アジアカップは残念な結果になった。
UAE戦を見ていて気になったのは、先発出場した選手達の自信のなさだった。どこか不安げで、おびえているように見えた。先制点を取られて、焦りもあったのだろう。攻めていても決定力が乏しいのは、長年の課題ではあるが、気迫がないというか相手の脅威になっていないように感じられた。
数多くのチャンスを作り、多くのシュートを打っても決められない。決められないから失望感とともにテンションが下がり、ミスを誘発する。まるで「シュート入らない症候群」が伝染するかのようだ。慎重になるあまり、シュートではなくパスを選択してしまう。負の連鎖に陥り、それがチーム全体に波及する。
敵は相手チームではなく、自分たちの自信のなさにあった。
W杯ブラジル大会の惨敗で崩れてしまった自信が、まだ尾を引いているように思う。試合後の選手達のインタビューを聞いていると、謙虚ではあるが消極的な発言が多いのも気になる。本田を始め、最近は強気の発言がほとんど聞かれなくなった。強気の発言をすると、メディアに叩かれるから謙虚な発言にとどめているかもしれないが、謙虚というより少々卑屈ですらある。そこまでネガティブにならなくてもいいと思うのだが、W杯での惨敗が心理的な重しになっているのだろう。
喪失した自信を、いかにして取り戻すか?
それには「勝つ」しかない。少なくともFIFAランキングで下位のチームには絶対勝つ、という意識は必要だ。現在は、それすらも危うい。
W杯ロシア大会の予選が6月から始まるが、予選は全勝するくらいの気持ちでいかないと、その先の展望が開けない。
日本チームの長所は、チームとしての連帯感や調和だが、調子のいいときはプラスに働くものの、調子が悪いときは選手全員が連動して悪くなってしまう。歯車が狂ってしまうと、ますます狂いが増幅する。
先制点を取られて逆転勝ちをした試合は、過去を遡っても少ない。逆転勝ちができるときは、チームとしての調子がよく、自信を持って戦っているときだ。
内容がよくても負けてしまうと、自信にはつながらない。逆に、内容が悪くても勝てれば自信につながる。勝っても負けても選手インタビューでは、いろいろと反省点を挙げる。それは謙虚で正直ではあるのだが、完璧な選手はいないし、完璧なサッカーなどできないのだから、勝ったときくらい勝利を誇ってもいい。勝利しても反省点から口にするという日本的な姿勢にも、問題があるように思う。
昨晩、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、ラグビー日本代表監督のエディー・ジョーンズ氏を取り上げていた。
エディー氏の取り組み方は、サッカー日本代表にも通じるのではないかと思った。サッカーとラグビーでは、似て非なるものではあるが、体格的・精神的な弱点は共通している。エディー氏の指導のしかたは、かつてのオシム氏に似ている。日本人の長所を生かして伸ばすという点において。
アギーレ監督を解任するかどうか、後任の監督には誰がいいのか……といったことが騒がれているが、望まれる監督はエディー氏やオシム氏のような監督だろう。あるスポーツ紙の報道では、前ブラジル監督のスコラーリ氏の名前が挙がっていたが、タレント揃いのチームならまだしも、日本代表チームでは選手を活かしきれない気がする。
2018年W杯ロシア大会を目指すのは、当然の目標ではあるが、もっと先を見据えて2022年大会で8強以上に入れるようなチーム作りをした方がいいのではないか。2022年大会はカタールでの開催が予定されているものの、決定時の疑惑や気候の問題から、ほんとうに開催できるかどうかは不透明。
2022年を目標に、7年間をひとりの監督に託すくらいの覚悟が必要な気がする。そういう方向性ならば、日本人監督でもいいのではないか。岡田氏以外の日本人監督はW杯未経験なわけで、まずロシア大会でW杯を経験させ、2022年で8強を目指すという筋書き。
いずれにしても、選手の若返りは必要だ。
かつては10代でA代表入りした選手もいたが、最近はほとんどいない。ベテランは数人を残して、U23世代を中心にした方がいいね。先行投資だと思って若い世代を起用すれば、2022年には実になると思う。現在20歳の選手であれば、2022年には27歳となり、経験も積んで脂がのった歳になっているはずだ。
若手の中では、柴崎に期待したい。
柴崎岳がUAE戦後にもらした“本音”。取材エリアを素通りしなかったわけ。(1/5) [サッカー日本代表PRESS] – Number Web – ナンバー
2015年1月23日。アジアカップ準々決勝、日本対UAE戦。
思い返しても、シュートを外した後の苦い表情や、眉間に皺を寄せる選手たちの顔ばかりがよみがえる。
だが、ただ一人颯爽とピッチに登場し、冷静にプレーし続けた選手がいた。
