人の排泄物に、貴金属である金、銀、プラチナが含まれている、という記事なのだが……
時事ドットコム:ヒト排せつ物は宝の山?=金、銀、プラチナ含む-米研究者ら発表
米地質調査所(USGS)の研究チームは、排せつ物の金の含有量が「最低レベルの鉱床と同水準だった」と説明。処理済みの排せつ物からはプラチナや銀も見つかった。別の専門家グループの最近の研究によれば、米国人100万人の排せつ物は1300万ドル(約15億円)相当の金属を含有している可能性がある。(2015/03/24-14:40)
ヤフコメなどの反応を見ると、驚いている人が多かったが、これは別に不思議なことじゃないよ(^_^)。
金、銀、プラチナというと、鉱山にしかないと思いがちだが、鉱山はたまたま多くの量が蓄積していたというだけなんだ。極めて微細な粒子やイオンの形で、地球上のいたるところに金属は存在している。鉱山や鉱石として目に見える形で産出する鉱物は、様々な条件が重なって、集積し、あるものは結晶化して存在する。それを鉱業的に掘り出すのが鉱山だ。
もともとは宇宙の塵だったわけで、地球が形成されたときに、偏在していた金属粒子が固まって、鉄鉱石や金塊となった。質量の重い「金」は、地球形成時に深く沈んだはずで、地表付近よりもマントルに近い深さに多く含まれている。地殻変動にともなって、地底深くから持ち上げられたり、あるいは火山の噴火で溶岩とともに地表近くに上がってくる。それを人間が掘り出している。
塊となる金よりも、金イオンとして海に溶け込んでいる量の方が多い。一説には、地球の全海水中に、50億トンの金が含まれているという。文明開闢以来、人間が採掘した金の総量は、約17万トンだとされているので、見えない形で存在している金が、いかに多いかがわかる。
ちなみに、金、銀、プラチナといった重元素は、超新星爆発で生成されると考えられていたが、近年になって超新星爆発では重元素を生成するエネルギーが足りないとされ、中性子星の合体によって生成されるという説が登場している。
いずれにしても、とてつもなく巨大なエネルギーによって産み出されたものだ。
▼金鉱石の標本(私の鉱物コレクションより)
この標本のように、金の結晶が目視できるのは希で、金鉱山から産出する金は微細な粒子を含む大量の土砂から化学的に溶かして抽出する(青化法)。人力で金を探していた頃の砂金などの大きな塊は、現在ではめったに採れなくなっている。
私の手の中にあるこの金が、遙かな太古に、中性子星の合体によって誕生した……と想像すると、壮大な宇宙の一端に触れているようでワクワクする。それが、鉱物コレクションの楽しみのひとつだ。
上記の記事が注目を集めたのは、排泄物……う●ちから取り出す……という部分だ(^_^)。
金、銀、プラチナは貴金属であることから価値があるわけだが、生物にとって金、銀、プラチナは利用価値のあるミネラルではないので、排出されるか異物として蓄積されるだけだ。海水や水中、あるいは土中にある金の微細な粒子やイオンを、動植物が摂取することで、一種のフィルターのような役目をして、金の濃度をいくぶん増しているのだと思われる。
食物連鎖の頂点に人間がいるわけで、日常的に食べているものから、金などを取り込んでいるのだろう。フィルターの最後が人間なので、食物連鎖の過程で濃縮された金などが多く含まれているのは不思議ではない。
海水から金を取り出すよりも効率としてはいいようなので、う●ちが貴金属の資源になるのかもね(^o^)。