あるテーマについての調査に基づく記事はよくあるが、その調査データの読み方には疑問を抱くものも少なくない。

以下も、その1つ。

「非正規社員ほど結婚難しい 収入不安定、男性は「正規」の2分の1」:イザ!

正規雇用者が結婚する割合は、非正規雇用者に比べて、男性は約2倍、女性も約1.4倍高かった。所得が高くなるほど、結婚する人の割合も増加する傾向にあり、雇用や収入が不安定な非正規雇用者は、男女ともに結婚しづらい現状が浮かび上がった。

たしかに、これだけのデータを見ると……

非正規社員(年収が低い人)は、結婚率が低い

という読み方もできる。
だが、ちょっと待て。
そもそも前提条件が偏ってないか?

まず、年収別の階層データというのがある。
年収階層分布図2008-年収ラボより。

年収階層別データ

そして、記事に出てくる「年収別にみた結婚の割合」が以下。

年収別にみた結婚の割合

注目して欲しいのは、男性の方のグラフ。
「年収階層別」のグラフと、「年収別にみた結婚の割合」のグラフは、ほぼ連動した増減になっている。

各年収階層の人口分布がそのまま結婚率の人口分布に反映されているわけだ。
つまり、当然の結果であって、年収が低いから結婚率が低いという唯一無二の因果関係として成立しないのだ。
これは恣意的、あるいはミスリードだろう。

女性の方の結婚率が、ほぼ横ばいなのは、相手の男性次第で年収が低くても結婚に影響しないことの現れだと思われる。

また、別の要因も考えられる。
年収ではなく、学歴で調査したらどうなるか?
学歴でも学校別では? 有名大学とそうでないところなど。
あるいは居住地域では?
年収が同程度でも、年齢が違ったら?

ようするに、前提条件が変われば、データの読み方も違ってくるということ。
想像するに、有名大学を出ていれば、正社員になり高収入を得る可能性は高くなる。さらに大都市圏に住んでいれば、結婚のチャンスは多いかもしれない。年齢も、40代の独身よりも20代の独身の方が結婚しやすいだろう。

記事は調査データの一部を紹介しているだけなのかもしれないが、結論として「非正規社員は結婚しにくい」とするのなら、他の可能性を否定できるくらいの根拠をデータとして示さなくてはならない。
そのへんが記事として不完全・不正確である。

諌山 裕