電車の学習塾広告に出ていた、ある中学入試問題を見て疑問に思った。
その問題……
設問自体に「問題」があるんじゃないか?……と。
【問】
(図)は、ウミガメが食料としているクラゲの写真です。近年、ウミガメが海洋にただよっているビニール袋をクラゲとまちがえて食べてしまい、それが原因で死んでしまうことが問題となっています。ウミガメをそのような被害から救うためにはどのようなビニール袋をつくればよいと思いますか。あなたの考えを50字以内で答えなさい。ただし、ビニール袋として通常使用できる便利さは失わないものとします。
これが出された設問。→ 出題のWEBページ
模範解答は、以下となっている。
解答例
●ウミガメが消化でき、水にはとけずに海水にだけとける物質を使ってビニール袋をつくる。
●ビニール袋に、毒を持っている生物に似せた色や模様を印刷し、クラゲとまちがえないようにする。
など解説
ウミガメを救う手段として、一般的には、海にビニール袋を流出させないための方法や、ビニール袋を使わないようにするための方法が検討されますが、この問題では、「どのようなビニール袋をつくればよいか」が問われています。したがって、仮に海に流出したとしても、ウミガメに被害が及ばないようにするためのビニール袋を考える必要があります。ウミガメがクラゲとまちがえないためにどうすればよいか、ウミガメが食べてしまったとしても害がないようにするためにはどうすればよいか、など、方向性はいくつも考えられるでしょう。
また、「ビニール袋として通常使用できる便利さは失わないものとします」という条件があるため、普段の生活でビニール袋を使う場面を思い浮かべて、自分の考えたアイデアを実現したときに不具合が起こらないかどうかを検討する必要があります。
解答例の1つ目は、生分解プラスチックのことをいっているのだと思われるが、消化できたとしてもそれが生体におよぼす影響は未知数だし、海水に溶けることの有害性の有無も未知数。余計に環境汚染してしまう可能性もある。
解答例の2つ目は、ビニール袋を広げた状態でなければ、印刷したものがなにかはわからない。ぐちゃぐちゃになっていれば、ウミガメには区別がつかなくなるだろう。また、千切れたり、破れたりすれば、やはり判別できなくなる。印刷に使うインクに有害性があれば、環境汚染を拡大することになってしまう。
解答例は、解決策にまったくなっていないのだ。
そもそもプラスチック問題は、ビニール袋の形状をどうこうすることで解決できるものではない。
根本的な問題は、プラスチックを使わないことなんだ。
この設問だと、形を変えればいいんだという誤解を与えてしまう。
そうじゃないだろう。
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この設問に正解があるとすれば……
「先生、この設問自体が間違っています。形を変えてもプラスチック問題は解決しません」
……ということだと思う(笑)
問われていることの本質に、疑問を持つことが大切だ。
科学とは、そこに真理があるはず。