ロボット技術は進歩しているが、実用的なロボット開発ではビジネスとしての可能性が見えにくいようだ。
 その理由のひとつは、開発コストが高いからなのだろう。

アルファベットが「AIロボット」の子会社を事業終了、グーグルが目指したジェネレーティブAIとの統合はどうなる? | WIRED.jp

グーグルの親会社であるアルファベットが10,000人以上の従業員を解雇すると発表したことに伴い、AIを用いたロボットの開発を進めてきたEveryday Robotsの事業終了が決まった。テーブルを拭いたりゴミの分別をこなしたりするロボットの技術は、社内の取り組みに統合されることになる。

(中略)

Everyday Robotsはこれまでに1本のアームと車輪を備えた100台以上のロボットに対し、カフェテリアのテーブル拭きやゴミとリサイクル品の分別、そしてもちろんドアを開けることを訓練してきた。しかし、「ムーンショットファクトリー」の異名をもつアルファベット傘下の「X(旧「グーグルX」)」から独立してわずか1年あまりで、アルファベット全体に広がるコスト削減の一環として閉鎖されようとしている。そのことを広報担当者も認めた。

(中略)

一方でグーグルとEveryday Robotsは当時、人の意のままに動き回ってくれる“執事”は消費者が利用できる段階からほど遠いことを強調している。室内の照明の種類やポテトチップスの袋の形状など、人の目にはささいに見える違いが誤作動を引き起こす可能性があったのだ。

Everyday Robotsは独立当初から、自分たちのミッションは先進的な研究を追求することなのか、それとも製品を市場に送り出すことなのか悩んでいたと、匿名の元社員は言う。それでも同社は、顧客対応を監督するスタッフ、ロボットにダンスを指導するスタッフ、完璧なデザインを試行錯誤するスタッフなど、200人以上の社員を抱えるまでになった。同社のロボットは1台あたりの価格が数万ドル(数百万円)になる可能性が高いと、ロボット工学の専門家は推定している。

(中略)

ベンチャーキャピタルのDCVCでパートナーを務めるケリー・チェンによると、新たな投資を呼び込むことに成功しているロボット企業は「顧客の本当のペインポイント(悩みの種)を解決している企業」であり、人間がこなすには退屈だったり危険だったりする作業を手伝うロボットを販売しているという。そして、こうしたロボットが活躍する場所は高度に整理されていて、ロボットが行き交うには十分な広さをもつ施設であると指摘する。

 「ロボットは1台あたりの価格が数万ドル(数百万円)」もする掃除ロボットでは、売れないだろうね。Pepperがそうであるように、維持費もかかるからさらに高くなる。それだったら、社員に自ら掃除をさせて、掃除も業務の一部にすればいいだけ。

 人の労働を代替するには、人と同等のことを難なくこなせる必要がある。
 しかし、開発中のロボットの動画を見る限り、ぎこちないし、場所は取るし、柔軟性があるようには見えない。
 記事中にもあるが、工場や倉庫ならまだしも、家庭やオフィスでは邪魔だな。人と同居する環境では、やはりロボットは人型の方がベターだと思う。問題は、人型で自立歩行できて、人と同じ作業がこなせるロボットは、難易度がかなり高いことだ。

 たとえば、「このガンプラ、組み立てて、塗装もして、完成させておいて」と命令して、ガンプラを作ってくれるロボットは登場するかどうか。
 作り方はネット検索して引っ張り出せるが、細かい指先の作業を再現する工学技術がない。それが可能となるロボットは、100年くらい未来かもしれない。
 可能だとして、そのロボットの価格はいくらなのか?
 1体数千万円とかになると、買える人はごく少数で、ビジネスとしては難しい。数千万円のスーパーカーを買う人はいるので、買える顧客はいるだろうけど、そんなロボットを所有するメリットやステータスがあるかどうかだね。

 人の生活に入りこむロボットの使い道として、掃除やゴミの分別が適切なのだろうか?
 その目的設定というか、ロボットにやらせたい作業の選択が間違っている気がする。実験であることを考慮しても、掃除しかできないロボットでは魅力や可能性が乏しい。
 掃除ロボットだったら、床を走り回る小さな円盤形のロボットで十分。テーブル上は、人間が片付けろよって思う。

 人の労働の代替としてのロボットよりも、可能性が高いのは兵器としてのロボットだろうね。
 民生用のドローンが兵器に転用されているように、ロボット技術が兵器に転用されるのは必然のように思う。
 ロボットメーカーは、兵器化を否定しているのだが……

「汎用ロボットの兵器化を否定する」──Boston Dynamicsら関連6社が宣言 – ITmedia NEWS

韓国Hyundai Motor Company傘下の米Boston Dynamicsは10月5日(現地時間)、同業の5社と共に、汎用ロボットの兵器化否定を宣言する公開書簡に署名したと発表した。

 おそらく、これは表向きの話。
 ロボット技術が進歩し、高度化すれば、それを兵器に転用しないわけがない。自動車も航空機もロケットもカメラもコンピュータも、平和利用だけでなく軍事利用も併存している。ロボットが例外になることはないだろう。

 トマホークの一発の値段は約2億円といわれているが、自爆型突撃ロボットが2億円だとしても戦力として有効なら配備されるかもしれない。四つ足で自在に走り回れるロボットは実現しているが、それに爆弾を背負わせ、敵陣に忍び寄らせて「ドカンッ」の自爆攻撃というのはありえる。
 とはいえ、ウクライナ戦争で実証されたことは、安価なドローンに手榴弾を積んで、落とすか突っ込ませる方が効果的だということ。
 ただし、主力兵器にはならないので、ゲリラ戦用のドローン兵器ではある。

 ロボットの方向性は、どこに向かうのか?

 人の生活空間で稼働するロボットを、「ライフサポートロボット」ともいうが、略して「LSR」と呼ぼう。
 LSRには汎用性と柔軟性、そしてコストパフォーマンスが求められる。できることが限られていたり、あまりにも高価では、使い道が限定されるから普及は難しい。Pepperのようにおしゃべりしかできないのでは、置物にしかならない。
 理想としては、家事全般をこなせるロボットだろうね。だが、これはかなり難易度の高いタスクでもある。
 なんでもできる人間型ロボットヒューマノイドの登場は……………だいぶ未来の話だ。

諌山 裕

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