【レビュー】Netflixオリジナルドラマ「AWAY」

遅ればせながら、「AWAY」を一気見した。
火星への初の有人飛行をドラマにしている。
このテーマは、過去にもいくつか映像化されているが、その多くは火星に着いてからの話がメインだった。
それに対して、「AWAY」は火星に着くまでの過程の話になっている。


2020年9月4日配信だったので、約3週間遅れ。
全10話のシリーズだが、一気見するには時間がかかる。
そのため見るには気合いも必要だ。
面白いと、途中でやめられなくなってしまうからだ。
結果、見るのをやめられなかった(^_^)b
面白かったということだ。

以下、ネタバレあり。

現実の火星への有人計画はあるが、いまのところ実現性は薄い。
解決しなければいけない問題が多いためだ。
イーロン・マスクの唱える火星旅行は、2030年代を目指しているが、そのスケジュールではおそらく無理。

「AWAY」では、月基地から火星行きロケットを打ち上げる。
それが現実的な方法でもある。
地球から打ち上げるには制約が多く、火星まで行ける大きな宇宙船は難しい。
月面上で宇宙船を建造し、燃料や水も月で調達する。
火星旅行には月基地が不可欠といってもいい。

現実世界で恒久的な月基地を建設できるのは、50年やそこらはかかりそうだ。
つまり、月基地が造れなければ火星旅行の可能性も低い。

本作では、現在考えうる火星行きの方法を採用している。
ただ、やや強引な設定の部分もある。

たとえば、火星行きで大きな問題となるのが放射線による被曝だ。
本作では、その遮蔽方法として宇宙船の外壁に水の層をいれる方法を採っている。
しかし、水は中性子線を弱める効果はあるものの、γ(ガンマ)線・X線は遮蔽しない。γ線とX線を遮蔽するには厚い鉄板や鉛の板が必要で、それを装備すると宇宙船はかなり巨大で重くなる。

水はリサイクルで回せるかもしれないが、食料はそうはいかない。
本作では片道8か月の行程になっているので、少なくとも8か月分(240日)の食料を積載しないといけない。
宇宙開発の資料によれば、1日あたり1人2Kgを食べると想定されている。
5人の8か月分の食料は、(5人×2Kg)×240日=2400kg=2.4t……となる。
現在可能な宇宙船では、それだけの食料や水を積載する能力はない。

ツッコミどころはあるものの、本作は次々に起こるトラブルを克服していくサバイバルストーリーになっている。
また、家族愛がテーマにもなっている。
登場人物たちのすれ違う気持ちが克明に描かれ、そこがくどいとの感想もあるようだが、人物描写としてはよく描かれていると思う。

思い出したのは、映画『アポロ13だ。
あれの火星版という感じ。

「AWAY」で感心したのは、無重力の描写。
どうやったんだろう?
おそらく『ゼロ・グラビティ』と同じように、ワイヤーで吊っているのだろうが、それを感じさせない仕上がりになっている。シリーズドラマでここまで完成度が高いのはすごい。

第8話で、印象的なセリフが胸を打った。
絶望的な状況になって、中国人クルー(女性)のルーがいったセリフ

私も生きたい
死ぬのは嫌
でも喜んで死ぬ
希望のために

前人未踏の挑戦をする冒険者、あるいは先駆者の信念だと感じた。
火星に行くことが希望なのか?……というと、意見はいろいろだろうが、人類の可能性を広げるためのチャレンジではある。

宇宙船のクルーは、アメリカ、イギリス、ロシア、中国、インドの混成チームであり、人種も宗教もそれぞれに違う。各国の思惑もあり、政治的パワーバランスが関与してもいる。国家の威信という浅ましい目的が背後にありつつも、当事者の宇宙飛行士たちは「人類の希望」という理想によって命をかける。

その理想は崇高であり、それが人類の未来には必要だ。
しかし、現実の世界は国同士の対立が絶えず、国のエゴが世界を歪めてしまっている。
悲しい現実だ。

私が生きているうちに、火星への有人飛行は実現しないだろう。
それを見たいというのが夢なのだが、夢に終わりそうだ。
本作は、その夢をリアルに見せてくれる。

宇宙に夢を見るものにとって、火星は恋い焦がれる惑星なんだ。
月面着陸は小学生のときに見た。
あの感動と興奮が忘れられない。
次は火星……といわれて、いまだ遠い夢のまま。

ドラマの最終回。
ついに彼らは火星に到着し、火星への着陸を目指す。
絶体絶命のピンチを乗り越えての火星着陸だ。

そして、無事に着陸成功!

涙が溢れてきた。
感動してしまった。
まるで、ほんとうの火星着陸であるかのように。

恥ずかしながら、私は声を上げて号泣してしまった。
涙が溢れてきて、止まらない……。
ドラマでこんなに泣くなんて、いつ以来だろうか?
しばらく泣いていた。

ドラマの感動というのもあるが、私の火星への想いが溢れてきた涙でもあった。
火星に立つ人類を見たい!
その想いがさらに強くなった。

「AWAY」は、最近見た映画・ドラマの中で、最高の作品だと私は評価する。

諌山 裕

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