2018年春のアニメ新番組の数は、過去最高なのではと思うくらい多かった。中には、5分、10分と短い時間のアニメもあるが、それを含めての数だ。
とりあえず、HDDレコーダーの設定で、新番組は自動録画される設定になっているから、第1話は見る。ただし、古いHDDレコーダーのため、同時録画できるチャンネルが2つまでなので、同時刻に3つ以上新番組が重なると、録りもれになる。
第1話を見て、面白いかどうか、続けて録画するかどうかを判別する。
全部を見続けるのは、時間的に不可能なので、絞らなきゃいけない。
それで残るのが、半数〜3分の1くらい。
そんなわけで、現在、(前シーズンからの2シーズン目の作品を含めて)32本のアニメが録画予約に生き残っている。これは使用しているHDDレコーダーで予約設定できるMAXの数だ。今まで、このMAXに達したことはなかったので、今シーズンがいかに多いかの証にもなっている。
妻もアニメ好きだから、妻の好みで残すものもあるし、私の好みで残すものもある。
それでも、「これ、どうでもいいね」と意見が一致する作品は多い。
30分を32本というのは、16時間になる。CMは飛ばすから、厳密には10〜13時間だが。
これだけ見て消化するのもたいへん(笑)。まぁ、それも作品が面白ければ、報われるけどね。第1話以降で、ストーリーの展開が面白くなくなったら、途中から見るのをやめる場合もある。
TOKYO MXで放送されるアニメが多くなっているのだが、それに関した記事。
1クールだけで45作品、TOKYO MXが“アニメ王国”に 担当者に聞く事業戦略 / ORICON NEWS
2018年春の番組改編が行われ、各局で新しいテレビ番組が続々スタート。その中でも、アニメ番組数は今クールでは70を超える。年々増加傾向にあるアニメコンテンツだが、その半数を超える45作品がTOKYO MXで放送されている現状。もはやTOKYO MX=アニメ王国というイメージも定着しつつあるが、なぜここまでアニメ作品を放送するのだろうか。アニメ制作の裏側や局のアニメ戦略など、TOKYO MXアニメ事業局長の尾山仁康氏に話を聞いた。
(中略)
――アニメの制作や準備にはどれくらいかかるのでしょうか。
尾山氏 一般的な製作委員会の例では、1話あたり1700万円~2000万、早い動きが必要になるともっとコストがかかります。それが12話とすると約2億円から 大きいのだと3億円強になります。さらにオープニング・エンディングを作る費用や広告宣伝費など合算してとても大きなコストになります。先ほど申し上げま したがロボット・メカものやバトルシーンが売りの早い動きのアニメは作画には情熱をかけて納得のいく作品に仕上げるまでにさらに加算されていく傾向があり ます。それくらいお金をかけてアニメ作品が作られています。弊社も今期約30作品ほどの制作委員会に参画しています。
(中略)
尾山氏 2018年の春改編ではさらにアニメを強化しました。アニメ作品は本当 にたくさんのスタッフが1枚1枚丁寧に丁寧に制作しています。本当に緻密な作業です。それを世に出すわけです。私は出来るだけ一人でも多くの方に見て頂き たい為にセットインユースの高いゴールデンタイムの22時から放送し継続することを現段階では実施しています。このことがテレビ会社としての役割と理解を 得て、結果アニメ業界全体が盛り上がることが最大の目標です。
これだけたくさんのアニメを制作していたら、さぞかし現場は大変だろうと思う。制作本数が増えたからといって、制作現場の人数が増えているわけではない。相変わらずの低賃金なのだから、有能な人材が集まるわけでもない。
制作本数を増やすのではなく、本数は半分でいいから、1本あたりにかける制作費を倍増して、現場のアニメーターたちが受け取る賃金を上げてやってほしいものだ。
1話あたりの制作費が2000万円というと、大きな金額のよう思われるかもしれないが、人気ドラマで人気俳優を使えば、2〜3人分のギャラでしかない。アニメの場合は、2000万円を製作委員会の会社や声優などの取り分を除いて、数百人のスタッフで分けることになる。末端のアニメーターのひとりの取り分は、1話あたり数千円〜数万円だ。スタッフロールに出てくるスタッフの名前は、役職がついた(あるいはベテラン)アニメーターだけで、大部分の貧民アニメーターの名前は出ない。
Yahoo!ニュースのコメントで、
「アニメ制作会社の多くは中国・韓国が占めてるね」
ということについて。
20〜30年前から、外注先として台湾、韓国、中国などがあった。デジタルになる以前の、セル画の時代。
最近の特長として、下請けとしてではなく、自ら制作をプロデュースする形で日本の制作会社とタッグを組む形が増えてきたこと。そのため、登場人物が中国名で、中国をおもな舞台にしていたりする。とはいえ、日本アニメの影響が濃いというか、真似のレベルから脱していないため、作品のクオリティは低い。
かつては、日本のアニメ業界も、ディズニーの下請けをやっていた。私がアニメーターをやっていた頃にも、ディズニーの下請けはあった。1985〜1990年頃の話だ。
当時は、現在よりもアニメーターの賃金待遇が悪かった時代。動画単価が100円だった。
国内制作のアニメは低予算だったが、ディズニーの下請けはそれよりも高い単価だったのだ。それでもディズニーが下請けに出すのは、アメリカ国内で作るよりも安上がりだったからだ。日本がアジアに下請けに出すのも同じ理由。安い安いといわれる国内のアニメーターの賃金よりも、さらに安い労働力でアニメの国外外注がされていた。ここにも経済格差、貧富の差の問題がある。
ディズニーの下請けとしてやっていた作品に、「ガミー・ベアの冒険」というのがあった。
スタッフロールに日本人の名前は出てこないが、私はかなりのカット数を描いたよ(笑)。日本アニメは動画の枚数を減らすリミテッドアニメといわれるが、ディズニーの映画で描かれるフルアニメに対して、ディズニーのテレビシリーズは、日本式とフルアニメの中間だった。枚数は多いし、動きの指示も細かい。
日本のアニメとは、思想が違うというのを、描いていて実感したね。
「アニメ業界全体が盛り上がることが最大の目標」
その盛り上がりの中に、末端のアニメーターが経済的に潤うことも含めてほしい。
最低賃金にも満たない報酬で働く環境では、いずれ人が集まらなくなり、業界は廃れる。
量より質。
質……クオリティの高い作品を作るためには、優秀な人材が必要であり、優秀な人材が集まるようにするためには相応の収入が得られる環境が必要だ。
誰が好きこのんで年収100万円の仕事に就きたいと思うか?
好きなアニメ業界に飛びこんでみたら、年収は100万円にしかならなかった……というのが実態だ。
アニメーターになると、年収1000万円が当たり前……そんな世界になったら、多くの人材が集まる。
ただし、そのためには制作費が2000万円(1話あたり)では不可能。かといって、制作費が10倍になるのも不可能。制作本数を半分にして、制作費を倍増するくらいが現実的なのだろう。現在の動画単価は200円らしいが、それを400円にするだけでも、アニメーターの経済的環境はいくぶん改善する。
いずれにしても、70本は多すぎ!
テレビドラマが70本も作られることはないわけで、アニメがいかに安上がりな番組になっているかを証明しているようなもの。
アニメの社会的(経済的)地位向上は、まだまだなのだな……と、残念な気持ちになる。