新しいビジネスモデルとして、期待と注目を集めていた「Web 2.0」
 しかし、集客はするものの、収益を上げるほど成功した事例は少ないようだ。
 それに関連した記事を、続けて3本、読んだ。

Web 2.0のジレンマ – SourceForge.JP Magazine

私は収益源をインターネット広告に頼るというビジネスモデルは持続可能ではないと見ている。すなわち、コンテンツは無料で提供して広告で稼ぐというのが基本の、いわゆるWeb 2.0ビジネスの大半はそう続くものではない

IT企業のレイオフ状況と、「Web2.0型無料経済は消滅」予測 | WIRED VISION

「何でも無料であるべき」という風潮を嫌っていると公言してきたジャーナリスト、Andrew Keen氏は、無償の労働力やクラウドソーシング[企業などがインターネットを利用して不特定多数の人にアウトソーシングすること]をあてにして事業を継続してきたウェブ企業はショック状態にあると指摘する。

「Web2.0」ビジネスって結局、ぜんぜん儲からないの?(R25) – Yahoo!ニュース

だが、Web2.0サービスが広まったにもかかわらず、「Web2.0ビジネス」はごく一部を除いて儲かっていないらしい。そのものズバリな社名を冠した「株式会社WEB2.0」が“サービスの収益化が困難”として解散を発表したのも印象的だが、500万人以上のユーザー数を誇る「ニコニコ動画」ですら、黒字に至っていないというから驚きだ。

 「無料」であることで、集客はするけれども、収益にはつながらない。
 当然といえば当然の結果ではある。
 「場」を提供するだけということでは、広場や公園と似ている。公園で待ち合わせをしたり、デートしたり、歌を歌ったり、演説をするのは勝手だが、公園そのものが儲かるわけではない。公園でお金を払うとしたら、縁日で出店が出たときとか、コンサートが開かれたりしたときだけだろう。
 Web 2.0は、広告で収益を上げようとしているが、公園に広告を出しても効果のほどは微々たるものだ。公園でなにかを売るのならもっと明確だが、Web 2.0はなにかを売っているわけでもない。
 「場」も無料「コンテンツ」も無料では、集客人数と収益が連動しないのは当たり前である。

 「ニコニコ動画」のユーザーの500万人が、すべて有料の会員なら収益はもっと上がるだろう。仮に月額100円としても、毎月5億円の売り上げだ。その可能性をあえて捨てて、広告費だけに頼るのは無理な気がする。不景気になればなるほど、広告費は抑制されるから、広告そのものも少なくなっていく。
 とはいえ、有料では500万人は集まらないともいえる。

 ネットは広大な「広場」だ。
 自由であると同時に無秩序でもある。それは整備されていない、雑草が生い茂った広場にたとえられる。玉石混淆といえば聞こえはいいが、コンテンツの品質が保証されていない市場なのだと思う。
 収益をもたらす市場にするためには、ある程度の品質保証が必要だろう。つまり、整備された広場や街にするということ。

 ネットを街にたとえると、道路や電車、場所としての立地といったインフラがネット環境に相当する。街には様々なお店が建ち並び、食事したり買い物したりする。
 ネットは無料と思っているが、じつは電気代や通信費はかかっている。電車代やガソリン代がかかるのと同じことだ。だが、そのことはあまり意識しない。
 ネットのコンテンツが無料になったのは、料金を徴収する効率的なシステムがなかったからだろう。
 アマチュアによるコンテンツということでは、コミケなどの同人誌即売は古くからあったが、対面販売による現金の受け渡しであったため、アマチュアであっても有料であった。コミケに行くということは、本を買いに行くという消費することを楽しみにする目的があった。コミケは市場システムとして、最初から成立していたのだ。
 だが、ネットでは100円、200円といった少額決済を個人がするのは困難な環境だ。料金が取れないから無料という、環境の不備から無料のコンテンツが主流になった。
 言い換えれば、ネット環境は未成熟だともいえる。

 新宿や渋谷に遊びに行って、そこにあるすべての店舗が無料だったらどうだろう。
 飲み食いしたり、映画を見たり、ボーリングしたりがすべて無料で、お店は広告費で運営している……と、そんなことが不可能なことは明白だ。
 新宿駅の一日平均乗降者数は346万人だという。それらの人々が、どこかのお店に入ればいくらかのお金を使っていく。そのことで店(=コンテンツ)が成り立っている。ウインドウショッピングといった楽しみ方もあるが、まったく使わないということは少ないだろう。ちょっと一休みと喫茶店に入ることだってあるからだ。
 街や商品を見るのは無料だが、本当に楽しむためにはお金を使う。それが経済でもある。346万人が素通りするだけだったら、街は衰退する。
 ネットにはそうした基本的な市場システムが成り立っていない。

 Web 2.0は無料で集客するが、結局素通りするだけでお金を使わない。
 廃れるのも道理だ。
 ページを1ページ見るごとに、1円でも課金できれば、ユーザー数が増え、ページビューが増えるほどに収益は上がるが、そんな少額決済を効率的に徴収するシステムがない。1円を払うために、いちいちクレジットカード番号を入力するだけでも面倒である。
 逆に言えば、ネットを利用するユーザーにとっては無料で便利なものだが、ネットでビジネスをする人たちにとっては料金を取りにくい不便な環境でもある。

 今後、無料の無法地帯と、有料の整備された環境と、棲み分けが必要になってくるのかもしれない。

諌山 裕

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