『勝間さんと香山さんが唱える幸せの話』
……という記事があった。

経済評論家の勝間和代さんと、精神科医の香山リカさん。
対極にあるようなふたりの書いた本が売れているらしい。
幸せになるためのハウツー本……ということなのだが……

カツマーとカヤマー新・幸福論(AERA) – Yahoo!ニュース

 真逆に見える「勝間的なもの」と「香山的なもの」が、今の時代に、両方必要とされている。それだけ「ふつうの幸せ」を手に入れるのは難しいということだろう。
だが、勝間本と香山本に通底するのは、実は同じ価値観だと指摘するのは、ゼロ年代の論客の一人、宇野常寛さん(30)だ。
「どちらも、流動性のある自由競争社会でサバイブすることが勝ちで、サバイブできなければ負けという価値観に基づいて、生きる術を示している。勝った人にとっては勝間本が、負けた人にとっては香山本がサプリメントになっているだけに見える。これからは、その価値観自体から抜け出して、自分で世の中との距離感を探って、ライフスタイルをデザインしていくしかないのではないでしょうか」

著作は読んでないので、記事からの類推でしかないのだが。

というか、そもそもそういうハウツー本というか啓発本には興味がわかない。そういう類の本を読んで、金持ちになれるとか、結婚できるとか、幸せになれるとか、そういう発想そのものが眉唾な気がする。

その本で多くの人の問題が解決するのなら、どんな経済対策や社会保障対策よりも、低コストで効果的だってことになってしまう。
現在の不況を乗り切るためには、勝間本を読めばいい。
幸せな結婚をしたいのなら香山本を読めばいい。


インディでいこう!




しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール (幻冬舎新書)

たかが1000円そこそこで、日本は景気回復するし、幸せなカップルがあふれかえる。少子化問題も解決できるかもしれない。
ハッピーハッピーである。

こんなに簡単なら、鳩山政権はこの2冊を、全国民に無償で配布して読ませればいい。1000円×1億人=1000億円程度の費用で日本は安泰だ。

眉唾だと思うのは、数あるダイエット本やダイエット方法と同じで、成功する人は一握りだということ。だからこそ、次から次にダイエットブームが訪れる。
勝間本と香山本で救われ、それなりに目標を達成できた人もいるのだろう。問題は、本を読んだ人のうち、何割が成功したかだ。
1割? 2割? 5割ということはなかろう。勝間本は累計200万部売れたそうだが、200万人が成功したわけでもないだろう。

そもそもベストセラーに食いつくという発想そのものが、前提条件として問題があるように思う。
人それぞれに環境や能力は違うし、成功や幸せを手に入れるのに万能の方法などあるはずがない。

十人十色というが、幸福も十人十色、同じ色の幸福などありはしない。誰かの真似をしても、所詮真似でしかない。サイズの合わない靴を履くようなものだ。靴擦れができたからと、足の方を削るバカはいない。靴の方を変えるのだ。

「幸せ」とはなんなのか?
その考え方が問題なのだろう。
目標を達成する、欲求を満たす、満足感を得る、お金がたくさんある、結婚する……それらは幸せであるための要件の一部ではある。

だが、幸せのための何カ条かを並べたところで、それはスペックの一例にすぎない。これだけあれば幸せというわけでもない。
まるで「幸せ」を車の性能のように考え、馬力がいくら、排気量がいくら、ハイブリッドがどのくらい、大きさがどのくらい、価格がいくら……と、並べ立てているようだ。

性能のいい「幸せ」というのもあるかもしれない。経済的に苦しいよりは裕福な方がいい。なんだかんだいっても、お金がないとなにもできないし、生活もできない。お金で幸せの一部が買える……というのは、悲しいかな現実でもある。

私自身についていえば……。
たぶん、今は幸せだと思う。

決して裕福ではないし、世間的な平均に比べれば所得水準は低い。
仕事にやりがいがあるかというと……、じつはそれはあまり感じていない。仕事はまじめにやるけれども、生活のためと割り切っている。
それでも、楽しいことはある。

趣味に没頭して、夢中になることがある。一文の得にもならないことに時間と小遣いをつぎ込んでいるわけだが、熱中できるものがあるから、仕事も頑張れる。
また、妻と猫たちがいる。一緒に生きていく家族だ。
孤独ではないことが、生きる支えになる。

がむしゃらに頑張っているわけではないが、そこそこに収入があり、そこそこの生活ができて、のほほんと過ごせる時間がある。
それが幸せだと思えるのは、どん底の貧乏を経験したからでもある。アニメーター時代の話は度々書いているが、年収が100万円にも満たなかったときは、経済的にも精神的にも辛かった。

だが、その頃に比べれば、今の生活はずいぶんマシなのだ。
「あの頃よりはいい」

幸せというのは反対の「不幸」との比較だ。
自分の中の不幸の基準があれば、それを上回っていれば程度の差はあれ「幸福」なのだと思える。

大きな目標があるわけではない。趣味として、面白いSF小説が書きたいとか、最近はまっている楽曲作りで、いい曲を作りたいとか、そんなささやかな楽しみだ。
そして、妻と猫たちと、のんびり暮らしたい。

 のほほんと生きる。

それでいいんだと思える、今日この頃である。

諌山 裕

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