ペットを連れての旅行で、飛行機に預けたペットが熱中症で死んでしまった……という記事。
犬好き、猫好きには、飼い主の痛みがわかるから、ツライ話。
飛行機に預けたチワワが熱中症で死ぬ 全日空「過失ない」に賛否両論 (1/2) : J-CASTニュース
全日空の飛行機に預けたチワワが熱中症で死んでしまったと、東京在住という飼い主の少女(15)がツイッターで怒りをぶつけて話題になっている。全日空では、過失はなかったとしているが、賛否両論が出ている。
(中略)
全日空のホームページを見ると、ペットサービスでは、空調が客室とほぼ同じ貨物室で預かるとしている。しかし、注意事項として、飛行機に乗せ降ろしするときの外気について、「夏場においては駐機場の反射熱などにより外気温に比べて高温になる場合もございます」と書いてあった。
(中略)
なお、ポポの飼い主少女は、ペットの死傷について損害賠償を求めないとする同意書を書いていることなどから訴訟は起こさないと父親から聞いたことを明かしている。
賛否両論ということだが、「否」の方が多い気がする。
▼その一例として、Yahoo!ニュースのコメント欄より。(クリックで拡大表示)
「犬を飛行機に乗せるのが悪い」……といった、飼い主の責任を問うコメントが多い。
それも一理あるのだが、その論法だとなにか事故が起こったときに、当事者が悪いと批判される風潮に一抹の不安を覚える。
犬だから、あまりおおごとにはならないが、人身事故の場合でも同じような批判をよく目にする。
たとえば……
最近多い、人の熱中症による死亡例。
クソ熱いのにクーラーを入れていないのが悪いとか、こんな日に学校行事で運動するのが悪いとか、熱中症になる前に水を飲まないのが悪い……など。
熱中症になるやつが悪いといった風潮。たしかに、当人の責任が大きいのではあるが、「良い、悪い」の問題ではない気がする。多くの場合、熱中症になると、もはや意識はもうろうとしていて、最善の行動をとるための判断力は失われている。
夏になると何度となく目にするニュースが、川や海あるいはプールでの水難事故。
そんな川で泳ぐのが悪いとか、そんなところから飛び込むのが悪いとか、沖まで行くのが悪いとか。
プールでの水難事故が発生すると、プールが閉鎖されたりする。海や川では遊泳禁止の場所もあるが、遊泳が許可されている場所で水難事故があったからと、「海に行くな」ということにはならない。
なんとなく、おぼれたやつが悪い……という風潮があるように思う。
そういった風潮の背景には、過剰な「自己責任論」があるのだろう。
もちろん自己責任も重要なのだが、「おまえが悪い」と片づけてしまうことで、防げたかもしれない事故の原因と安全対策の不備に目をつぶることにもなってしまう。
ペットと飛行機の問題。
問題点を整理すると、要点は2つ。
(1)ペットを旅行に一緒に連れて行くことの是非
(2)飛行機内にペットを持ち込む場合の、取り扱い方
この2つが混同されている。
2つの問題点は、関連性はあるものの、別の問題である。
(1)ペットを旅行に一緒に連れて行くことの是非
批判的な意見の多くが、「旅行にペットを連れて行くな」ということ。
たしかに、ペットを連れて行くことはリスクが大きい。ただし、旅行といっても、短期的な行楽のための旅行と、帰省や長期出張などのための旅行がある。ペットを飼っている人にとっては、犬猫は家族の一員でもあるので、連れて行きたいという気持ちは強い。
長期に家をあけるときには、ペットも連れて行きたいものだ。ペットホテルというものもあるのだが、慣れない環境で飼い主もいない状況は、犬猫にとっては大きなストレスになる。特に、犬は群れの動物であり、飼い主が群れのボスになる。群れから離されることは、犬にとってはとても辛いことなのだ。
うちには猫がいるが、実家に帰省するときに、一度連れて帰ったことがある。もう20年くらい前(現在年から31年前)のことだが、このときは大変な思いをした。
当時から、飛行機にペットを持ち込むことは可能ではあったが、あまり一般的ではなかったため、空港の受付カウンターでの対応が徹底されていなかった。対応できる人が少なかったらしく、私たち夫婦と猫は、あちこちの担当窓口にたらい回しされた。
最初に、普通の受付カウンターに行ったら、「ペットの受付はあっちです」といわれ、いわれた先に行って待っていると、「ここではありません。向こうです」と別の窓口に回され、さらに待っていると搭乗時間になってしまった。私たちはいわれたとおりにしているのに、ちゃんと対応できるスタッフがいなかった。あげくに、乗り遅れることとなり、次の便にようやく乗れた。
