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金(Gold)は中性子星の合体で生成される?

Steve BidmeadによるPixabayからの画像

 金、銀、プラチナといった貴金属は、宝飾や電子機器には不可欠な金属だが、その元素がどうやって生成されたかは明確ではなかった。いわゆる錬金術は、宇宙の壮大な現象の中で起こっている。
 宇宙の始まりでは、水素やヘリウムといった軽い元素だけが存在し、それらが集まって原初の恒星が生まれ、恒星を輝かせる核融合によって、より重い元素が作られた。しかし、恒星の中で生成されるのは原子番号26の鉄まで。鉄より重い元素は、恒星が爆発する超新星爆発の莫大なエネルギーによって生成される。
 一昔前まで、金、銀、プラチナなどの重元素も、超新星爆発によって生成されると考えられていた。
 ところが、超新星爆発のエネルギーでは十分ではないという説が出てきた。
 では、どうやって金(Gold)は生成されたのか?
 そのひとつの説についての記事。

金などのR過程元素は中性子星の合体時に作りだされた – 国立天文台など | マイナビニュース

1つ目の説は太陽のおよそ10倍以上の質量を持つ重い星の中心核が最後に収縮して中性子星になるときに起こす大爆発である超新星だが。近年の研究から、超新星では中性子星から放出される物質でさえ、R過程元素を作り出すのに十分な中性子が存在する環境は実現できないことが分かってきた。

もう1つの説は、中性子星同士が合体する際に作り出されるというもの。連星中性子星は重力波を放射しながら少なくとも1千万年という時間をかけて近づき最後に合体すると言われており、数値シミュレーションの結果から、その合体の際にR過程元素が大量に作り出されるとされている。この説では例えば、金は地球約70個分に相当するような凄まじい量が一度の合体で作られると考えられているが、中性子星合体ではR過程元素以外の元素はほとんど作り出されないため、その影響を受けたガスから形成された星はR過程元素のみを極端に過剰に含んだ星になると予想される一方で、銀河系の星の元素組成を観測してもそのような組成を持った星が見つかっていないことが問題となっていた。

 面白い!
 ひとつの説、ひとつのシミュレーションだが、宇宙のどこかで合体した中性子星によってもたらされた金(Gold)が、女性の胸元を飾るネックレスになり、世界経済を左右し、PCを動かすための材料になっている。
 私たちの体を構成する元素も、そもそもは恒星の内部で作られたものなのだ。それは身近な太陽のことではなく、遠い過去……太陽の年齢の47億年より前の大昔に、どこかの恒星で生成された炭素や酸素や鉄といった元素が元となって、私たちにつながっている。
 血筋をたどる家系というものがあるが、元素のルーツをたどると、今は存在しないであろう、爆発もしくは寿命の尽きた恒星にたどりつくはずである。元素は宇宙の中でリサイクルされ、あるものは恒星や惑星の材料になり、あるものは生命の材料になる。そして、やがてわれわれの太陽も、寿命がつきて赤色巨星となり燃え尽きると、残った星屑は次なる星や生命の材料となる。
 まさに、輪廻転生。
 まぁ、そういう宇宙規模のタイムスケールで考えれば、地球温暖化の問題など、些細なことだ(笑)。今、地球に生きている私たちには深刻な問題ではあるが、人類や生命が滅びても、宇宙の中では小さな自然現象にすぎない。もっとも、地球温暖化問題については、政治的・経済的な意図が働いている側面があり、疑義もいろいろとあるのだが……。(それについては、別の機会に)

 中性子星の合体で、「金は地球約70個分に相当するような凄まじい量が一度の合体で作られると考えられている」というのは、スゴイというか、想像できる範囲を超えている。それすらも、宇宙スケールでは微々たるものでしかない。
 「金だけでできた星」なんてのがあると面白いが、実際には塵となって拡散するようだ。
 地球で産出する金は、地殻変動によって地表近くに露出した金鉱脈によってもたらされた。古代文明が金を材料にした装飾品などを作っていた時代は、地表に露出した金を拾っていたわけだが、現代では地中深く掘削して金を採掘している。地球が誕生した頃は、宇宙の塵が集まって原子惑星となり、降り積もる塵や小惑星の衝突によって質量が増えるほどに、重い元素は沈殿して中心付近に集まった。中心核は鉄が主成分だが、マントルには鉄より重い元素も多く含まれている。ウランなどの放射性元素もそこに含まれ、地球内部の熱を維持する役割をしていると考えられている。
 金がらみの話でいえば、「地球全体の海水には、なんと50億トンの金が含まれている!」という話もある。取り出すのが大変なのだが。

 ともあれ、人々を魅了し、富の象徴となり、工業的にも不可欠な「金(Gold)」は、はるかな太古の昔に、とある中性子星が合体したときに生み出された……ということ。
 実際に中性子星を見ることはできないし、太陽系の近くにもないが、想像力の翼で宇宙を飛んでみる。
 スタートレックのエンタープライズ号に乗った気分で。

※中性子星のイメージは、ナショジオのサイトのが印象的。

諌山 裕

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