「富岳」のシミュレーションで布マスクは7~8割の飛沫を防御

スパコン「富岳」による、飛沫シミュレーションの最新版。
マスクの素材による違いでの、飛沫の漏れを示したという。
以下の記事もそうだけど、ネットの反応を見ても、勘違いしている人が多いように思う。

神戸新聞NEXT|総合|手作り布マスク、7~8割の飛沫をキャッチ スパコン「富岳」が計算

新型コロナウイルスの感染拡大防止に役立てるため、スーパーコンピューター「富岳」を使って、せきなどの飛沫経路シミュレーション(予測)をしている理化学研究所(理研)などは24日、中間報告を行った。素材の異なるマスクの性能を比較した結果、手作り布マスクでも、排出ウイルスの7~8割程度を抑え込む飛沫拡散防止効果があるとした。

(中略)

不織布マスクと手作り布マスク(ポリエステル、綿)で、せきをした際の飛沫の広がりを計算して比較した。布マスクのポリエステルはシーツ、綿はTシャツの生地をそれぞれ重ねずに縫製すると想定した。

不織布は性能が高いが、隙間からの漏れは多めという結果に。布マスクは不織布より少し劣るものの、ポリエステルで約8割、綿でも約7割の飛沫をキャッチした。マスクを着けると、飛沫の取り込みが、マスクがない場合の7割程度に抑えられることも分かった。坪倉教授は「マスクはどんな素材でも着けることが大事。自分を守る上でも非常に効果がある」とした。

7〜8割を防御した……と、肯定的に捉えているのだが、逆にいうと、2〜3割は漏れていることになる。
防御率7割でいいのか?

スパコン「富岳」飛沫検証 マスク材質は?教室は?(2020年8月24日) / ANNnewsCHより

漏れ率2〜3割にしても、これを見ると漏れまくりじゃん(^_^)b
「7〜8割を防いでいる」と捉えるか、「2〜3割も漏れている」と捉えるか。

仮定の話として、マスクをしていない状態では、100万個のウイルスを吐き出していたとする。
マスクをすることで、吐き出すウイルスの数が、30万個になった。
という話なわけよ。
これであなたは安心できますか?

追記補足

新型コロナウイルスの感染対策に有用な室内環境に関連する研究事例の紹介(第一版)

咳をした時の液滴を0.35 μmから10 μmまで測定したところ、小さい粒子ほど個数が多く、インフルエンザ患者で咳一回当たり75000個/咳、治癒後は咳一回当たり52000個/咳の粒子が含まれていたという報告もあります。

このデータから、1粒の飛沫に100個のウイルスが乗っていると、750万個のウイルスが吐き出されていることになる

当然、ゼロリスクにはならないわけだけど、7〜8割の防御率では安心できるレベルじゃないと思うのだが?

マスクをしていたのに感染した事例というのは、この2〜3割の漏れで感染したと考えられる。
空気感染するとすれば、2〜3割の漏れは致命的。

効果がないとはいわないが、ウイルスにとっては2〜3割の漏れで十分に感染できる量だろう。相手は0.1㎛の小さなウイルスなんだ。目に見えないというだけでなく、1粒の飛沫に数百〜数千のウイルスが乗っかっている。そのスケール感をイメージしないと、7〜8割も防いでいるから効果的……とは軽々しくいえない。

私はこのシミュレーションを見て、
「マスクは飛沫をある程度防御するが、感染を防ぐ効果には至らない」
と、解釈する。
理由は前述したとおり、漏れ率が多いからだ。

空気感染を加味した感染防止効果を期待するなら、防御率99%以上が必要だろう。
一般的な不織布マスク、布マスク、ウレタンマスクには、そのような性能はない。

 

諌山 裕

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