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壮大な遠未来を描いたSF小説の古典的名作、「ファウンデーション」がドラマ化された。
9月24日からApple TV+で配信が開始されている。
→ ファウンデーション|Apple TV+
小説版は創元推理文庫の「銀河帝国の興亡」(厚木淳 訳)で読んだ。高校生のときだ。この古い文庫本は、現在では高値で取り引きされているようだ。
その壮大すぎる物語に衝撃を受け、のめりこんだ。
SFの名作の多くは中学〜高校生のときに読んでいるので、私は多大な影響を受けている。
映画「スターウォーズ」のルーツともされているのが「ファウンデーション」だ。
初の映像化となるが、なかなかよくできている。
「トランター」とか「ハリ・セルダン」とか、そのキーワードに懐かしさを感じた。
現代から見ると超テクノロジーが普通になっている遠未来だが、社会体制は中世のように古くさい。科学は魔法のような存在で、剣と魔法のファンタジー世界のようでもある。
第2話まで見たが、SF考証的ツッコミを(^_^)
スターブリッジと呼ばれる軌道エレベータが、トランターには設置されていた。
その最頂部に宇宙船が接舷するようになっていたが、おそらくそこが静止軌道の高さだと思われる。しかし、それより上に構造物はないようだった。
軌道エレベータでは、全体の遠心力と重力が釣り合うように質量の大きなアンカー(カウンターウェイト)が必要になる。
それがなかった。
アンカーがないと不安定になってしまう。
また、地上まで降りるのに14時間かかるというセリフがあった。
地球の場合の静止軌道は約3万6000kmだが、それを14時間で降りるということは、平均時速2570km/hの猛スピードが必要だ。そのスピードもすごいが、時間がかかるという設定にニヤリとした。
ガンダムなどに出てきた軌道エレベータでは、数時間で到着するような描写になっていて、それは違うだろうというのがあった。新幹線並みのスピードでは1週間くらいかかる距離なんだ。
辺境星域のシンナックスから銀河帝国の主星まで行くのには、ジャンプ航法の船に乗った主人公のガール(GirlではなくGaal)。何時間かかったのかの説明はなかったが、眠っている間に着いたようなので、数時間〜数十時間なのかな。
銀河帝国の形成には、こうしたワープ航法や超光速通信が不可欠だ。
しかし、セルダン率いるファウンデーションの人々が、5万光年離れた辺境のターミナスに追放され、その際にジャンプ航法の船の使用は許されず、数年かかる鈍行の船に乗ることになった。
ジャンプ航法ではないが、5万光年を数年で行けるのは超光速には違いない。
その推進方法についての説明はなかった。
未来を描くSFでは、現在は実現していない超テクノロジーを出すことで未来感を演出する。
本作にも、いろいろと小道具が出ていた。
一方、社会システムは中世的な帝政であり、風俗的には古風なものになっている。
果たして、銀河を統べるシステムとして帝政が適しているのかどうかは疑問がある。ローマ帝国をモデルに銀河帝国に置き換えているわけだが、2500万の惑星と80兆人ともいわれる国民を、ひとりの皇帝で統治できるものだろうか?
ま、そこは物語なので、それもありではある。
名だたるSF作家の多くが未来を描いてきたが、テクノロジーとしての未来は創出してきたものの、社会システムの未来を創出できていない。
民主主義よりも優れた未来の社会システムはあるのだろうか?
通貨を基本とした経済システムより優れたシステムはあるのだろうか?
過去記事にも書いたが、軌道エレベータやスペースコロニーは、経済的損得勘定からいくと、採算が取れない事業なんだ。
太陽を囲むように建造するダイソン球になれば、超天文学的コストがかかる。
経済で回る社会では、それらの実現は不可能だ。
銀河系の2500万の惑星に人類が広がっている未来。
とてつもないスケールだが、果たして人類の未来にそうなる歴史はあるだろうか?……と考えると、可能性は限りなくゼロに近いくらいに低い。人類は太陽系から出ることなく滅亡するシナリオの方が、確率は高いと思う。
太陽系から出ていくためには、ワープ航法のような技術が必要だ。
それには未知の物理法則の発見と、時空を超えるための発明がなくては実現できない。
その方法があるとしたら、どこかの異星人が実用化して、銀河を飛び回っているかもしれない。
いまのところ、夢物語のSFの世界でしかない。