NHKの受信料問題は、多くの国民の不評を買っているといっていいだろう。
 契約は強制加入であり、税金に等しい義務になっている。半世紀前のテレビが大きな影響力を持っていた時代ならまだしも、ネット時代の今日、テレビの立ち位置や意味は大きく変わっている。

 「見たい人だけが料金を払って見ればいい」という、単純明快な論理があるのに、なぜ強制徴収なのか? スクランブルをかければ、料金未徴収問題は解決するのに。
 で、「日本人の半分はNHKを見ていない」というデータがあるという。

「日本人の半分はNHKを見ていない」という衝撃データは何を物語っているか 『NHK受信料の研究』著者が指摘する問題点 | デイリー新潮

有馬哲夫・早稲田大学社会科学総合学術院教授は、新著『NHK受信料の研究』の序章で、ネット時代の現在、受信料を払うことにどういう意味があるのかという根本的な問題を問いかけている。そして、それは結果として国家レベルで見た場合に、文化の発信力を弱めることにつながっている、と主張している。

(中略)

およそ半数の日本人はNHKを“週5分も見ていない” (出典:NHK放送文化研究所の「テレビ・ラジオ視聴の現況 2019年11月全国個人視聴率調査から」)

 日本を見てみよう。第一の問題だが、NHKの放送がほとんど視聴されていない事実は、これまで私は雑誌やネットの記事でもたびたび指摘してきたが、ようやく広く認知されるようになった。NHK放送研究所の「テレビ・ラジオ視聴の現況 2019年11月全国個人視聴率調査から」によれば、NHK総合チャンネルを1週間に5分以上見ている日本人は54.7%だった。1日ではなく、1週間である。

 逆に言えば、残りのおよそ半数の日本人はNHKを週5分も見ていない。BSに関して言えば、二つのチャンネルの1日の平均視聴時間の合計が6分しかなかった。

(中略)

 NHKは受信料を独り占めにする資格があるようなコンテンツを生産し続けているだろうか。ドラマの一部は評価や人気を得ているようだが、あくまでも国内向けのものである。

 全般的に見て世界で勝負できるようなコンテンツは極めて少ない。欧米はもちろん、韓国のコンテンツが世界市場で勝負できている時代にあまりに内向きだ。

 私はけっこうNHKを見ている方だと思う。
 といっても、過去記事でときどき取り上げている海外のドキュメンタリーが多いのだが。
 NHKが制作するドキュメンタリーは、下手な三文芝居があったり、タレントの稚拙なトークがあったりで、バラエティ化していて見るに堪えないものが少なくない。内輪受けというか、日本国内でしか通用しない作りになっていて、それを海外に持っていってもダメだろう。

 最近は、朝ドラを見なくなった。
 個人的には、「エール」と「おかえりモネ」で、朝ドラはピークを迎えたと感じている。その後の作品には、魅力というか面白みが欠けていて、マンネリ感が漂っている。見続けようという気持ちにならないんだよね。

 大河ドラマにも同様の傾向があり、結局、戦国時代(15世紀末〜16世紀末)を舞台にすることに回帰している。切り口は変えていても、信長、秀吉、家康といった歴史上のヒーローを主人公にした方が無難だ。
 ゲームやアニメで、中国の春秋戦国時代(紀元前770年〜紀元前221年)や三国志(180年頃〜280年頃)が度々取り上げられるのも、多くの人が知る歴史ドラマだからだ。

 2024年の大河ドラマは「紫式部」が主人公で、人物についての歴史的資料が乏しい時代だから、ほぼ脚本家の創作になるようだ。“戦なし”の時代劇ということで、愛憎劇と政治的な闘争が見せ場になるらしい。
 最初の数話は見るだろうけど、見続けられるかどうか……。

 過去記事にも書いたように思うが、NHKはスクランブルをかけて料金を払った人だけ見られるチャンネルにすべき。それが有料放送の当たり前の姿だ。
 災害や重大事件が発生したときの緊急放送だけ、スクランブルを解除して誰でも見られるようにすればいい。それで十分に公共放送としての役割は果たせる。

 今のNHKで見る価値があるのは、ドキュメンタリーだけだと思うね。ただし、NHK制作の場合は、バラエティ要素抜きのドキュメンタリーに限る。
 地上波とBSでたくさんのチャンネルを持っているが、BSの1つはドキュメンタリー専門チャンネルでいいのではないかと思う。1つのチャンネルに、ニュース、ドラマ、スポーツ、アニメ、ドキュメンタリーが混在しているのは、多チャンネルを持っていることの利点を活かしていない。