そのときの教訓としては、飛行機にはペットをのせるものじゃない、ということ。
以来、二度と連れて帰らないことにした。そのため、夫婦そろって帰省することもできなくなった。帰省だけでなく、旅行にも夫婦一緒には行っていない。猫がいるから、どちらかが留守番をするためだ。
旅行に行きたい気持ちもわかるのだが、ペットを連れて行くことはやめたほうがいい。ペットと生活することを選ぶのなら、飛行機で行くような旅行はあきらめること。もしくは、留守にする自宅で、ペットの面倒を見てくれる人を探すことだ。ペットホテルよりは、自宅に来てくれるペットシッターの方がよい。
だが、どうしても飛行機でペットを連れて行く必要があることもある。
遠くへの転居や長期の出張などで、陸路では行けなかったり、時間がかかる場合だ。
私の実家は九州なのだが、陸路では新幹線を使ったとしても、東京からだと7時間あまりかかってしまう。小さなケージに入れたままでは、猫だってたまったものではない。空路であれば、待ち時間を含めても3時間あまりで、猫の負担も軽減される。
とはいえ、飛行機ではペットは生きた貨物扱いなので、快適とはいいがたい。
(2)飛行機内にペットを持ち込む場合の、取り扱い方
飛行機がペット持ち込み禁止にしているのなら、そもそも連れて行くことができないから、問題は起こらない。だが、ペット持ち込みが可能になっているから、連れて行きたい人は連れて行こうとする。
別料金を払うことになるが、ちゃんと乗せてくれると信頼するから預けるのでもある。
しかしながら、「ペットの死傷について損害賠償を求めないとする同意」というのは、航空会社も姑息だ。それなら、人間の乗客に対しても、同様の同意書にサインさせれば、事故が起こっても責任をとらなくてもいいことになってしまう。
所詮、ペットは「物」なので、生きものとして命を大切にはされないのが現実。その一方で、命を大切にと、動物虐待を取り締まったりもする。拡大解釈すれば、航空会社が死んでしまうような扱いをすることは、動物虐待に該当すると思うのだ。ペットを飼う者としては、犬猫が「物」から「生きもの」へと、法的な扱いの格上げをして欲しいものだと思う。
飛行機へのペットの持ち込みを許可するのであれば、せめて、飼い主と一緒に乗れるようにしてくれればと思う。生きものとして扱ってほしいのだ。それはそれで、狭い機内の中で、犬猫が吼えたり鳴いたりすると、周りの乗客に迷惑になる場合もあるし、おしっこをもらしたりもする。だが、それは人間の赤ん坊と同じことのような気がする。
では、介助犬の場合はどうなのかというと……
Q7. 目の不自由な方が、盲導犬と一緒に飛行機に乗ることはできますか?
A7.
国内線は、盲導犬(介助犬、聴導犬)と一緒に飛行機に乗れます。詳しくはご利用の航空会社にお問い合わせ下さい。
国際線は、国によっては検疫の対象となりますので、訪問国の領事館や日本の最寄りの動物検疫所にお問い合わせ下さい。
……ということで、介助犬は人間と一緒に乗れる。訓練されているから、粗相はしないだろうし、迷惑がかかることは少ないと思われる。動物の中でも、格差があるということだね。
飼い主と一緒ではだめだというのなら、荷物と一緒ではなく、せめて空港関係者がケージを持って機内に運んでほしい。それだけでもずいぶん違う。
ペットが生死をさまような環境に置かれることは、飼い主としては堪えがたい。
ペットの持ち込み料金が貨物室の5000円ではなく、人間の料金と同等で、隣の席に置けるのなら、私は払ってもいい。安全の確保と手間がかかるというのなら、そのためのコストを払ってもいいと思う飼い主は少なくないはずだ。
たかがペットといわれるかもしれないが、ペットを亡くしてしまう「ペットロス」は、飼い主にとって精神的なかなりのダメージになる。それが安全確保が不十分だったための死亡であれば、なおさらだ。
運航途上でのペットの死について責任回避ではなく、ペットに対しても責任を持つ、ペットにもやさしい航空会社になってくれればと思う。
いずれにしても、(1)ペットを旅行に一緒に連れて行くことの是非と、(2)飛行機内にペットを持ち込む場合の、取り扱い方は、別の問題であることは指摘しておきたい。
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仕事が多忙なため、承認と返信が遅くなりました。