柴崎岳。年齢に似合わぬ冷静沈着さはこれまでも語られてきたが、日本がピンチに陥った場面でさえも、彼はその自分らしさを貫いていた。
(中略)
「僕は代表としてはまだ何も成し遂げていないので、これからの展望を話すのは難しいです。ただこの20何年間、日本代表はものすごいスピードで成長してきたと思いますけど、今はある程度我慢する時期に差し掛かっているのかなと考えたりもします。なかなかW杯でも結果が出なかったり、今回の大会でもベスト8で負けてしまった。非常に難しい時期なのかなと思います。」
若いのに、しっかりと先が見えている印象。
遠藤の経験は捨てがたいが、柴崎がこれからは中心になるだろう。若手の台頭をうながすには、若手を起用する必要がある。W杯ブラジル大会経験組は、そこそこ計算できるためアジアカップでも先発として起用したのだろうが、その手がもはや限界であることが今回のアジアカップで露呈した。ベテランは切り札として残し、主要メンバーは若手に一気に切り替えるくらいの荒治療が必要かもね。
それをやると、2014年10月14日の親善試合、ブラジル戦のような結果になるかもしれないが、それを恐れていたら世代交代はできない。
経験はプラスになる場合とマイナスになる場合がある。W杯ブラジル大会経験組は、惨敗の苦い……というより痛い経験をしたが、それがいまだに癒えず、後遺症を残していると思う。ブラジル大会に出ていない若手は、試合をテレビで見ていても、直接的な傷を負ってはいない分だけ影響が少ない。
遠藤、本田、香川をスーパーサブとして起用し、先発は若手主体でいく。苦戦はするだろうが、それでも勝てるチームになっていかないと、ロシア大会での善戦は期待できないと思う。
キャプテンの長谷部は、「若い選手の突き上げ、成長が足りない気がする。そういう意味でもっと若い選手が出てきてほしい」と語っているそうだが、劇的に成長できるのは若いうちだ。27歳以上のベテラン勢は現状を維持するのが精一杯。本田は、なんだかんだいっても一番活躍した選手ではあるが、おそらく今がピーク。ブラジルは若いネイマールが主軸になっていることを考えれば、日本もU23世代が活躍するようにならないと未来は暗い。
アジアカップでの敗退は、啓示であり、転機だ。
監督の進退も問題ではあるが、誰が監督をするにしても、チームの大改造は必須。目先の勝利ではなく、2022年を見据えて欲しい。
最後に、余談だが……
【サッカー】日本代表の進歩は、何歩進んだか……で、古い記事のFIFAランキングに基づく偏差値を参照したが、最新版のFIAFAランキングから偏差値を求めてみた。
▼2015年1月現在のFIAFAランキングデータに基づく、偏差値。 ※表は長いので飛ばしてください(^^;)
獲得ポイント | 国名 | 2015年1月のFIFAランキング | 偏差値 |
1725 | ドイツ | 1 | 84.1807556969 |
1538 | アルゼンチン | 2 | 78.070981556 |
1450 | コロンビア | 3 | 75.1957937249 |
1417 | ベルギー | 4 | 74.1175982883 |
1374 | オランダ | 5 | 72.7126769617 |
1316 | ブラジル | 6 | 70.8176668004 |
1160 | フランス | 7 | 65.720742918 |
1160 | ポルトガル | 7 | 65.720742918 |
1142 | スペイン | 9 | 65.1326363162 |
1135 | ウルグアイ | 10 | 64.9039281933 |
1103 | イタリア | 11 | 63.8584053457 |
1091 | スイス | 12 | 63.4663342778 |
1032 | イングランド | 13 | 61.5386515274 |
1016 | チリ | 14 | 61.0158901036 |
1014 | ルーマニア | 15 | 60.9505449256 |
995 | コスタリカ | 16 | 60.3297657348 |
987 | チェコ共和国 | 17 | 60.0683850229 |
948 | アルジェリア | 18 | 58.7941540523 |
946 | クロアチア | 19 | 58.7288088744 |
913 | メキシコ | 20 | 57.6506134377 |
891 | スロバキア | 21 | 56.9318164799 |
873 | チュニジア | 22 | 56.3437098781 |
863 | オーストリア | 23 | 56.0169839883 |
