラブチームでは活動しないで、代表選手としてのみ活動していた。
35歳ワンバックW杯専念、所属チームでプレーせず – 海外サッカー : 日刊スポーツ
サッカー女子の米国代表FWワンバックが今夏のW杯カナダ大会に専念するため、今季は所属する米プロリーグNWSLのフラッシュでプレーしないと18日、クラブの公式サイトで発表した。
また、大活躍したロイド選手は、年俸360万円程度だという。
日刊ゲンダイ|開始16分で圧巻ハット 女子W杯MVPロイドは年俸360万円
とはいえ、金銭的には恵まれているとはいえません。所属のヒューストンは13年に8チームで立ち上がった新リーグのひとつ。テレビ放映権料が安く大口のスポンサーもいないため、選手の年俸は72万円から最高でも360万円程度。ロイドは11年からナイキとスポンサー契約を結んでいるものの、年俸はその程度です。
そもそもアメリカでは、サッカーはマイナーなスポーツだから、ベースボール、アメフト、バスケみたいには観客を集められない。採算が取れるチーム経営の難しい状況は、日本と大差はない。それでも、女子サッカーとしては、アメリカは恵まれている方だという。
女子サッカー界の金銭事情を英メディアが特集 「最も収入が多いのは?」 | SoccerMagazine ZONE WEB/サッカーマガジンゾーンウェブ
特集によれば、準々決勝で中国と戦うアメリカ代表FWアレックス・モーガンが、年収300万ドル(約3億7000万円)で女子最高収入選手だという。今大会は4試合出場で1得点を挙げている。アメリカの女子リーグ「NWSL」のポートランド・ソーンズFCで活躍する25歳のストライカーは、2011年のドイツ大会ではアメリカ代表の最年少選手として注目を集めた。日本と対戦した決勝では後半24分にゴールを決め、延長戦でもアビー・ワンバックのゴールをアシストするなど大活躍した。恵まれた美貌を誇る彼女は、パナソニックのドライヤーのCM契約などで収入を増やしており、年収の90パーセントがスポンサー契約によるものだという。
モーガンの年収は、世界で最も年俸面で優遇されているという男子のイングランド・プレミアリーグでの平均的な所得になるという。一方、マンチェスター・シティに所属するイングランド代表DFステフ・ホートンは、イングランド女子トップリーグ「FA WSL」で最高クラスの年収を誇るが、6万5000ポンド(約1260万円)。モーガンの収入は、その30倍以上になる。多くの選手はリーグ規定で年俸2万ポンド(約388万円)を手にしているが、中には週給50ポンド(約9700円)という待遇の選手もいるという。
5度のFIFA最優秀選手賞に輝いたブラジル代表のスーパースター・マルタは、前所属のスウェーデンのティレーソーFFで31万5000ドル(約3800万円)の年俸を手にしていた。その他にも、スポンサーからの収入を手にしていたという。
モーガン選手の年俸は際立っているが、90パーセントがスポンサー契約ということで、サッカー外の収入だ。
なでしこリーグはどうかというと……
なでしこリーグの現状 | サッカー選手の仕事、なるには、給料、資格 | 職業情報サイトCareer Garden
なでしこリーグでプロ契約をしているのは、INAC神戸レオネッサの澤穂希選手や海堀あゆみ選手など数人です。年俸は推定で500万~600万円といわれています。
また、INAC神戸のプロ契約以外の選手は、契約社員としてサッカーに打ち込める環境が整っています。
それ以外のチームの社会人選手は、ほとんどがスーパーのレジ係や整体院の受付、カラオケ店の店員といったアルバイトをしたり、家族の援助を受けながらサッカーをしています。
プロ契約の選手は少ないにしても、ロイド選手よりも経済的に恵まれている人もいる。
男子の場合は、どうかというと……
プロサッカー選手年俸 過半数はJリーグ以下 | スポーツマーケティング探求記 | スポーツナビ+
FIFAが先日発表した統計によると、世界のサッカー選手の過半数が、Jリーグが定める最低年俸を下回っていた。
ちなみにJリーグの年俸規定は、
A契約選手 最低年俸480万円 新人選手の最高額は700万円
2年目以降の年俸上限は定められていない。
1チーム25人までと、契約上限が定められている。
B契約選手 年俸480万円以下(契約上限なし)
C契約選手 年俸480万円以下で、新卒入団後所定の出場時間をクリアしていない選手。
J1-450分以内、J2-900分以内、JFL-1350分以内。C契約選手がこの条件をクリアした場合はA契約の権利を得ることができる。
アマチュア契約選手 年俸や契約金を結ぶことが出来ない。但し試合給は支給されるという4段階になっている。
FIFAの資料によると、世界のプロサッカー選手の平均年俸は
推定24万4000ドル(約2050万円)
ただこの金額は、欧州サッカーを中心とした一部の高額年俸選手が平均値を押し上げたもの。
FIFAの資料から、年俸の高い順に並べて、ちょうど真ん中(中央値)は4万3000ドル(約360万円)だった。
ごく少数のトッププレイヤーは数億~数十億を稼ぐが、平均すると平均値を押し上げるから、中央値という見方は正しい。
Jリーグの最低年俸でも、けっこう厳しいよね。サッカー選手になるには、それなりの才能や能力が必要なわけで、誰でもなれるわけではない。競争を勝ち抜いて、ピッチに立てるのは11人プラスαだけ。チーム数が多くなっているとはいっても、狭き門だ。
海外で活躍する女子選手で、日本サッカー協会(JFA)が指定する海外強化指定選手に選ばれると、移籍支度金として20万円、移籍期間中の滞在費として日当1万円を出しているが、その適用範囲を海外だけでなく国内の選手にも拡大してもいいのではないか?
日当1万円で年間365万円になるが、なんとか生活できるレベルは維持できる。少なくとも、副業をしなくてもサッカーに専念できるように思う。W杯のチームは23人までだが、候補選手として最低50人くらいはピックアップして、
50人×365万円=1億8,250万円
そのくらいの金は、JFAでも出せるだろう(^_^)
もしくは、totoの売上の一部を、そっちに回せよ。
セルジオさんの女子サッカーに対する論評は、少々的外れな点が多い。
いわゆる強豪国とされる勢力図は、男子とはイメージが違う。ドイツは男子も女子もFIFAランキングのトップだが、上位の顔ぶれは男子とはずいぶん異なる。
The FIFA Women’s World Ranking – FIFA.com
日本女子は、間違いなく強豪国なんだ。男子の感覚で女子チームは見るのは大間違い。
トップ10の中で、北朝鮮だけは例外的な存在だが、総じていえることは女性の社会的地位が高く、スポーツをする環境がある程度整っていることだ。男子はW杯予選で、中東の国に苦戦することが多いが、女子の場合、中東のイスラム圏では、女子スポーツそのものが宗教的な理由などにより育ちにくい環境だ。
日本女子は、世代交代がうまくいかなかったという指摘もあるが、それはアメリカも同様で、GKのソロ選手は33歳、最後のW杯といっていたワンバック選手は35歳、大活躍のロイド選手は32歳、稼ぎ頭のモーガン選手は26歳……と、4年後のW杯では引退しているか、ピークを過ぎているだろう。
2019年のフランス大会では、勢力図は大きく変わっているかもしれない。
日本が優勝した2011年W杯から今回の2015年大会、それと2016年のリオ五輪までは、アメリカもしくは日本が頂点を極めた時代として歴史に残るのかもしれない。
そういう意味では、私たちは幸せな時代に、女子サッカーを見られているのだと思う。