Categories: 政治・社会

日本をどんな国にしたいか?…について

 日経ビジネスオンラインで、「日本をどんな国にしたいですか」という問いかけをしている。
 提言のひとつにしたいとの意向なのだが……

何だったんですか?政権交代って:日経ビジネスオンライン

日本をどんな国にしたいですか

 しからば、どうであろう。日経ビジネスオンラインの誌上で声をまとめて、政治家に届けてみたいと思うのである。これは、提案である。「吉田鈴香の『世界の中のニッポン』」で、広く読者から意見を募りたい。

1. 日本をどんな国にしたいですか(つまりビジョン)、
2. そのために何にまず重点を置くことがいいと思いますか(つまり政策の優先順位)、
3. そして何をすればいいと思いますか(施策)
4. 各施策にどれ位の負担ができますか(税負担)
5. 何から打破すべきと思いますか(改革の工程)

 政治家や政府が国民に対して、「これでどうだ」というトップダウンの発想ではなく、国民から「こうしてほしい」というボトムアップの意見を……ということらしい。

 コメント欄のユーザーからの意見を見てみたが……
 う~む、やっぱり抽象的な意見が多い。
 これは、なかなか難しい問題だ。

 一番難しいのは「日本をどんな国にしたいですか(つまりビジョン)」という設問だろう。
 そもそも「ビジョン」とはなんだろう?
 たとえば……

 自由で豊かで平和な国

 というのが、ビジョンだろうか?
 日本に限らず、どこの国の人たちでも、そういう願望はあるだろう。特に、政情不安の国では切実な問題だ。
 例にあげた言葉が、ビジョンというには漠然としすぎているのは、「自由」「豊か」「平和」という概念が、他者との比較の上で語られるものだからだ。
 中国と比べれば、これらは達成されているといえる。
 アメリカと比べれば、自由と豊かさでは足りないかもしれないが、戦争に直接は関与していないから平和ではあるといえる。
 どの程度まで達成すれば、ビジョンが実現したといえるのか、比べる相手次第なのだ。

 おそらく、比較対象が必要な概念は、ビジョンとするには不適切なのだろう。

 話を個人レベルにすれば、ビジョンとは目標と言い換えられる。
 野球選手になりたい、歌手になりたい、学校の先生になりたい、会社の社長になりたい……など、自分の将来像を描く。
 それは他者との比較ではなく、自身が望む具体的な将来像だ。だから、達成するために、なにをどうするかといった具体的な方策も見いだしやすい。

 かつて、敗戦し焼け野原になった日本には、具体的な目標=ビジョンがあった。
 街を再建し、産業を起こし、食べていくだけの経済力をつけ、欧米に追いつけ追い越せ……と。
 高度成長時代は、そういう目標を達成していく過程だった。
 その達成のピークが、バブル時代だったともいえる。
 今さら所得倍増などといっても、現実味がない。経済成長ありきの将来像は描きにくくなっている。

 壮大すぎるビジョンは、響きはいいが絵空事に聞こえる。
 かといって、目先の問題を解決するようなビジョンでは、ビジョンとはいえないかもしれない。
 国家としてのビジョンを立てにくい時代なのだと思う。

 低炭素社会の実現……などということもいわれるが、理念としてはわからないでもないが、それがどんな未来を実現し、私たちの生活がどうなるのかのイメージがわかない。
 不況、不況といわれ、巨額の赤字を抱えた国家財政だが、国が滅びるような切迫感はない。格差社会が広がっているとはいえ、内戦や貧困にあえぐ国に比べれば、まだまだ豊かな国だ。
 欲を言えばきりがないが、そこそこ満足できる社会。政治が迷走していても、日常生活にさほど影響はない。
 不満はあっても、大規模なデモやクーデターが起こるわけでもない。
 政権交代は起きたが、イデオロギー的に変わったわけでもない。
 学校の席替えをした程度の変化だ。
 今まで、日当たりのいい窓際に座っていた人たちが、廊下側の人たちと入れ替わっただけなのだ。

 経営に行き詰まった企業を再建するとき、コストカットのために人員削減をする。
 それは人を放り出す、捨てることだ。
 君たちはいらない……と。
 カットされた人たちのことなんて、知ったこっちゃないというわけだ。
 だが、国を再建するのに、国民の削減はできない。面倒を見きれないからと、外国に放り出すわけにもいかない。かつて、移民を奨励して放り出したことはあったが、その手は現代では使えない。

 ビジョンには、ポジティブなものとネガティブなものがある。
 人々が求めるのは、ポジティブな方だ。
 つまり、欲求を満たしてくれる、メリットのあるもの。
 その欲求とはなにか?
 バブル時代の再来なのか、それとも別のものか?
 少なくとも、経済的になんとかしたいというのがあるのは事実で、今よりももっと豊かになることが、必要条件ではあるのだろう。

 世界の富は有限である。
 富のパイの大きさを大きくしない限り、日本が今以上に豊かになれば、どこかの国が富を奪われることになる。
 経済成長をし続けなければならない「ビジョン」に、明るい未来があるのだろうか?
 なかなか難しい問題だと思う。

諌山 裕

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