856 | ギリシャ | 24 | 55.7882758653 |
854 | ウクライナ | 25 | 55.7229306873 |
852 | エクアドル | 26 | 55.6575855094 |
836 | アメリカ合衆国 | 27 | 55.1348240855 |
833 | コートジボワール | 28 | 55.0368063186 |
817 | ボスニア・ヘルツェゴビナ | 29 | 54.5140448947 |
804 | デンマーク | 30 | 54.0893012379 |
789 | ロシア | 31 | 53.5992124031 |
788 | イスラエル | 32 | 53.5665398141 |
761 | アイスランド | 33 | 52.6843799114 |
748 | ウェールズ | 34 | 52.2596362545 |
734 | セネガル | 35 | 51.8022200086 |
729 | スコットランド | 36 | 51.6388570637 |
714 | ガーナ | 37 | 51.1487682289 |
713 | セルビア | 38 | 51.1160956399 |
706 | ギニア | 39 | 50.8873875169 |
693 | カーボベルデ | 40 | 50.4626438601 |
680 | ポーランド | 41 | 50.0379002032 |
665 | カメルーン | 42 | 49.5478113684 |
654 | ナイジェリア | 43 | 49.1884128895 |
646 | スウェーデン | 44 | 48.9270321776 |
632 | ハンガリー | 45 | 48.4696159317 |
622 | スロベニア | 46 | 48.1428900419 |
615 | 北アイルランド | 47 | 47.9141819189 |
604 | トルコ | 48 | 47.55478344 |
603 | マリ | 49 | 47.5221108511 |
594 | ザンビア | 50 | 47.2280575502 |
588 | イラン | 51 | 47.0320220162 |
587 | 南アフリカ | 52 | 46.9993494272 |
565 | ペルー | 53 | 46.2805524695 |
563 | 日本 | 54 | 46.2152072915 |
551 | トリニダード・トバゴ | 55 | 45.8231362236 |
551 | パナマ | 55 | 45.8231362236 |
548 | コンゴ民主共和国 | 57 | 45.7251184567 |
543 | アルバニア | 58 | 45.5617555117 |
537 | モンテネグロ | 59 | 45.3657199778 |
531 | エジプト | 60 | 45.1696844438 |
529 | コンゴ | 61 | 45.1043392659 |
527 | トーゴ | 62 | 45.0389940879 |
527 | ガボン | 62 | 45.0389940879 |
523 | ブルキナファソ | 64 | 44.9083037319 |
519 | アイルランド | 65 | 44.777613376 |
506 | ブルガリア | 66 | 44.3528697191 |
500 | ノルウェー | 67 | 44.1568341852 |
494 | ルワンダ | 68 | 43.9607986512 |
487 | 韓国 | 69 | 43.7320905283 |
468 | フィンランド | 70 | 43.1113113375 |
464 | ウズベキスタン | 71 | 42.9806209816 |
460 | ホンジュラス | 72 | 42.8499306256 |
458 | ハイチ | 73 | 42.7845854476 |
458 | グアテマラ | 73 | 42.7845854476 |
449 | ジャマイカ | 75 | 42.4905321467 |
442 | パラグアイ | 76 | 42.2618240238 |
441 | ウガンダ | 77 | 42.2291514348 |
437 | リビア | 78 | 42.0984610789 |
436 | アルメニア | 79 | 42.0657884899 |
408 | アラブ首長国連邦 | 80 | 41.1509559982 |
404 | アンゴラ | 81 | 41.0202656422 |
