元従軍慰安婦が、日本が謝罪しなければアメリカで提訴するという。
なぜ、当事者でもないアメリカで提訴するのか疑問なのだが……
韓国の元従軍慰安婦の女性4人と元慰安婦の遺族らが23日午前、京畿道で記者会見を行い、「日本側が7月までに正式に謝罪しなければ、日本の天皇や安倍晋三首相、産経新聞などを相手取り、米サンフランシスコ連邦地裁に賠償金2000万米ドル(約24億7000万円)の支払いを求めて提訴する」と発表した。韓国・世界日報の23日付の報道として、中国・国際在線が同日伝えた。
彼らのいう「正式な謝罪」とは、どういう謝罪なんだろうね。
平成天皇も安倍首相も戦時中の当事者ではない。安倍首相は戦後生まれだから、親世代の話。昭和天皇や戦時中の首相だった、東條英機、小磯国昭、鈴木貫太郎の責任を追及するのならまだわかるが、現天皇、現首相にはなんの責任もない。それでも正式な謝罪とは受け取られないにしても、遺憾の意は表明しているし、歴史問題を全面否定しているわけでもない。
表現が曖昧だというのはある。それは政治的な発言であると同時に、日本的な穏便にことを進めるという文化的な背景もある。そういう意味では、表現方法がグローバルでないとはいえる。
まぁ、早い話、土下座しろということなんだろう。
しかし、仮に安倍首相が土下座しても、次の新しい首相が就任したら、また謝罪しろというに決まっている。これまでがそうだったのだから。とはいえ、土下座の文化も日本的なパフォーマンスなので、韓国には通用しないと思うけど。
首相が代わるたびに、「ふりだしに戻る」の繰り返し。
そもそもこの提訴を、サンフランシスコ連邦地裁に出して、受理されるのかどうか。
アメリカ国内の事件ではないし、アメリカ人やアメリカの会社や政府機関が関与している事案でもない。サンフランシスコ連邦地裁が受理しなければいけない理由が思いつかない。
たとえるなら、「先生に言いつけてやる」的な行動のような気がする。
アメリカは「人権」に敏感だから、人権先進国としては受理はするのかもしれない。建前としては。
しかし、判決を下せる立場なのかは疑問だ。
たとえば、名護市辺野古海域の絶滅危惧種ジュゴンの保全や、普天間飛行場代替基地建設差し止めを求めた「ジュゴン訴訟」の例がある。
この判決では、「ポリティカル・クエスチョン・ドクトリン(PQD)」が適用されて、棄却された。
米ジュゴン訴訟、棄却 連邦地裁「工事中止の権限なし」 – 琉球新報 – 沖縄の新聞、地域のニュース
米サンフランシスコ連邦地裁は……(中略)……エドワード・チェン判事は「この裁判所は、条約上の義務として日本政府と協力して進めようとしている基地建設を禁じる権限を持っていない」と棄却の理由を述べ、被告の米国防総省側の主張を採用した。
(中略)
国防総省は建設計画について、外交や防衛問題には司法が介入できないと米国憲法が定めた「ポリティカル・クエスチョン・ドクトリン(PQD)」の適用事例だと主張し、棄却を求めていた。
くしくも同じサンフランシスコ連邦地裁だ。
慰安婦問題は、被害者と国との問題というより、国と国との政治的な問題になっている。
日本は、日韓基本条約(1965年)で解決済みという立場だが、韓国はそうは思っていない。
このとき、3億ドル(当時1ドル=360円で1080億円)を無償で支払っているが、それを韓国国民に配分しなかったのは、当時の韓国政府の責任だ。3億ドルは現在の価値に換算すると、1兆800億円ほどになるという。
賠償請求するのなら、韓国政府に対してするのが筋ではないだろうか?
政治的な問題になっている慰安婦問題に対しては、ポリティカル・クエスチョン・ドクトリンが適用されるのではと思う。連邦地裁ではあるが、アメリカが日本と韓国に対して裁きを下すことになるわけで、どっちを勝たせてもアメリカには不都合な問題だ。
ただ、裁判をするのなら、事実を解明できるかもしれない。
過去記事の……『「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明』に足りないこと……でも書いたことだが、慰安婦の存在や強制性があったことを否定しているわけではなく、知りたいのはその実態がどうだったのか?……特に、人数の規模の問題は解明して欲しい。その規模のスケールによって、過大に批判されているのだから。
この裁判が有効に行われるのであれば、ベトナム戦争時のベトナム人慰安婦もアメリカで訴訟を起こすべきだね。そうなると、当時の韓国軍だけでなくアメリカ軍も被告になってしまうが。