ダイソン球と系外惑星に海の可能性

Dyson sphere

 宇宙関連の興味深い記事を2つ。
 まずは、宇宙文明の建造しうるダイソン球かもしれないという記事。

エイリアンの構造物「ダイソン球」が囁かれる恒星「KIC 8462852」、新観測はさらに科学者を困惑へ | sorae.jp : 宇宙(そら)へのポータルサイト

KIC 8462852はその明るさが不定期、かつ不可思議に変化することが知られています。その変化は通常の惑星の通過にくらべて異様に長く、また暗いものだったからです。そのことから、KIC 8462852はエイリアンが恒星からエネルギーを摂取するための構造物「ダイソン球」が存在するのでは?という推測もあるのです。

 ちなみに、KIC 8462852は地球から1480光年のかなたにある。
 太陽よりは少し大きいが、F型主系列星なのでハビタブルゾーンに岩石惑星があれば、生命存在の可能性はある。
 私たちの太陽は、G2V型の主系列星で、色は金色(黄色)系。F型のスペクトルは、やや紫外線寄りの光が多くなるため色としては白っぽくなる。

 ダイソン球は恒星を取り囲む構造物だが、恒星の直径よりも大きな構造物であるため、とてつもなく巨大だ。超文明の超技術を使えば、そのくらいは可能だろうという想定ではあるが、ひとつの恒星系内にある材料だけで足りるかどうかは疑問。
 たとえば、私たちの太陽系内でダイソン球を造るとなると、水金地火木土天海の全惑星と、全小惑星を材料として使っても足りないかもしれない。どのくらいの大きさにするかにもよるが、ダイソン球の内側を生存環境とするなら、地球の公転軌道の直径が理想ということになる。太陽系の全質量のうち、太陽は99.9%を占めているから、残り0.1%で、薄く造るとしてもあまりに巨大すぎる。
 材料を節約する意味では、ダイソン球よりは「リングワールド」のような、リング状の方がいいかもしれない。

ラリイ・ニーヴン
早川書房
1985-06






 もし、ダイソン球だとしたら面白いが、そんな超文明とはどんなものなのだろう?
 地球人の感覚からすれば、それだけ巨大なものを造るコストは採算が取れそうにもない……と、造る技術があったとしても実現しそうにない。つまり、経済論理が働いていると、ダイソン球は造れない。
 はたして、真相はいかに?

 続いては、太陽系からもっとも近い恒星系にある惑星に、海が存在する可能性の話。

惑星「プロキシマb」に海か、太陽に最も近い恒星系 研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 CNRSの天体物理学者らを含む研究チームは、「プロキシマb(Proxima b)」と命名されたこの惑星の大きさと表面特性を算出し、プロキシマbが地球と同じ「海を持つ惑星」の可能性があるとの結論に至った。

 いつか、探査機がプロキシマbまで飛ぶことはあるかもしれないが、通信に片道4年かかる距離だからね。現在可能な探査機の推進方法だと、ノロノロすぎて到着まで3万年はかかるといわれている。
 超大出力のレーザー推進やバサード・ラムジェットが実現すれば、多少は短縮できるだろうが、いまのところ理論だけの推進方法だ。
 それについての記事が以下。

アルファ・ケンタウリへ20年で到達する宇宙船を射出する計画をホーキング博士らが始動 – GIGAZINE

太陽系に最も近い恒星系はケンタウルス座アルファ星(アルファ・ケンタウリ)で、その距離は4.37光年ほど。換算すると25兆マイル(約40兆2336億km)と、桁が大きすぎてまったくイメージが沸きませんが、太陽と地球との距離(約1億5000km)を1mとしても東京から名古屋まで移動できる距離(約290km)という遠さで、最速のロケットを使っても3万年はかかります。しかし、ロシアの富豪ユーリ・ミルナー氏とスティーヴン・ホーキング博士が、アルファ・ケンタウリまでわずか20年で到達する「宇宙船」を射出する計画を発表しています。

(中略)

こうしたことが可能になったのはミルナー氏が1億ドル(約108億円)という投資を行ったおかげですが、同時に、21世紀の技術進歩のおかげも大きいとのこと

 理論的には可能でも、現実的には難しいのがこのレーザー推進システム。
 ミニサイズの探査機なので、距離が離れるほどに地球から照射するレーザーの照準を合わせるのが難しくなり、同時に探査機に到達するレーザーは弱くなっていく。探査機に焦点を合わせることが困難になり、レーザーの一部しか受け取れなくなるためだ。
 また、地球は自転しているため、24時間、常にレーザーを照射できるわけでもない。
 加えて、20年間レーザーを照射し続けるのも難しい。おそらく莫大な資金が必要なはずで、プロジェクトを維持するための資金が底をつけば、計画は中止になってしまう。1億ドルぽっきりで可能とは思えないのだが……?
 20年後に目的地に到達したとしても、成否がわかるのは通信が届く4年後。ミニ探査機にはブレーキはないので、その間もどんどん地球から離れていく。その分、通信にかかる時間も長くなっていく。せっかく探査したデータを送るのにも、延々と時間がかかる。距離が離れるほどに信号は弱くなっていく……という、おそろしく不確実性の高いバクチみたいな計画。
 やってみる価値はあるが、それだけの資金と労力を20年以上かけられるかどうかだね。

 仮に、自律航行で100年後に到達できる探査機を飛ばしたとして、100年経っても稼働する探査機を作ることも難しい。航行中の大部分はスリープモードにするとしても、極寒の宇宙空間(ほぼ絶対零度に近い)で、星間風の放射線にさらされ続けて、メンテナンスなしで100年後に再起動できるシステムは……現在の技術では不可能に近い。

 いずれにしても、光年単位の距離を短時間で克服する推進方法の実現しないと、恒星間の旅は探査機であっても難しい。
 それが可能となる時代というのは、人類文明(現在はレベル0)がレベル1を超え、レベル2に向かうようになったときだろうね。
 STAR TREKでは24世紀に恒星間航行が可能になっているが、現実の24世紀はそこまでブレークするかどうかは怪しい。
 今はただ、夢見て、想像するだけの世界。
 それがロマンではあるのだが。

諌山 裕

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