「気になる最先端テクノロジー10のゆくえ」を読んで(6)の続き。
10選のテクノロジーに入らなかった、その他の未来テクノロジーについての章。
それについての、私のコメントなど。
地球の軌道上にソーラーパネルを展開し、地上に電力を送信するもの。
構想としてはずいぶん前からあるが、なぜ実現できないかというと……
となると、問題点は? まずは、とてつもなく費用がかかる点だ。屋根に設置するような、かなり軽量のソーラーパネルの重さは10キログラムほどなので、宇宙への打ち上げ費用は、今だとパネル1枚あたり20万ドルかかる。
……と、ここでもコストが問題になる。
あと、技術的な問題もある。
送電線をつなぐわけにはいかないから、電波なりレーザーなりで電力を送信することになる。大電力を宇宙空間から地上まで送信する確実な技術が未完成だ。
身近なところでは、スマホの充電をワイヤレスで行えるものがあるが、基本的には同じこと。それを大電力で可能にする技術。電波だとロスも生じるし、超指向性で送信するにしても、ソーラーパネル衛星と地上の受信局の間を、もし飛行機などが通過すると「電子レンジでチンッ」的なことになることもありえる。レーザーだと、ちょっとしたレーザー兵器みたいなものだしね。
現在可能となっているのは「空間伝送型」と呼ばれるもので、送信電力は数100W、送電距離は数Km、送電効率は数%以下で効率が悪い。ソーラーパネル衛星を静止軌道に浮かべると、距離は約3万6000Kmと、とんでもない距離になる。
そんな面倒なことをするより、砂漠にソーラーパネルを設置する方が安上がり。
ちょっとわかりにくいが、アニメファンは攻殻の「義体」を思い浮かべるといい。
人間の体は驚異的な構造になっていて、柔軟性とある程度の強度に耐える剛性をそなえていて、しかもわずかなエネルギーで動作する。
義手や義足などを、現代技術を駆使しても本物の手足のようには再現できない。数十億年かけて進化の試行錯誤の末に到達した肉体の仕組みは、たかだか数百年の科学技術ではかなわないということだ。
攻殻の全身義体は、近未来には実現化できないだろうテクノロジーだね。
現在の超伝導体は極低温にしないと超伝導にならない。リニアモーターカーは超伝導を利用しているが、冷却のための余分な電力を使うことになる。それが室温なら、もっと効率が上がるというわけだ。
ただ、著者は室温超伝導体については将来性は低いと見ているようだ。
本書では触れられていないが、室温超伝導体のもっとも有望な利用方法は、蓄電池としてだろうと思う。発電した電力を、ループ状の超伝導体の中に流しておけば、ロスがほとんどなく溜めておける。
とはいえ、室温で超伝導になる素材は、簡単には見つかりそうにない。
量子コンピュータは次世代のコンピュータとして期待されているし、研究と開発もボチボチ進んでいる。ごく初期的な量子コンピュータは稼働しているし、それをビジネスとしている会社もある。
だがしかし、現時点での量子コンピュータは、真空管を使っていたかつてのENIACみたいなもので、装置として巨大だし、できることには限度があり、コストもかかってお手軽ではない。量子ビットを生成するのに、超伝導体などを使うため、極低温に冷却しなくてはいけないのも、やっかいなところだ。
可能性として期待されているものの、普通のPCやスパコンのように普及するには、室温で動作する超伝導素子やイオントラップが、安価に製造できるような状況にならないと、実用的な量子コンピュータにはならないように思う。
汎用AIを実現するためには、量子コンピュータは必須でもあるので、小型化、簡素化、低コスト化はクリアしなくてはいけない課題だ。
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ということで、「いつになったら宇宙エレベーターで月に行けて、 3Dプリンターで臓器が作れるんだい!?: 気になる最先端テクノロジー10のゆくえ」の、長〜いレビューはここまで。
未来予想という観点から見ると、当たらずとも遠からずではあるが、いくつかは近い将来に実現していることだろう。
10年後だったら、私はまだ生きているかもしれないが、20年後は半々、30年後はほぼ生きてないと思う(^_^)b
50年後、100年後、1000年後……と、未来がどうなっているのか、知りたいものだ。
人類が恒星間宇宙に進出する時代が来る……と信じたい。
転生するなら、そういう時代がいいな。