Netflixで配信されている「地球外少年少女」の全6話を一気見した。
以下、感想とツッコミ(^_^)
ネタバレありなので、未見の方は注意。

名作の「電脳コイル」を作った監督なので、その世界観には共通したものがある。
物語内の時間経過は、半日(12時間)くらいだと思われる。
映画としても前後編で公開されているようだが、6話を一気見した方がいいかな。

監督自身がインタビューで語っていたが、

「地球外少年少女」磯光雄監督「未知の先にある変化はおもしろい」宇宙を舞台にアニメを作る理由。「電脳コイル」との共通点も【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

日常ものアニメが数多く作られている今だからこそ、真正面から宇宙を描きたいと考えていた磯監督。「宇宙を舞台にした作品を作らなければならない」と熱く語る言葉には、アニメそのものに抱く希望や、未来への願いが詰まっていた。
というわけで、久々の近未来宇宙SFアニメとなった。

ここで元JAXA専門家の野田篤司氏に登場してもらって、「ここは間違っている」とツッコミを入れて欲しいところ(^_^)

物語の背景には、昨今の環境問題が反映されている。
人間を超える知能を獲得したAIが、種としての人類を守るために人口の約3割を減らさなければいけないとの結論を出して、巨大な彗星を地球に落下させる……という展開。
そして、たまたま日本の宇宙ホテル「あんしん」に居合わせた子供たちが、サバイバルを繰り広げる。その顛末の物語だ。

宇宙ホテルの管理と運用はAIが担ってるとはいえ、人間のクルーが5人というのは少なすぎでは?
AIとロボットまかせというのはわかるが、宇宙ホテルの大きさに対して人間の数が少ないので、スケール感があまり感じられないんだよね。人数が多くなると描写が面倒になるとは思うが。

作品としては、テンポが良く、スリリングな展開もあって、それなりに楽しめる。
ただ、終盤になって超AIの「セカンドセブン」が神がかった発言をするようになると、個人的にはちょっとがっかり。
というのは、人間を超越した知能が、神を演じるような愚かな思考(計算)をするとは思えないからだ。
神の概念は、人間の愚かさの象徴なんだ。
神に祈り、神に救いを求め、神に選択を委ねる……そうすることで、責任を転嫁し思考を停止するのが宗教の洗脳だともいえる。
AIが目指しているのは、そこなのか?

主人公の相模登矢と七瀬・Б・心葉は、月(ルナ)生まれの宇宙育ちという設定だが、14歳までずっと低重力もしくは無重力環境で育ったにしては、体格が普通なのは違和感がある。
身長は高くなるだろうし、筋肉量は極端に少なくなるはず。筋肉量は減るが太る可能性も高く、肥満体型になったとしても無重力では体にかかる負荷は小さくて済む。
と、それでは主人公にならないか(^_^)b
説明はなかったが、遺伝子改良されたと解釈しておこう。

彗星の破片が衝突して、穴の空いた宇宙ホテルの各所から空気が漏れる。そこから避難するために、簡易気密服の「ONIQLO」を来てEVA(宇宙船外活動)で隣のモジュールに移動する子供たち。
いやいや、それ無理ゲーでしょ(^_^)b
野田氏じゃなくても、そこはツッコミたくなる。

物語中でも説明されていたが、ONIQLOは簡易な気密服であり、耐久性はない。
宇宙空間で怖いのは、空気の確保だけでなく、温度と放射線だ。
太陽光が当たればプラス120℃、日陰ではマイナス150℃くらいになり、ペラペラのONIQLOでは蒸し焼きになると同時に急速冷凍されてしまいそうだ。たぶん、数分で致死的状況になる。

宇宙ホテルは軌道速度を失い、高度がどんどん下がっていく。
絶望的な状況で脱出する方法として選んだのが、「バンジー」と呼ばれる遊戯施設のカプセルに乗り込み、その遠心力で外側に飛ばすという方法。

あ、それでは助からないと思うよ(^_^)b

バンジーは4Gまで回転速度を上げたところで、ケーブルをぶっちぎって放り出された。切り離したのではなくケーブルを千切ったので、そこでブレーキがかかってしまうが、そこは無視しよう。

4Gの加速度は、約39m/s2
とはいえ、加速し続けているわけではないので、初速が39m/sということになる。

「あんしん」から脱出したときの高度は180kmといっていた。
高度180kmの軌道速度は、約7.796km/s
軌道速度を失って急速に降下しているので、その速度を仮に7.5km/sとしよう。

バンジーのカプセルが、どういう角度で外側に放り出されたかの描写はないので、ここでも仮定として「あんしん」の進行方向に対して90度、つまり地球に対して垂直方向に放り出されたとする。
その速度が39m/s

カプセルも「あんしん」と同じ速度を持っているので、そこに放り出し速度が加算されるが、角度が90度だとベクトルの違い分だけ相殺される。
バンジー作戦で得られるカプセルの速度は、7.500101km/s……となる。(計算は、たぶん合ってると思う;;)
これでは軌道速度にぜんぜん足りなくて、一時的に離れるものの、落下することは免れない。
速攻で救助船が来ない限り、彼らは助からない。

とまぁ、ツッコミどころはあるが、なかなか良いSF作品になっていると思う。

諌山 裕

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