393 | モロッコ | 82 | 40.6608671633 |
382 | エストニア | 83 | 40.3014686844 |
375 | ボリビア | 84 | 40.0727605615 |
374 | シエラレオネ | 85 | 40.0400879725 |
372 | キプロス | 86 | 39.9747427946 |
370 | ベネズエラ | 87 | 39.9093976166 |
361 | マラウイ | 88 | 39.6153443157 |
359 | ベナン | 89 | 39.5499991377 |
358 | エルサルバドル | 90 | 39.5173265487 |
355 | リトアニア | 91 | 39.4193087817 |
347 | カタール | 92 | 39.1579280698 |
346 | オマーン | 93 | 39.1252554808 |
346 | ヨルダン | 93 | 39.1252554808 |
344 | アンチグア・バーブーダ | 95 | 39.0599103029 |
339 | ラトビア | 96 | 38.8965473579 |
339 | 中国 | 96 | 38.8965473579 |
332 | モザンビーク | 98 | 38.667839235 |
331 | ベラルーシ | 99 | 38.635166646 |
329 | オーストラリア | 100 | 38.569821468 |
現状、偏差値は約46.2だが、2008年6月のときが約51.1だったのに比べると、約5ポイントダウン。順位が下がっているから当然ではあるが、偏差値が50以上、60に近づくようにならないと、世界との差は埋まらない。
FIFAランキングが何位であるかを問題にするよりも、偏差値を60にいかに近づけるかを目安にした方がいい。
ちなみに、杉山氏が「弱小」とこき下ろしたコスタリカは、偏差値60を超えている(^_^)。いまや、日本より格上だ。
日本の過去最高のFIFAランキングは1998年3月の9位なのだが、当時と現在ではポイントの算出方法が違うので、順位だけでは比較できない。1998年といえば、フランス大会に出た年だ。
そのデータをもとに偏差値を出すと、相対的な比較ができる。
▼1998年3月のFIFAランキングをもとに偏差値を求める。
獲得ポイント | 国名 | 1998年3月のFIFAランキング | 偏差値 |
72 | ブラジル | 1 | 76.5194638841 |
66 | ドイツ | 2 | 70.3783298314 |
62 | チェコ | 3 | 66.284240463 |
61 | メキシコ | 4 | 65.2607181209 |
60 | イングランド | 5 | 64.2371957788 |
60 | オランダ | 6 | 64.2371957788 |
59 | アルゼンチン | 7 | 63.2136734367 |
59 | チリ | 7 | 63.2136734367 |
58 | 日本 | 9 | 62.1901510946 |
58 | ノルウェー | 10 | 62.1901510946 |
58 | モロッコ | 11 | 62.1901510946 |
58 | ユーゴスラビア連邦共和国 | 12 | 62.1901510946 |
58 | イタリア | 13 | 62.1901510946 |
58 | フランス | 14 | 62.1901510946 |
57 | ルーマニア | 15 | 61.1666287524 |
57 | アメリカ合衆国 | 16 | 61.1666287524 |
57 | コロンビア | 17 | 61.1666287524 |
56 | クロアチア | 18 | 60.1431064103 |
56 | ザンビア | 19 | 60.1431064103 |
56 | 南アフリカ | 20 | 60.1431064103 |
計算上は100位までデータを参照しているが、とりあえず20位まで表示。
このときの日本の偏差値は約62.2で、60を超えていた。しかし、現在のFIFAランキングに当てはめてみると、偏差値62.2は12位~13位の間になる。
13位というと、2005年7月に達成している順位だ。2005年はジーコ監督の時代だったが、当時は最強のメンバーだといわれていたのは、あながち間違ってはいなかった。このときの偏差値を同様に求めてみると、約61.14となった。
ポイントの算出方法が違っていても、偏差値で比べるとほぼ同等のレベルなので、相対的な比較をするのに偏差値は有効だと思う。
とりあえず、偏差値60を目指せ!(^_^)