 視聴率が高いといわれる朝ドラだが……

朝ドラ歴代視聴率ランキング

視聴率 タイトル ヒロイン 放送
52.6% おしん 小林綾子
田中裕子
乙羽信子
1983年
47.4% 繭子ひとり 山口果林 1971年
47.3% 藍より青く 真木洋子 1972年
47.2% 鳩子の海 藤田美保子 1974年
46.1% 北の家族 高橋洋子 1973年
45.8% おはなはん 樫山文枝 1966年
45.8% 旅路 横内正
日色ともゑ
1967年
44.9% あしたこそ 藤田弓子 1968年
44.3% 澪つくし 沢口靖子 1985年前期
43.0% おていちゃん 友里千賀子 1978年前期
42.8% マー姉ちゃん 熊谷真実 1979年前期
42.7% 鮎のうた 山咲千里 1979年後期
41.7% はね駒 斉藤由貴 1986年前期
40.2% 心はいつもラムネ色 新藤栄作 1984年後期
40.1% 雲のじゅうたん 浅茅陽子 1976年前期
40.1% 水色の時 大竹しのぶ 1975年前期
39.6% おはようさん 秋野暢子 1975年後期
39.6% なっちゃんの写真館 星野知子 1980年前期
39.3% 都の風 加納みゆき 1986年後期
39.1% ノンちゃんの夢 藤田朋子 1988年前期
39.0% ロマンス 榎木孝明 1984年前期
38.8% よーいドン 藤吉久美子 1982年後期
38.6% 純ちゃんの応援歌 山口智子 1988年後期
38.5% おんなは度胸 泉ピン子
桜井幸子
1992年前期
38.5% 虹を織る 紺野美沙子 1980年後期
38.1% はっさい先生 若村麻由美 1987年後期
38.3% 風見鶏 新井春美
蟇目良
1977年後期
38.0% チョッちゃん 古村比呂 1987年前期
37.9% 南田洋子 1970年
37.8% 青春家族 いしだあゆみ
清水美砂
1989年前期
37.8% 信子とおばあちゃん 大谷直子 1969年
37.2% いちばん星 高瀬春奈
五大路子
1977年前期
37.1% まんさくの花 中村明美 1981年前期
36.9% ひらり 石田ひかり 1992年後期
36.6% 本日も晴天なり 原日出子 1981年後期
36.2% ハイカラさん 手塚理美 1982年前期
35.9% わたしは海 相原友子 1978年後期
35.6% 京、ふたり 山本陽子
畠田理恵
1990年後期
35.2% ええにょぼ 戸田菜穂 1993年前期
35.0% 火の国に 鈴鹿景子 1976年後期
33.9% 凛凛と 田中実 1990年前期
33.8% 和っこの金メダル 渡辺梓 1989年後期
33.6% たまゆら 笠智衆 1965年
33.4% いちばん太鼓 岡野進一郎 1985年後期
31.4% かりん 細川直美 1993年後期
30.2% うず潮 林美智子 1964年
29.1% 君の名は 鈴木京香
倉田てつを
1991年
29.0% ふたりっ子 岩崎ひろみ
菊池麻衣子
1996年後期
28.4% あぐり 田中美里 1997年前期
27.7% 天うらら 須藤理彩 1998年前期
26.6% 甘辛しゃん 佐藤夕美子 1997年後期
26.2% すずらん 遠野凪子 1999年前期
25.5% ぴあの 純名里沙 1994年前期
25.5% ひまわり 松嶋菜々子 1996年前期
24.7% 春よ、来い 安田成美
中田喜子
1994年後期
24.4% あすか 竹内結子 1999年後期
24.1% 私の青空 田畑智子 2000年前期
23.5% あさが来た 波瑠 2015年後期
23.3% さくら 高野志穂 2002年前期
22.8% とと姉ちゃん 高畑充希 2016年前期
22.6% 花子とアン 吉高由里子 2014年前期
22.6% ほんまもん 池脇千鶴 2001年後期
22.5% やんちゃくれ 小西美帆 1998年後期
22.3% ごちそうさん 2013年後期
22.2% ちゅらさん 国仲涼子 2001年前期
21.4% まんぷく 安藤サクラ 2018年後期
21.3% こころ 中越典子 2003年前期
21.1% マッサン シャーロット・ケイト・フォックス 2014年後期
21.1% 半分、青い。 永野芽郁 2018年前期
21.0% なつぞら 広瀬すず 2019年前期
20.7% まんてん 宮地真緒 2002年後期
20.7% 梅ちゃん先生 堀北真希 2012年前期
20.6% あまちゃん 能年玲奈 2013年前期
20.5% 走らんか 三国一夫 1995年
20.5% オードリー 岡本綾 2000年後期
20.4% ひよっこ 有村架純 2017年前期
20.3% べっぴんさん 芳根京子 2016年後期
20.1% わろてんか 葵わかな 2017年後期
20.1% エール 二階堂ふみ 2020年前記
19.4% まれ 土屋太鳳 2015年前期
19.4% どんど晴れ 比嘉愛未 2007年前期
19.4% 純情きらり 宮﨑あおい 2006年前期
19.4% スカーレット 戸田恵梨香 2019年後期
19.1% カーネーション 尾野真千子
夏木マリ
2011年後期
18.9% てるてる家族 石原さとみ 2003年後期
18.8% おひさま 井上真央 2011年前期
18.6% ゲゲゲの女房 松下奈緒 2010年前期
17.5% 風のハルカ 村川絵梨 2005年後期
17.4% おちょやん 杉咲花 2020年後期
17.2% てっぱん 瀧本美織 2010年後期
17.1% 純と愛 夏菜 2012年後期
17.1% カムカムエヴリバディ 上白石萌音
深津絵里
川栄李奈
2021年後期
17.0% わかば 原田夏希 2004年後期
16.8% 芋たこなんきん 藤山直美 2006年後期
16.7% ファイト 本仮屋ユイカ 2005年前期
16.3% おかえりモネ 清原果耶 2021年前期
16.2% 天花 藤澤恵麻 2004年前期
16.2% だんだん 三倉茉奈
三倉佳奈
2008年後期
15.9% ちりとてちん 貫地谷しほり 2007年後期
15.8% ちむどんどん 黒島結菜 2022年前期
15.7% 舞いあがれ 福原遥 2022年後期
15.2% 榮倉奈々 2008年前期
13.8% つばさ 多部未華子 2009年前期
13.5% ウェルかめ 倉科カナ 2009年後期

 ……ということで、最近は15〜16%。
 つまり、10人中1人か2人しか見ていない。8割以上の人が見ていないわけだから、国民的ドラマともいえない。

 「日本人の半分はNHKを見ていない」というのも、道理だね。
 それなのに強制徴収は、理不尽であることは明白。
 みんなが納得する、スクランブルをかけなよ。それでスッキリ解決だ。

諌山 裕

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