ウォール・ストリート・ジャーナルがメタバースについて、手厳しい記事を書いているようだ。
 当ブログのメタバース関連記事で動向を追ってきたので、雲行きが怪しいことは見えていた。熱が冷めつつあるアメリカに対して、日本はまだ楽観的な見通しを立てているみたいなのだが……。

仮想世界「メタバース」に厳しい現実 – WSJ

仮想世界「メタバース」は、大きな話題を呼んでから2年足らずで厳しい現実に直面している。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今週、ウォルト・ディズニーがメタバース戦略を開発していた部門を廃止したと報じた。マイクロソフトは最近、2017年に買収したソーシャル仮想現実(VR)プラットフォームを閉鎖した。メタバースに本腰を入れるべくフェイスブックを「メタ・プラットフォームズ」に改名したマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、先月開いた決算電話会見で人工知能(AI)により重点を置いた。

 一方、ユーザーがアバター(分身)姿で遊べる一部のオンライン世界では、仮想不動産の価格が暴落している。メタバースの土地販売を調査しているウィーメタによると、仮想空間プラットフォーム「Decentraland(ディセントラランド)」の土地の販売価格中央値は、1年前から90%近くも下落している。

 この記事は有料なので、触り部分しか読めない。
 でもまぁ、結論は冒頭に書かれていて、残りはその詳細に触れているのだろう。

 メタバースがうまくいっていないのは、儲け話としてぜんぜん稼げていないというのが一番のポイントだろうね。投資家たちはリターンを欲していたが、「10年はかかる」とかいわれたら、そんなに待てないよ、ということだ。

 コロナ禍の影響で、テレワークやリモート会議が広まりはしたが、3年が経過して、やっぱりリアルで顔を合わせて仕事したいよね、と逆戻りしている風潮がある。テレワークは便利かもしれないが、自宅でひとりで仕事をするのは孤独でもあって、孤立することにもなってしまう。
 デジタルの時代ではあるが、昔の古い機器、たとえばフイルムカメラやアナログレコードなどがプチブームになったりもしている。
 ちょっとしたアナログ回帰になっているように思う。

 仮想不動産なんて、ナンセンスの極みだが、それが一時的に高値を記録したのは、投機対象を探していた強欲な人たちのマネーゲームに過ぎなかったわけだ。メタバースの未来に期待していたのではないだろう。

 アメリカと日本の、メタバースに関する雰囲気が異なるは面白い。取り組み方のベクトルが、ちょっと違うんだよね。もしかしたら、日本はメタバースでガラパゴス的な展開をするかもしれない。活路があるとしたら、そこだ。

 アバターの作り方にも違いがあって、アメリカはディズニー的なちょっとリアルなCGキャラだが、日本はアニメ絵的なキャラ。
 アニメの話でいえば、ディズニーは24コマのフルアニメだったが、日本はコマ数を落としたリミテッドアニメだった。質を落としてもそこそこのものを作っていって、独自のアニメ文化となった。
 同じようなことが、メタバースでも起こっているようにも思う。

 とはいえ、日本のメタバースが儲かる事業になるかどうかは疑問。国内向けだけでは、人口規模からユーザー数は限られるから、そもそもパイの大きさが小さい。
 また、日本が作るメタバースの世界観は日本的な価値観の反映だから、海外には通用しないかもしれない。そこがクールジャパンともいえるが、世界のスタンダードにはならない。

 アメリカの仮想世界ブームの第2弾は、ほぼ鎮火しつつある。AIブームも過去に不発になった歴史があるので、メタバースも技術的な問題をクリアできる第3弾が訪れるまで待つしかなさそう。

 問題は、日本ではどうなるかだね。
 アメリカに追随するのか、独自に進展していくのか。
 はてさて……。

諌山 裕