それは論点が違うと思いますよ。
コメント欄では長々と書けないので、新しいエントリとして続編記事を書きます。
しばらくお待ちください。
考え方の違いというより、知識の差でしょう。普段から生き物というものについて考えを巡らしているかどうか。
ペットを日々、恒常的環境において暮らしているとペットが非常に脆い生物の1個体に過ぎないという現実を忘れがちです。死は自然現象として起きうる。そこに責めるべき対象は無いこともある。
それは人間という体についても同じことが言えますが、例えば病院で手術を受けたけど不幸にして亡くなってしまったという場合、病院側に手落ちが無くてもそういうことは起こりうるわけです。その場合、患者としては病院を責めるでしょう。結果責任として。
しかし、そういう責め方をしてしまうと、病院は怖くて手術を受けるのを止めざるをえなくなってしまいます。実際それで産婦人科医療は後退しました。産婦人科医不足の原因です。
サービス業は対価としてお金をもらうけれど、だからといって、どこまでも結果責任を取れと考えるのは間違いなのです。
世の中はお互い様。商売でワンちゃんを預かっているのではなくて、お客さんの便宜のため、社会のためにリスクテイクしていると考えられませんか?
そうみんなが考えることによって、コストも下がりますし、サービスも拡大します。
ANA側の瑕疵を推論できる何かがこのケースでありましたっけ?それがあるなら私の言っていることは該当しないと思いますが。
>それを「大きく書いてない」などと、そんなところを責めるのですか?
そこが重要なんですよ。
そうでなければ、「大切なペットを預かるサービス」などと宣伝してはいかんのです。
介助犬は客室内で人間と同様の安全な環境にいられます。
訓練されているかどうかの違いはありますが、「家族同様のペット」というのなら、家族と一緒に乗せればいいんですよ。
それができないのであれば、ペットは乗せられない規則にすれば良いだけ。
どうやら、根本的なところで考えかたが違うようなので、平行線ですね。
死んでしまうような環境とはANA側は考えていないということですよ。死んだのは結果論なのです。通常は死なないであろう環境で移送を行っていても、生き物はあっけなく死ぬこともある。
死を理解するというより、生物というものの脆さをわかっていない。機械の故障は理屈で原因を突き止められるかもしれないが、生物はまだ未知の領域が大きすぎる。
「ちゃんと管理していれば死なないはずだ。だから死んだというならそれはANAがちゃんと管理していなかったからだ。」
などと考えは誤り。
命の保証など、そんなもの書くまでもなく「できっこない」でしょう?そんなことは常識だと私は考えます。人に言われなければわからないようなことでしょうか。
それを「大きく書いてない」などと、そんなところを責めるのですか?
死を理解することと、死んでしまうような環境に放り込むこととは別問題ですよ。
航空会社の、ペットに関する告知ページを見たことがありますか?
「ANAでは家族の一員である大切なペットとのご旅行をお手伝いする「ペットらくのりサービス」を提供しています」
というような文言が書かれています。
しかし、「命の保証はしません」とはどこにも書いてないのですよ。健康を害する場合があるとは書いていますが、それでは不十分ですね。
赤字で目立つように「命の保証はしません」と書いておくべきなんです。
それでも預けるのであれば、死んでもしょうがないと覚悟して乗せられるかもしれません。
命あるものは必ずいつかは死ぬ。病気だろうとそうでなかろうと。
それは飛行中かもしれないし、駐機場にいるときかもしれない。
生き物を預かる場合、どんなに注意しても、「死なせない」ことはできない。死に必ず原因を求める風潮があるが、それは死を理解していない。
免責の文言はそういったことを前提にしている。責任逃れではない。生き物は死ぬ。あっけなく死ぬ。機械の故障と同列には考えてはいけない。過失が全くなくても、どんなに注意しても、生き物は死ぬ。熱中症というのは推測であることに注意。
それが理解できていない人間が多すぎる。そういう人はそもそも動物を預けてはいけない。
もっと言えば、世の中がそういうレベルの理解度なのだから、航空会社はペットを預からなければいいのだ。本来はそうしたいはずだ。そこを顧客のためにと善意でリスクを取って預かってくれているのだ。そこをはき違えてはいけない。