現在の世界経済を牽引している中国ではあるが、それはいつまで続くだろうか?
経済面では、バブルはいずれ弾けるし、成長はいつか止まる。
政治的な面では、独裁はいつか崩れる。

過去の教訓から学ぶなら、好調に見える中国も、そろそろ危険水域に入っているともいえそうだ。
そんなことを予感させる記事。

敗色濃厚の中国不動産業、海外巨大事業もピンチ  WEDGE Infinity(ウェッジ)

「活下去」――。

中国の不動産大手万科(Vanke)の2018年秋季社内経営会議で打ち出されたスローガン。中国語で「生き残る」という意味だ。「活下去」の文字が大きく映し出された会場の写真がネット上で流れていた。

(中略)

そもそも中国経済を支えていたものは何かというと、「労働力」と「不動産」(=土地や資源の取引)なのだ。この2つに亀裂が入れば、まさに生死にかかわる大問題となる。

(中略)

中国人の大量移住によって東南アジア屈指の「中国人街」を作り上げる。その中核プロジェクトとして、マレーシア南部のジョホールバルに中国の大手デベロッパー・碧桂園(Country Garden)が開発を手掛けている「フォレストシティ」(中国語名:森林都市)は、大きなトラブルに見舞われている。

(中略)

基幹産業とは、一国の経済発展の基礎をなす重要産業を指す。ドイツは機械・自動車、イギリスは金融、フランスは文化、スイスは精密機械・観光、日本は電機・自動車、台湾は半導体、シンガポールは金融・フィンテック……。中国の基幹産業は不動産だった。バブルになりやすい不動産の脆弱性に気付いた中国は「脱不動産」を図り、IT産業に力を入れ、サプライチェーンの上流を抑えようと乗り出したわけだが、これも今、米国との貿易戦争の最中にある。

まず、位置関係を把握しておこう。
Googleマップの衛星写真から……

フォレストシティ(2018年7月)2

シンガポールとの国境近くの埋め立て地というのがよくわかる。
海峡をはさんで国が違うとはいえ、シンガポール側の開発具合と、マレーシア側との対比は、違いが明白だね。

Googleマップのストリートビューを使うと、フォレストシティの一部を見ることもできた。

フォレストシティ(2018年7月)

撮影は2018年7月らしい。
まだ建設中の建物ばかりで、「WELCOME HOME」の文字が虚しい。

高層マンションがこれでもかというくらい建設中だが、これが計画のごく一部だというのに驚く。やることがいかにも中国らしいが、いくらなんでも供給過剰だろうと思ってしまう。

中国本土でも似たようなことをやっていて、真新しいゴーストタウンが誕生したりしている。
このフォレストシティも、完成を見ることなくゴーストタウンになりそう。

無茶な計画に、無茶な投資と開発、あげくに途中で投げ出す。
中国国内でやってる手法を、海外でもやってる。
ここでは不動産が問題になっているが、鉄道建設でもゴタゴタが多い。

マレー半島およびシンガポールは、地震がきわめて少ない地域になっている。
そのため、建てるビルに日本のような耐震構造は施されていないという。その分、建設コストは安くなるし、中国お得意の手抜き工事でも誤魔化せる(^_^)。

シンガポール周辺の地震発生状況(2000〜2019年)

スマトラ島のインド洋側は地震多発地帯だが、マレー半島側はプレート境界から離れているため、ほとんど大きな地震は発生していない。
また、スマトラ島が防波堤のような役割にもなっているので、津波の影響も少ないらしい。

赤道に近いため、台風も襲来しない。
自然災害の少ない地域ともされている。
地理的に恵まれた場所ではある。

余談だが、シンガポールから近い赤道直下のリンガ島(インドネシア)は、未来の軌道エレベータの建設地としては適しているかもしれない。可能かどうかは別として(^_^)。

不動産が基幹産業だという中国には、ぜひ100年計画で軌道エレベータを建設して欲しいものだ。軌道エレベータを造れば、宇宙空間まで不動産を拡大できるぞ。
そのためには、共産党の一党独裁を今後も維持しないといけないのだが……。

中国の強みと弱点は、産業と政府(というか共産党)が、持ちつ持たれつの一心同体な点だ。
政府の支配力や影響力が強ければ、産業も強引に突き進めるが、政府が行きづまると産業も傾く。
中国の発表する経済指標が粉飾されていることは、いろいろと指摘されたりしているが、張り子の虎でも虎は虎。共産党が潰れるわけがない……という過信もあるのではないか。

経済の行き詰まりが、共産党の行き詰まりにもなりえる。
広い国土と13.86億人の人口を統制していられるのは、一党独裁だからでもある。その体制が傾くと、中国が分裂する可能性もある。
かつてのソ連がそうだったように。

中国の民主化運動が成功しなかったのは、巨大な国をまとめるのには独裁しかなかったからともいえる。民主化すれば、民族間の対立が顕在化するだろうし、都市部と地方の格差が火種になるだろうし、宗教的な対立も出てくるだろうし、軍部の暴走もあるかもしれない。
それらを抑え込んでいるのが、一党独裁だ。

中国の歴史は、王朝の歴史でもあった。
清が滅んで王朝はなくなったが、共産党という衣を着た王朝ができたようなもの。トップに立つ人間に、巨大な権力が集中するのは変わっていない。
つまり、現在は習近平が帝位についているわけだ。

最後の王朝の清は296年続いた。それ以前は、明が276年、元が97年、宋が319年。
中華人民共和国は、1921年から98年。
元は超えたが、明のように続くかどうか。時代背景を考えると、変化が激しい現在において、200年以上続くのは難しいかもしれない。

中国の民主化を望む声があったりもするが、民主化は中国の不安定化、分裂化を招く可能性がある。
かといって、共産党の支配にも限界がある。
綻びが、破断に至るのは時間の問題……というのが、歴史の教訓。

その時間が、数年後なのか数十年後なのか、それとも百年後なのか。
少なくとも、一党独裁が永遠に続くことはない。

チャイナショック」という言葉がある。
これまで起きたチャイナショックの事例は、比較的小規模なもの。それでも世界が風邪をひいたくらいの影響を及ぼした。

大規模なチャイナショックが起きたら、日本政府がよく使う「リーマン級の…」を超える事態になるかもしれない。
そのリスクが、徐々に高まっているのだと思う。

はたして、中国が崩壊する日は、いつ来るのだろうか?

諌山 裕

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