Will extraterrestrial intelligence be a friend or foe to the Earth?

 古くて新しいテーマというか、宇宙人……地球外知性体が、地球にとって友となるのか、敵となるのか?……の議論が盛り上がっているらしい。

宇宙メッセージめぐり大論争 宇宙人は友達?それとも恐ろしい侵略者? (1/4ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ)

地球外知的生命体に向け、宇宙空間にメッセージを送るのは是か非か。今年に入り、米国でこんな論争がヒートアップしている。

 高名な天文学者やSF作家、実業家らが両陣営に分かれて議論を展開しており、将来人類を滅ぼす原因となるかで見解が分かれる人工知能(AI)をめぐる論争に続き、全米の関心を集めている。

(中略)

マスク氏らは、メッセージを受け取る地球外生命体が善良な存在か悪意に満ちた存在かを事前に予測することは不可能だと主張。

(中略)

 これに対し、メッセージを受け取って反応を返すことができるのは地球人より高度な文明を持つ宇宙人であり、交流によって知的な恩恵を得られると考える研究者も少なくない。

(中略)

電波メッセージは地球から約2万5000光年の距離にあるM13球状星団に向けて送信されたが、2万5000年後にメッセージがこの星団に到達する前に地球の文明は1万年程度で滅んでしまっていると予測しているからだ。

 SFファンにとっては、数々のSF小説で様々な異星人やファーストコンタクトの物語を読んできたから、なにをいまさら……という感じがする。
 「善」あるいは「悪」の概念は、人間の都合の分け方であって、政治的、宗教的な価値観の反映でしかない。両者の違いに、絶対的な物差しは存在しない。
 テロリストが人質をナイフで殺害すると、残虐非道で極悪だとされる。
 一方、空爆で何十人、何百人、何千人と死んでも、正義のためと正当化される。誤爆で無関係の人が死んだ場合、残念な結果だったとはいわれるが、不可避な犠牲のように扱われる。
 善と悪の絶対的な基準は、人の生き死にでも明確ではない。

 星間宇宙を光速の限界を超えて行き来できるような異星人(人の形とは限らない)がいるとしたら、人類には未知の物理法則の知識やテクノロジーを持っていることになる。そんな異星人から見たら、地球の文明は極めて原始的な文明だろう。
 人間から見た、牛や豚、あるいは蟻のようなレベルかもしれない。牛や豚は食料であって、屠殺するのに善悪を問うことはなかろう。蟻の巣を踏みつぶしたからと、良心の呵責を感じることもなかろう。高度な文明を有する異星人からしてみれば、地球のような原始的な文明は取るに足りないものであっても不思議はない。資源としての価値を地球に見いだすとしても、そこに生息している生物は邪魔な害虫くらいにしか思わないかもしれない。

 高度な文明が高度な知性に由来するとしても、高度に平和的である必然性がない。
 人類の文明を振り返れば、文明の発達は戦い方の発達でもあったわけで、好戦的だったから現在の地球文明があるともいえる。
 そう考えれば、高度な文明の異星人は、高度に好戦的だという仮定も成り立つ。
 クリンゴンやボーグみたいにね(^_^)。

ケイト・マルグルー
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
2013-11-22




 「スタートレック・ヴォイジャー」では、機械知性と生体が融合したボーグが登場していたが、異星人が機械知性であることも考えられる。
 広大すぎる宇宙、生命には厳しい環境である宇宙では、生身の生命体より機械の方が有利に働く。また、個体としての知性よりも、集合体としての知性の方が効率的だともいえる。それは蟻の生態にも通じる。
 蟻のような集合知性体だとしたら、人類とはまったく異質だし、理解し合うことなんて不可能だろう。
 異質な惑星で発達した文明同士が巡り会ったとき。双方にそれぞれの思惑が働く。まったく異なった思考や価値観による思惑だから、理解できることよりも理解できないことの方が多いはずだ。
 衝突も起きるだろう。戦いになるかもしれない。
 しかし、そこに善悪はない。善悪という考えかたそのものが、地球人特有のものだからだ。
 たんなる生存競争、弱肉強食があるだけ。ライオンがガゼルを狩るのに、悪意で狩るわけではないのと同じこと。
 地球外生命体にも、進化の歴史があるだろうし、それは生存競争であり適者生存であり弱肉強食だ。その進化の結果の異星人であれば、好戦的な種族であることは自然なことだろう。

 宇宙人というと、どうしても人間的な姿形、人間的な思考を想定して擬人化してしまうが、そもそもその発想がナンセンスだと思う。知能があるとされるイルカですら、満足なコミュニケーションがとれないし、イルカの考えていることなんて翻訳不可能だ。生命のルーツが同じイルカですらそうなのだから、起源の異なる異星人を相手に相互理解などできるとも思えない。
 電波にメッセージを載せて宇宙に発信して、それをどこかの星の異星人が受信したとしても、解読するのはほぼ不可能じゃないかな。逆もしかりで、なにがしかの信号を受信しても、人類が解読できるとは思えない。
 数学は宇宙では普遍の言語だとか、2進法なら理解できるとか想定しているのだけど、それすらも人間的な発想に過ぎず、超文明を築いている異星人は、まったく異なる方法で宇宙を読み解いているかもしれない。

 人型(ヒューマノイド)の異星人であれば、ある程度の親近感や感情移入はできるだろうが、昆虫型や映画「エイリアン」のような異星人だったら、そうもいかない

トム・スケリット
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (FOXDP)
2012-07-18




 進化した場所が違っても、似たような形態に進化することを「収斂進化」というが、異なる環境の惑星で人間に類似した形態に進化する可能性は低いように思う。
 絶滅した恐竜は、2億年あまり繁栄し進化していたが、高度な知性を獲得したとは思われず、2足歩行をした種もいたが「人間型」にはならなかった。6500万年前に絶滅しなかったら、文明を築けたかもしれないが、人類とはまったく異なる文明になったことだろう。
 そういう種と、友好的な関係を築くのは難しいように思う。

 爬虫類型異星人というと「V[ビジター]」を思い出す。

マーク・シンガー
ワーナー・ホーム・ビデオ
2011-08-03




 リメイク版も作られているが、インパクトとしては最初のシリーズの方が面白かった。のちに作られた映画「インディペンデンス・デイ」は、「V[ビジター]」とは無縁だとされているが、イメージ的にはかなり影響を受けている。

ウィル・スミス
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2012-05-11




 こんな感じで、巨大宇宙船がドォーーンと出現したら、地球人はなにもできないよね。SFドラマや映画では、最後に地球人が勝利するわけだが、実際問題としては歯が立たないだろう。蟻が人間には勝てないのと同じ。ただ、ある種の蟻に刺されて毒で死ぬ場合もあるわけで、限定的な勝利がないわけではないが。

 つきつめれば、「宇宙人は友か敵か?」という問いがナンセンスだといえる。
 文明と文明、種と種がぶつかるとき、摩擦が起きないわけがない。
 どちらが生き残るか?
 それしかないと思う。

 銀河の星々の中に、生命はありふれているだろうし、知的生命体も多く存在しているだろう。しかし、ファーストコンタクトが起きる可能性は低い。
 それは、SFとして物語の中で想像するしかない。

諌山 裕

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